第二章 モテたい! けど、モテない? その2
そんなある日、いつものように部室でエロ動画品評会をやっていると、突然ドアをノックする音がした。
ドアをノックしてから入ってくる奴なんて俺たちの仲間にはいなかったから、俺たちは焦ってパソコンの画面を体で隠した。
ドアが開いて入ってきたのは、お姫様のような女の子だった。
ほどよく茶髪で内側に巻いた髪、モデル並みの小さな顔、制服のスカートはかなり短くされていて、そこから伸びる白くて細くて長い足は、それだけを二時間の映画にしても飽きないくらいに綺麗だった。
「あ、あのおぅ、文化系クラブ会費を集めに来たんですけどぉ、部長さんはいらっしゃいますか?」
お姫様は男どもが集まる臭い部屋の空気を感じ取ったのか、入り口に立ったまま部屋に入ろうとはしなかった。
俺たちは全員がその女の子を見ている。
「ほ、本城モトミだぜ」
誰かが言う。そしてまた誰かが続ける。
「緑高一年のダントツナンバーワンだよ」
「読モだって話だぜ」
「顔、ちっちぇ~」
そんな男たちの会話は聞こえていないだろうが、本城モトミは少し微笑みながら「ハテナ?」という感じで首をかしげた。
その瞬間、俺の背中には電気が走り、その電気は俺の頭と下半身に衝撃を与えた。
本城モトミは妖精のような可愛さなので、エロいわけではないのだが、俺はもうたまらなかった。
この女を俺の彼女にしたい! そう心の中で叫んだ。
そして俺はしばらくの間、本城モトミの姿に見とれていた。
「あっ、ごめん。部長は今はいないよ。最近はあまり部室には来ないんだ」
ノブヲが言うと、本城モトミは、
「そうですか……。わかりました。では戻ってうちの部長に相談してみます」
と言うと、丁寧にお辞儀をしてドアを閉めた。その瞬間、
「うわぁ~、やべえ~、ちょ~緊張したぁ」
「まじでヤバイ、ヤバイくらい可愛いな」
「あ~、ヤリてぇ~、ヤリてぇ~」
「彼氏いんのかなぁ? いるよなぁ~、やっぱり」
などと、もうエロ動画の品評どころではなくなり、話題は本城モトミに独占された。
「中学んときはさ、彼氏いたみたいだけど、今はいないみたいだぜ」
「おまえ、それどこ情報よ?」
「本城と同じ中学の奴からだよ」
「まじ? どんなんが好みなのよ?」
「なんかさ、中学ときんの彼氏っていうのが、学校イチの不良だったんだって!」
「まじ? そっち系?」
「本城ってさ、あんなに可愛いから男が放っておかないからさ、みんなにチヤホヤされちゃうだろ? だから、チヤホヤするんじゃなくて、普段はオレオレ系なのに、いざってときに守ってくれちゃうような男が好きみたいだって言ってたぜ」
はっきり言って、どこまでが本当の話かは分からないが、このときの俺は頭に血が上って沸騰しまくりだったので、その話を鵜呑みにすると、次の日に不良デビューしたのだった。
でも、実際には不良のことをよく分かっていないので、とりあえずシャツを出してみたり、ズボンを腰で履いてみたりして、試行錯誤の繰り返しだ。
何しろ、この学校には不良なんていないのだ。
お手本がないのだから、不良になるとしても難しい。
そこで俺は色々な雑誌を読んだりしたのだが、不良への近道はずばりバイクだと理解した。
今の時代は暴走族って感じでもないので、やはりビックスクーターだろう。
俺は残りの夏休みを全てバイトに充て、貯めた金でバイクの免許を取った。
そして、長い時間が経ち、冬休み春休みを全てバイトで埋めて金を貯めると、俺の不良への第一歩を獲得した。
それがマイ・スカブだったのだ……。