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姫将軍戦記  作者: 宮野碧依
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 新皇帝即位及び、皇后立后の祝賀パーティーが盛大に催され場内は勿論、国を挙げてのお祝いムード一色となる。

 祝賀パーティーを抜け出し、ドレスを脱ぎ捨て簡素な服に着替え複雑に編まれた紙を乱雑に崩し、無造作に一本に結い上げると、アイリスは部屋を後にして城内を抜け出す。

 ヘンドリック大陸でも中でも歴史が古く、豊かな国土を誇るクリストファバール帝国。

 魔法研究開発事業に力を入れ、誰もが便利で豊かな生活を送れるように魔法具の開発に力を注いでいた。

 ヘンドリック大陸には、遥か昔から魔法が存在していた。

 どういうルーツで等というのは、今を持って解明されていないし、誰もが使える訳でもない。生まれた時に、魔法力を持っていれば、使えるがその魔法力を持って生まれるのも遺伝であったり、そうでなかったりとやはり解明はされていなかった。そんな中でも、クリストファバール帝国は早くから魔法機関を立ち上げ魔法教育を率先して行っていた。結果として、大陸の各国から魔法力を持って生まれた者が魔法教育を受ける為に、留学をして来るようになっていた。

 クリストファバール帝国新皇帝アベル・グリス・エトロバ・クリストファバールの実妹である、アイリス・エトラド・ルグス・クリストファバールは、生まれながらにして強大な魔法力を有していた。その為に、先日崩御した前皇帝である父王に幼い頃から皇女としての教育よりも、その魔法力を生かした教育を施されていた。

 魔法学院高等教育を15歳で終えたアイリスは、皇女としてではなく一兵卒として、国の最高軍魔法兵団へと入団して、実践を重ねて、姫将軍へと2年で伸し上がった。

 もちろん、国の軍部がその能力と皇女という立場を考慮しての出世ではあるが、アイリスにとっては些末な事であった。

 窮屈な城での生活よりも、市井の中で気儘に生きる事の方が気楽で、ドレスを着る事を滅多にしない、帯剣をし男装をしているのが常であり、城を抜け出すのも日常茶飯事であった。

「一応は挨拶したんだし、私が1人居ない事ぐらい問題はないと思うのよね」

「それは抜け出した事に対する言い訳ですか?」

「……、なんだやっぱり付いて来たの?」

 独り言のつもりで呟いた声は拾われ、後ろを歩く相手を振り向く事なく、アイリスは答える。

「当然。アイリを1人には出来ないからね」

「……、いいけどね連れ戻しに来たんじゃないなら」

「そんな事をしても、無駄な事をわざわざ俺がする訳がない。面倒だし労力の無駄だ」

「分かってるじゃない。城門で馬を、その後は適当に。いい?」

「構わないけど、戻る気じゃないのか?」

「パーティーは数日間行われてるんでしょう?下手に城下に居るよりも、離れた場所に居る方がラクだわ」

 城門を目指して肩を竦めて、アイリスは答える。

 そのアイリスに付き従うのは、幼少の頃より共に育った護衛のエトス。

 エトス・ラント・クルー、クルー公爵家の次男。

 アイリスを愛称で呼び、その性格をよく理解して共に行動が出来る数少ない人物である。

 アイリの実兄で皇帝であるアベルに、もう1人の兄でありアベルの弟にして宰相であるクレセントからの信が厚い。

「はいはい、お付き合いさせて頂きますよ」

 口調こそは軽口だが、アイリにとっても気心が知れた数少ない友人である。

 城門で馬を呼び飛び乗ると、一直線に駆け出す。

 その後ろを、遅れる事なくエトスは付いて行く。

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