表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/7

???「大魔王は憤慨する」

「なぜだ。何故、生まれぬのだ!」


王歴1304年。

王歴210年・460年と大魔王が倒されてからしばらく、607年に誕生し692年に勇者に倒され、一部力を封印されていた大魔王デスラスカオスはこの600年もの間、自分を恐れさせるほどの勇者が現れないことを嘆いていた。


「それもこれも先代の大魔王……デスラスカスが三つの呪いなどというふざけたことをしたせいだ……そのせいで、本来は生まれてくるはずだったクーアークと呼ばれる勇者も生まれなくなったのだ!」


王歴460年。大魔王デスラスカスは死の直前、勇者アースガルナに三つの呪いを掛けた。そのうちの一つは力と魂を二つの体に分けるというものだった。

それが影響したのか現在まででクーアークという名を持つ者は生まれていない。


「何が離力りりょくの術だ! その術のせいで、見目麗しいアースガルナのような女が生まれぬのだ……くっ! いったいどのような女なのだクーアークという勇者は……」


「よいではないですかお父様。おかげで世界は我が一族の手中になりました」


「それがどうした……」


「それにお父様の望みの勇者、現れたようです」


「ほう……そいつは男か? それとも女か?」


憤慨する大魔王・デスラスカオスの前に現れたのは大魔王の娘であるデスラスリリィ。

デスラスカオス同様美形な魔族の女である。

長い赤髪、血のような真っ赤な瞳、それとは似つかわしくはない白い肌が不気味な女性。

彼女、デスラスリリィは父の怒りようにもまったく動じることなく淡々と話を進める。


「男です。名はアークと申すようです」


「アーク……なんだ男か。つまらん」


「ですが、下界の預言者たちがこぞってその者の名を口にし始めました」


「ほう……? それは真か?」


「ええ……わたくしの考えではありますけど、大魔王候補としては申し分ない人材かと」


「大魔王候補……?なんだ、勇者ではないのか」


大魔王は落胆する。

望みの勇者ではなく、自らの影武者的役割を担う偽りの大魔王候補者という話に。

しかしそれとは別に面白く感じるところもあった。

自らの思い付きではあったが、まさか本当に人間から大魔王が生まれるとは思わなかったからだ。

だからこそ面白い。そのアークという男はどれだけの魔王の才能があるのか多分に興味欲を刺激した。


「はい。勇者でもありますけど、どうやら大魔王の才も持ち合わせているようです。計画、進めてもよろしいですか?」


「勇者であり、魔王でもあるか……ふむ、構わん。進めよ」


「わかりましたわ。それとは別に面白い話があるのですが」


「面白い話だと……? 今の話も幾分面白い話ではあったが……なんだ、申してみよ」


「はい。こちらを」


「こ、これは……!」


デスラスリリィはとある資料を父へ渡した。

その中身はアークが住み親しんだ国でもあるアースガルナ王国の情勢。

国の重要人物のプロフィールが写真つきで書かれていた。

その中の一人、第二王女・クーアディアに目を向け、見開いた。


「アースガルナ王国の第二王女……名はクーアディアと申すようですわ。お父様」


「クーアディア……髪色こそ違うがかのアースガルナに似ている」


「調べてみるとアースガルナ直系の一族のようです」


黒髪の美少女クーアディア。

彼女に興味を惹かれたのかデスラスカオスはクーアディアの項目ばかりに注目し何度も読み返す。

一人だけやたらとページ数が多く、まるで特集記事のようだった。


「魔族兵たちへの円滑な魔力供給だと……」


「ええ……魔力の流れがとても繊細でどの魔族兵であろうと際限なく円滑に魔力を送れることでしょう。アークも膨大な魔力量と質を有しているようですが、このクーアディアという女も負けず劣らずでーー」


「御託はよい。すぐに進められるのか?」


「はい、もうまもなく準備は整いますわ」


細かいことはどうでもいいというデスラスカオスの問いに涼しげで笑みすら浮かべながらデスラスリリィは答えた。


「うむ……最悪、このアークという男とクーアディアという女、この二人さえ確保できさえすれば他の者は皆殺しにしても構わぬ。早急にやれ」


「もちろん、一つの失敗もなく終わらせますわ」


デスラスカオスは資料を流し読みしても二人以外に興味はないのか資料を投げ捨てると事も無げに言った。

それに対してデスラスリリィはやはり自信満々でやはり笑みを浮かべてその場を後にした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