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姫将軍戦記  作者: 宮野碧依
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0.プロローグ

0.


「王、お待ちください。それでは、これまでの我が国の全てが台無しになってしまいます。我が国は、中立国です。それがこの国が長く、他国からの侵入をさせなかったのでは、ないのですか!?」

「煩いぞ、カイデル。それでは、我が国は何も変わらん。私は、これまでの歴代の王と違うのだ。我が国を発展させる為にも、領土をまずは広げねばならん。その為にも、列強の国と強い結びつきを得、他国を侵攻すべきなのだ」

「ですが、それでは、カデルン教の教えに背く事になります」

「……お前は、神官であったか」

 静かな、2人の声以外何も聞こえない廊下。

 低い声で問うのは、先日王の座に就いたばかりのテトルト王。

 ヘンデリック大陸で唯一の中立国である、神聖アカデリックの王。

 豪奢な装いに身を包み、静かに自分よりも背の高い実弟を見詰めるその瞳は鋭かった。

 テトルトの実弟であり、第二王子であるカイデル・トラト・アルデ・アカデリックは、静かに兄王を見詰め返した。

 他国への侵攻など、これまでのアカデリックの歴史を紐解いても一度も起こった事がなかった。

 それを、大胆にも行おうと言うのだ。

 神聖アカデリックが、これまで中立国として長い歴史の中でも保っていられたのは一つはヘンデリック大陸で信仰されているカデルン教の中枢であるからだった。

 神聖魔法を使うにも、学ぶ教育機関が必要ではあるが大陸の中でその教育機関が優れているのがアカデリックであり、司祭や神官を育て上げ各国へと送り出しても居た。

 その為に、司祭や神官を自国で養成するのが難しい各国は、国同士の争いが起きようともアカデリックを巻き込まないようにして来てもいたし。戦争の調停役に、アカデリックの王に請う事すらもあった。

 そんな国であるからこそ、他国との関係は良好であり。敢えて攻める事などしないでも良かったのだ。

「再考をお願いします、兄……いえ、王」

「これまで通り、兄上と呼んでくれても構わんのだぞ?だが、再考はせん。これは、私だけではなく議会も承認しておる。これ以上くどい様なら、例え弟と言えど赦さんぞ?」

「テトルト王……」

 話は終わったとばかりに、カイデルに背を向け歩き出すテトルト。

 その後ろ姿を、何とも言えない表情で見詰めるしかないカイデルは己の無力さを嘆くしか出来ないでいた。

 自室に戻ったテトルトは、椅子に腰掛け声が漏れぬように結界魔法を張り巡らせてると、遠話鏡をテーブルに置いて決められた呪を唱える。

 一般的に魔法が広く広まっては居ても、誰もが使える訳ではない為に、魔法を封じ込めた道具が開発され、中でも特にクリストファバール帝国のモノは良質で生活を豊かにするモノが多く、各国に輸出され日常生活に広まっていた。

 テトルトが用いたのも、クリストファバール産の遠話鏡。

 決められた呪を言えば、鏡を通して話が出来ると言う優れもの。

―お久しぶりになります、テトルト様。いえ、今はテトルト王でしたね

「久しいな」

―こちらは、予定通り事は運んでおります

「そうか。こちらも手筈は整えている、あとは間違えんように」

―ええ、分かっておりますよ。それでは、以降は予定通りに。連絡は、火急の時のみでよろしいでしょうか?

「ああ、構わん」

 プツリと切ると、椅子の背凭れに身を預けて息を吐く。

 そんなテトルトとの定期交信を終えた男は、鏡に映らない場所に座る男に向かい。

「お待たせいたしました」

「いいえ、構いませんよ。今のが例の?」

「ええ、そうです。彼の人を此方側に取り込む事が出来ましたからね。これで大分状況は変わりましたよ」

 笑みを浮かべて言うのは、セレストランド国の上級貴族の男。

 そして向かいに座る男はそんな貴族の家を訪れても怪しまれないように、商人に変装をしたクリストファバール帝国の貴族の男だった。

 それぞれの思惑の元に、繋がり動き始める。

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