ねむるきみとねむる
「僕らが生きている世界は終わりに向かっているんだ」
花畑の中心で彼女は首を傾げる。橙色の花飾りが小さく揺れた。
「比喩とかじゃない。そのままの意味さ」
彼女は口を動かした。声は聞こえないけど理由を尋ねていることは分かる。
「この廃ビルから一歩外に出れば嫌でも分かることだ。君にそれが可能なのか、僕には分からないけど」
花畑の中心で彼女は再び首を傾げる。
「その理由?」
彼女は首を横に振る。じゃあなんだろう。
「なんでこんな話をするのか?」
首肯。
「確かに、どうしてだろう。外のことなんか思い出したくもないのに」
少し考えるとすぐに答えは出た。当然だ。自分のことなのだから。
「多分だけど、僕はこう聞きたかったんだと思う」
なんとも情けない質問だと我ながら思うけど、
「『もし僕がこの廃ビルで死んだなら、この世界にずっといられるだろうか』」