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第四章 大魔王の告白 その2

 俺と大魔王は、またトボトボと歩きながら、今度は大魔王にスカートめくりを禁止して、色々と話を聞くことにした。


 大魔王の話すことが本当か嘘かは分からないが、それは後でノブヲとヒデヨと一緒に考えればいい。

 ヒデヨはすでにノブヲから呼び出されて、ノブヲの家に行っているはずだ。


 ヒデヨは俺たちよりもひとつ年下の高校一年生だ。

 同じ緑高校に通う。


 本名は野口エジソンと言うふざけた名前で、何でも、近所では迷惑発明オヤジで有名な実の父親が、母親や周囲の大反対を押し切って勝手に申請して、さらに役所のずさんな審査でエジソンという名前が通ってしまったらしい。


 名前負けすることなく、エジソンは頭がめちゃくちゃ良くて、中学三年生でMITからスカウトが来たくらいだ。


 エジソンは、


「MITなんて低レベルなところで勉強しなくても、自分自身で研究は出来る」


と言ってスカウトを簡単に断ると、普通に緑高校に進学した。


 俺とノブヲだけが知っていることだが、エジソンは、アメリカの大学に行っても、絶対名前で馬鹿にされると思っていたらしく、それでMIT行きを断ったらしい。


 自分の名前が嫌いだと言うので、俺たちは、ヒデヨと呼ぶことにしている。

 もちろん、野口ヒデヨまんまの由来だ。


 ただ、彼が心配するまでもなく、その圧倒的な頭脳を持ってすれば、名前ぐらいでいじめられるわけはないのだが、彼は彼なりの考えがあったのだろう。


 ちなみに、ノブヲの高校受験のときの秘密兵器はヒデヨだった。


 ヒデヨは勉強を人に教えるのも天才的だし、彼が作った練習問題や応用問題は、的確に受験に必要な学力のみを鍛え上げ、ノブヲは無事合格することができた。


 しかし、これは試験対策であって、決してノブヲの頭が良くなったわけではなかった。

 だからノブヲは今でも、試験対策はヒデヨに頼っているみたいだ。


 その見返りとして、ノブヲは自宅のガレージの一部を研究用にヒデヨに提供している。

 今から向かうのは、そのガレージだ。


 歩きながら、大魔王は沈んだ表情で話し始めた。


「わ、ワシの、大魔王なんじゃよ、ほんとに」


「ああ、わかったよ。大魔王な。で、なんでそんな偉い奴がスカートめくりやってんだよ。なにか? 大魔王の棲む世界は、パンチラ天国なわけか? だったらいいや。俺、そこに住みてえよ」


「違う、違うぞ。念力大魔界は、言わば地球の裏の顔じゃ。その昔、人間の能力が突然変異を起こしたときがあったのじゃ。ある能力、すなわち念力を使える人間が誕生したのじゃ。そこからじゃ……」


 大魔王の話は長かった。


 人間と念力使いの共存、そして亀裂。


 大多数の普通の人間に追われた念力使いたちは、自らの能力で新しい世界を創り上げた。


 その世界は異次元に存在しており、念力を使う者のみが行き来できると言う。


 異次元? 四次元ポケットみたいなものかな? まあ、そんなモノだろう。


 でも時空は超えられないと言う。


「でもさ、念力大魔界って名前さ、なんか悪者っぽくない?」


「昔は念力界と呼んでおった」


「いつから変わったの?」


「ワシが変えたんじゃ。昔、若かった頃はこれでも結構ワルでのう、まあ元ヤンってやつじゃよ。若気の至りって怖いものでのぅ、テッペン取った気がして、自分のこと大魔王なんて呼ばせてしまったんじゃわい。で、そのうち念力界も念力大魔界と呼ばれるようになったんじゃ」


「……。オッサンのせいかい!」


 ここからの大魔王の話も長かった。

 大魔王は念力の才能が高く、若くして念力界の王の座に就いたらしい。


 実際、龍も出せたみたい。

 ホントかウソかは分からないけどね。


 で、オッサンの言う若気の至りで、悪ノリして「念力大魔界、夜露死苦!」をスローガンに大魔王として君臨し始めちゃったらしい。


 それから数十年もの間、このアホなオッサンの統治が続いたわけだけど、そりゃあ誰でも嫌になるわな。


 その結果、封印された超念力を解き放つ伝説の饅頭という馬鹿げた都市伝説を信じ込まされた大魔王は、我先にその饅頭を見つけて食ってみると! な、なんと! 念力がスカートめくりのみにダウングレードされてしまったそうな。

 めでたし、めでたし。


「め、め、めでたくなぁ~い! これは陰謀じゃ。ワシのいなくなった念力大魔界を自由に操り、この地上、つまり人間界に攻め入ろうとしておる奴がおるのじゃ!」


「はい、はい、それはそれは、お~コワッ! っすね、大魔王」


 大魔王は急に涙目になった。マジでキングには見えない弱さだ。


「さっき……、さっき、ワシのこと信じてくれるって言ったくせに……」


 んっ、んぐっ、痛いところを……。

 さっきはスカートめくりの謎を知りたかったためにそう言ったが、そんな魔界がどうの何ていう話なら、これほど面倒くさいことはない。

 早く、このオッサンをどこかにポイっしなければ。


 しかし、しかぁ~し、スカートめくりの念力に関しては、検証が必要なのだ、しっかりと検証せねばいかんのだ! という葛藤が俺の心の中ではあったわけだが、最終的には男の欲望に負けて、スカートめくりを堪能することに決定し、俺はやはり大魔王をノブヲのガレージまで連れて行くことにした。

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