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第5話 世界について村長に聞いてみた

 私たちが森の聖地に入ったことはバレることはなかった。

 今回、カルルとの出会いにより魔法を見せてもらうことはできた。もちろん簡単なものであるが、使える魔法が増えたと考えると十分だ。

 それと、あのモンスターがその後どうなったかも分からないまま。

 カルルとの出会いもバレず、私は再び平穏な生活へと戻る。そう、まるで何事もなかったかのように、私は戻ることができたのだ。

 それに違和感を覚えたが、私がその答えに気づけるわけがない。

 私は無邪気な子供のように再び人間の人生へと戻る。

 そうやって。

 そうして。

 私がこの村に来て一年が経ち、七歳となった、そんなころ。


「騎士団の人が来たの?」


 お母さんがそんなことを教えてくれた。

 村以外の人で言うとカルルを除き、たまに来る商人か、税金関係の国のお偉いさんぐらいしか見たことがなかったのだが、今日はそのどちらでもない新しい人が来た。

 騎士団。

 来るのは初めてではないそうだ。


「どうして来たの?」

「どうも、近々戦争をするらしいの。だから兵を集めているみたい」

「兵? 徴兵?」


 こんな村だと国同士のいざこざなど知るはずもない。

 そうなんだ。

 戦争をするのか。

 長い年月生きているけども、何時までたっても人間は戦争を止めない。人間同士が戦争をするのは別に良いのだけれども。戦争が始まると死者の数が増えて、私の仕事が増えることだけは嫌だったな。

 でも今は村の知り合いが死ぬ可能性があるということになる。

 昨年一人、お爺ちゃんが亡くなったけども、別れは悲しいものだ。

 それも戦争となれば分からないが何よりも嫌だ。死ぬと断言されたら、それはそれで踏ん切りがつくかもしれない。でも生きる可能性があるし死ぬ可能性もある戦争での別れはより一層強いものがある。あくまで私にとってはね。

 まあ、ぶっちゃけると蘇らせたらいいのだけれどさ。

 そんなことしたら私の人生どうなるか分からないし。そもそも力が制限された状態で完璧な姿で蘇らせることもできるかも分からない。

 でも私は蘇らせる力がある。

 確かだけども。


「もちろん、あなたは大丈夫よ。女子供、それと老人は除外されるわ。でも若い男性はほとんど行かなくちゃいけないみたい」

「そうなんだ」

「それと、税金も増えるのかしら。他にもいろいろと問題が増えそう」


 お母さんが今後の心配からか深いため息をつく。

 村から若い男性がいなくなれば、どうなるのだろう。

 必要な食料数が減るとは言え、狩りに出かける男性がいなくなれば、困るはずだ。それに力仕事も。いろいろと問題が発生しそう。

 戦争なんかしなければ良いのに。


「少しの間だけ、この村も寂しくなるわ」

「大丈夫。お母さんがいてくれるなら」

「ありがとう。あなたは本当に強いわね」


 こんな出来事を得て、私はこの世界の情勢について気になりだした。

 そして、再び強く思う。

 学校建てろよ、と。

 もしかしたら。魔法学校みたいのはあれど、子供に勉強を教える学校というのはないのかもしれないけどさ。


「あなたは賢いわ。だからきっと、今回の戦争による死に耐えられる」

「お母さん?」


 ふいにお母さんが私を抱きしめた。

 まったく別のことを考えていたため、一瞬反応が遅れてしまった。

 お母さんはどうも涙もろい。

 過去に何かあったのだろうか?


「皆が無事に戻ってくることを祈りましょう」

「うん」


 私はそう頷くことしかできなかった。




 村から100人近くの男性が戦争に旅立ってから気づけば一週間が経とうとした日。

 どれだけ学校建てろと心の中で抗議したところで改善はされない。

 だから私なりに学べば良い。 


「世界情勢?」

「うん。おじいちゃん、教えてくれない?」


 そう思った私は村で最高齢である村長に聞くことにした。

 村長の家の扉をノックして、教えてほしいことがある、なんて聞くと快く村長は私を中に入れてくれた。

 村長は数少ない髪の毛を大切にする、優しい顔の人だ。老人の中には怖い人もいるし、中には怖い発言をする人もいるけども、村長は誰よりもまとめることが得意なため村長という任についている。実際私も適任だと思う。

 村長はあごひげを触りながら、そうじゃのうと呟き。


「モンスターを知っているかえ?」

「モンスター?」

「そうじゃ。例えば、ドラゴンとか。他にはオーガ、オーク、エルフやドワーフ、天使、悪魔。はては人間もそうじゃな」

「…………?」


 エルフやドワーフまでは何となく分かる。でも天使、悪魔、そして人間もモンスター?

