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第三章 大魔王降臨? その2

 俺はオッサンを連れて、大通りから少し入ったところにある公園のベンチに座った。


 黙って俺に付いてくるところみると、やはりスカートめくりは本当っぽいな。

 なにか後ろめたいことがあるのだろう。


 しかし、そんな発明品があるのならば、ひとつ俺も貰って、いや借りてもいいから、実験に参加しなくてはならないな。


 本城モトミはやはり一番だが、彼女以外にも可愛い子はたくさんいるし、三年生の先輩にもめっくてみたいスカートはたくさんある。


 ん? いつの間にか、俺はスカートをめくることしか考えてないな。

 ぐふふ。でも、それが男ってもんだぜ。


「で、オッサン、そのスカートめくりの道具を見せてくれよ。もしかしたら、とんでもない発明品かもしれないぜ」


「……。……」


「ちょっとさ、黙ってないで、道具出せって! 一体どこに隠してあるんだよ?」


 オッサンは困惑した顔をして、


「し、信じてくれるかの?」


なんて言いやがる。俺は、もちろん、


「ああ、信じる」


「ほ、ホント?」


 ヒゲ面の厳ついオッサンが少女のような声で言いやがる。


「だからぁ、信じるって言ってんだろ! 早く出せって!」


 俺はちょっとイラっとしていた。

 しかも、その理由がスカートめくりだと? スカートめくりでこれほどまでにマジになれる不良は、やっぱり俺くらいだろ。


 でも……、でも、男としては、やはり気になる。

 気になりまくるぜ。


「あ、あのな……、わ、ワシ、大魔王なのじゃよ」


「はぁ?」


「だ、だからな、ワシ、大魔王なのじゃよ、だ・い・ま・お・う」


「はぁ? オッサン、たいがいにせぇ~や、こらっ」


 俺は困った。

 何が大魔王だ。

 どうリアクションしていいかも分からなくなるじゃないか。


 でも、オッサンも困っていた。


 そりゃそうだ。

 誰が大魔王なんて言って信じる? そんなアホはいない。


「う~ん、困ったのぉ、やっぱりのぉ、そりゃそうじゃのぉ」


 オッサンはブツブツ独り言を言っている。


「だ、だからの、仕掛けとか無いんじゃよ。ワシは念力大魔界の王様なのじゃよ。だから、あれは念力なんじゃ。う~ん、信用するって言っとったじゃないか……」


 完全に呆れ果てた。


 念力大魔界? その王様だって? その念力ってスカートめくりじゃねえか。

 何か? その大魔界ってのは、女のスカートめくるために存在しているのか? なら、いいじゃん。

 俺、そこ行きたいわ、その魔界。


 もうっ、ヤバイわぁ、狂ったオッサン相手にしてしまったぁ……。


「あ、あのな、ワシが本物の念力大魔王だということが分かったら、ワシのこと、助けてくれるかの?」


「あっ? 助ける? ああ、いいよ。オッサンが念力大魔王っていう偉ぁ~いお人なら、何でも言うこと聞いちゃうぜ。家臣にだってなってやるよ」


「ほ、ホントかの?」


 まぁ~た、女子高生みたいな声で言ってやがる。

 今日はやっぱり最後までツイてない。


 どうやってここを抜け出すかな。

 このオッサン置き去りにして帰るかなぁ~と思っていると、オッサンは自分の体を突き出すようにして、


「ほ、ほれ、体を触ってみるんじゃ。何も持っておらんからの」


 ちょっと待て。誰がすき好んでオッサンの体触るんじゃい? と俺が言おうとしたら、オッサンはもう俺の手を持って自分の体を触らせてる。


「……。……」


「ほ、ほれ、よく見るんじゃ。何も持っとらんじゃろ?」


「あ、ああ。何も、ないみたいだ……」


 さっきオッサンの服を探ったときには分からなかったが、オッサンの体、めちゃくちゃ凄え筋肉だった……。

 俺はその肉体に驚いた。


 続いてオッサンは、帰宅途中のOL風の女の人を指差して、


「ほれ、見とけ」


と言うと、サッと手を前に出した。


《ブワッ~》


 突然、OLのタイトなスカートが勢いよくめくり上がった。


「キャッ、イヤッ」


 OLは必死にすそを押さえようとするが、スカートはなかなか元に戻らない。


「ほ、ほらな。よく見ておれ。……。よ~し、ストップじゃ」


 オッサンが手を下ろすと、OLのスカートは何もなかったように元に戻った。


 あれは風なんかじゃない。


 あんなタイトなスカートが風でめくれるはずがない。


 めくれて……、めくれて、ストッキング越しの黒いパンツが見えるはずがないっ! でも、待てよ? あれはサクラ?  オッサンの仕込みの可能性も否定できない。


 仕込み? ってことは、まじ? これ、ドッキリ?


 一般人向けのドッキリは正直、本当にやめて欲しい。


 これじゃあ、俺がまるで、ドッキリに引っかかってスカートめくりの超能力を信じてしまう、大馬鹿エロ高校生になってしまう。

 そんなものを全国放送されたら、俺は……、俺はもう学校にいられないじゃないか!


 嗚呼、やばい、どうしよ。


 しかし、待てよ?

 この公園は俺がオッサンを自ら連れてきた場所だ。

 事前に仕掛けなんか作れるわけがない。


「ほ、ほれ、今度はあっちに行くぞい」


 オッサンは俺の手を引っ張り、ベンチから立たせようとした。

 俺は、


「ちょ、ちょっと待って。ちょっと……」


 俺はマジで抵抗した。

 だって、さっきの、初めて見るリアルなストッキング越しパンチラのお陰で、俺の下半身は、完全に前へならえ状態なのだ。


 そんな立ってる俺をベンチから無理やり立たせようとするオッサン、強引過ぎるぜ……。

 オッサンは公園の入り口の自動販売機の陰に俺を連れてくると、


「次はどれがいいんじゃ? 言ってみろっ」


 完全な命令口調だ。もう俺はお前の家臣なのか?


「う、うーんとね、あのギャル! ミニスカのギャルがいい!」


 俺も完全に理性を失っている……。

 そして、オッサンは、また手を前にかざし、力を入れる。


《ブワッ~》


 今度はさっきよりは弱い感じだが、ミニスカには十分な威力で、ギャルのTバックのお尻が丸見えだ。

 オッサンが手を下ろすまでの十数秒間、ギャルは自分のTバックが丸見えになっていることに気付かず、周りの男どもが全員振り向くような状況を、完全に無視するかのようにスマホをいじりながら、歩き去った。


 ドッキリにしては長過ぎる展開に俺は少し安心してきた。

 もうネタばらしがあってもいい頃だ。

 そして俺は、


「お、オッサン、俺の負け。俺、オッサンの家臣になるわ」


と、あっさりと降伏宣言をしてしまった。


 このオッサンが大魔王かどうかは別として、どうしようもない低レベルな念力使いだということが分かった。


 ほんと、しょうもない念力だ。


 し、しかし、俺は全開状態のマイ如意スティックを意識しながら、ある意味、この念力は素晴らしいではないか! と心の中で叫び、これは幸福宣言だ! とニヤニヤしながら、腰を引いて地面にうずくまっていた。

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