 つまり今の私はモンスター?

 あのミミズみたいな人食いモンスターと同義?

 何それ、なんかいやだ。


「モンスターの意味は二通りある。一つは化け物じみた容姿をした生物じゃ。これに人間は含まれない。人間の価値観によるからな。じゃが、もう一つの意味に人間は含まれる」

「そのもう一つって?」

「知能があるか否かじゃ」

「知能?」


 とか馬鹿な事思っていたけども、どうもこの世界におけるモンスターの定義は私の知る知識と異なるらしい。


「でもそれがどう関係するの?」

「もともとこの世界のほとんどは天使と悪魔で二分されている。その中でわしたち人間は天使の加護のもとここに人間の国を幾つか作ることができた。それは他の種も同様じゃ。エルフとドワーフも同様に天使の加護に、ドラゴン、オーガ、オークは悪魔の傘下に」

「今回の戦争は天使と悪魔の戦争ということ?」

「まあ、天使や悪魔が戦場に現れることはまずないから、人間が戦うのは悪魔の傘下のどれかじゃろうな。そのどれと戦うかまでは知らん」


 なるほど。

 少しずつ理解してくる。

 なんだろう、私の想像していた世界と全然違った。

 それに、一つ気になる。その天使が一体何であるかだ。もしもそれが本当に神に仕えるものならば、そんなことできるはずもない。

 そしてそれは悪魔も同様のはず。魔王がそんなことするはずがない。

 少なくとも私が女神だったころ、天使と悪魔が人間界を支配することは許されていなかった。すべての種にはあった住処があるというもの。

 仮にもここが私の管轄内であるならば、その天使と悪魔はおそらく本当の意味での天使でも悪魔でもないことになる。

 そして、仮にもここが私の支配する世界じゃないなら。

 そうなると、非常に。もう叫びたくなるほど、非常にまずい問題が出て来る。

 まあ、叫ばないけども。


「ちなみにだけども、おじいちゃん。人間同士の戦争は許されているの?」

「いや、そんなこと許されるはずがない。人間どころかエルフやドワーフとも友好な関係を気づかなくちゃいかん」

「そうなんだ」


 うーむ。

 考える度、分からなくなってくる。

 そんな悩む姿を見て、必死に考えているのだと思ったのか村長が聞いてくる。


「難しかったか?」

「全然」


 それに私は首を横に振り否定する。


「あと、ありがとう。おじいちゃん。いい勉強になった」

「そうか。そうか。それにしても、本当にセレネは優秀じゃな。他の子どもたちも見習ってほしいわい」

「そんなことないよ。じゃあ、私帰るね」


 そう言って私は村長の家を後にした。




 この世界のことが分かって来た。

 ならば少しずつ行動に移り始めなくてはいけない。

 そう思って私は自室、天井を見ながら考え込む。

 私は平凡な人生を送りたいなんて口に出しているが、本心でそう思っているわけじゃないし、もっと言えばこの村を何時か出なくてはいけないとも考えている。

 だって、天使になるために必要な聖人ポイントはめちゃくちゃかかるから。世界救うぐらいまでして貯めこまなくちゃ。

 は!

 嫌なことに気づいた。

 女神こと私がいないのだから、聖人ポイントは与えられない。つまりはどれだけ良い行いをしたとしても貯まらない。


 うわあああ!


 どうしよう。私の作戦、壊滅した。

 どうしてそんなことも気づかなかったの。これだから転生の女神はポンコツなんだって言われるんだよ。まあ私自身無能は自負しているけどさ。

 これは由々しき問題だ。

 早急に解決策を考えないと。


「それに」


 聖人ポイントどうこうじゃなくて、仮にもこの世界が私の支配する世界じゃなかった時。

 最悪の事態の時も考えておかなくちゃ。

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