第十六章 初戦は全てが想定外っ! その1
戦闘モードのAEファイターは、左手のレバーで上下左右に操舵し、右手のレバーで武器の照準を合わせて攻撃する。
アクセルとブレーキは今まで使っていなかった左右のペダルを足で踏む形だ。
そういえば、今、気が付いたが、戦闘モードの練習をしていなかった……。
が、少し自由に動き回ってみると、あまり違和感はない。
慣れれば何とかなりそうだ。
ってか、実戦で慣れろってかっ!
『ステルスシールドは解除、通常のシールドのみで行くわ。防御性能は未知数……、賭け……ね……』
『敵機急接近中! 結構速いよっ! 数は……、えっと……、三百機っ! ピッタリ三百だよぉ~』
『三百か……、大魔王っ! これも念力で生み出したモノかしら?』
『間違いなくそうじゃ。ワシも昔、三百騎ずつ出しとった……』
『わかったわ……。全員、攻撃準備っ! 万が一……、万が一にも友好的な出迎えということも考えられるわ。敵が視界に入ったら照準をセットして待機っ! アタシの合図があるまで撃っちゃダメよ……』
『キリカ先輩っ! 高効率プラズマイオン粒子ビームのエネルギー充填完了ですっ!』
『ヒデヨ君、了解……。アナタの考え通りなら、これは最高の武器になるわ』
ん? なんだ? 何か空気をキレイにしちゃいそうな名前だな。俺たちの秘密兵器?
『来たわっ! 前方五キロ……、モニターできる?』
『モトミン了解っ! 今もうやってるよぅ~。って、ええっ! うっそぉぉぉぉ!』
『ヒメカ、どうしたの? モニター出しなさいっ!』
『……! ……!』
『なっ! なに……、なにこれ……』
ゴーグルのモニター画面に映ったモノを見て、俺たちは驚愕した……。
皆、てっきり未来的な乗り物かなんかが攻めてくると思ってたけど、そこに映ったのは、鎧兜を身に着けた騎馬武者たちの姿だった!
『う、馬? 馬が飛んでるよな……、マコト……』
『ああ……、ノブヲ……、槍持ってるぜ……ヤリ……』
『大魔王っ! どういうことっ!』
キリカが叫ぶ。
『ん? どういうって……、これが兵隊じゃよ……。何かおかしいかの?』
『これは騎馬武者よっ! それも戦国時代の。旗指物もメチャクチャじゃない……。上杉、武田、徳川……、直江に長宗我部もあるわ……。大谷行部……、かなりマニアックね。あら、やっぱり真田の六文銭は素敵……』
こ、コイツは歴女か?
詳しい……てか、好きなんじゃね?
んんっ、いやいや、今はそれどころじゃねえよっ!
『おいっ、大魔王っ! なんで馬乗った兵隊が攻めてくんだよっ!』
『ま、マコト殿、すまぬ……。伝えとらんかったの……。念力でモノを生み出すのはイメージが大事なんじゃ。戦闘機のような複雑なモノはイメージが難しくての。念力大魔界では意外と日本の歴史がブームなんじゃよ。それで、兵隊というと、こんなイメージなんじゃ……』
なぁんじゃあ、そりゃあっ!
ここまで近代化装備で固めてきて、戦う相手が戦国時代かよっ!
心配することなかったじゃねえかよ……、もうっ。
『て、敵が攻撃しようとしてますわっ!』
あれれ? やっぱり友好的なお出迎えじゃなかったみたいだな。
どれどれ、俺様の力を存分に見せてやるぞっ!
《ブブン……、ビュッ!》
『えっ?』
《ビッ! ボォァン!》
先頭の騎馬武者が槍を構えると、槍が青く光り、もの凄い勢いで飛んできた!
ってか、俺には全然見えなかった!
三機の一番前にいた俺を目掛けて槍が飛んできたが、俺は目で追うのが精一杯で、完全に無防備だった。
しかし、十数メートル後ろにいたモトミが素早くレーザー砲を撃ち、飛んでくる槍を撃墜した。
『マコトくんっ、目で見てはダメよっ! マシンと計器を信頼してっ! ディスプレイされている情報を把握するだけで、最低限の動きで対処できるわっ!』
『お、おお! 分かったぁ!』
全然分かってないよぉ……。どの情報見ればいいの? えっ? どうすればいいの?
『敵機、いえ、敵騎ね……、総攻撃してくるわよぉ! 全員攻撃開始!』
遠くのほうで青い光りがいくつも見える。やばい……来る……。
モトミは素早くAEロボスーツの出力を上げて左下方に旋回しながら、両腕に取り付けられた小型のガトリングガンをぶっ放した。
《ドガガガガガガン……ドガガガガガガ……》
いくつかの青い槍は撃ち落されたが、それでも何十発もの槍が襲ってくる……ように見えた。
『キリカぁ~、ダメッ、マニュアルは限界だわっ!』
『マコトぉ~! 全速力で右上方に逃げてぇ~!』
俺は急いでレバーを右下に倒し、アクセルペダルを思いっきり踏んだ。
《ドッ……ピュッ~ン》
『CIWSオンッ! 頼むわよぉ~』
『……、……』
《ドルルルルルルルルルルッ……! ドルルルルルッ……》
AEトランポの前面が大きく開くと、大きなガトリング砲が出てきた。
砲身が上下左右に何回か動くと、もの凄い速さでレーザー砲が撃ちまくられた。
それも無闇に撃っているわけではなく、青い光の槍に全て的確にヒットしていった。
『す、すげえ……』
『キリカ先輩っ、無理してイージスシステムからCIWSを移植して良かったですねっ! エネルギーの無駄も省けますし……』
『やっぱりイイわね……これは。ん? モトミぃ! マコトぉ、第二波来るわよっ』
さっきの倍以上の青い光りが浮かび上がる……。
『お姉ちゃんっ! アイツら、槍を再生してるよっ!』
『何ですってっ!』
モニター画面を見ると、一度槍を投げた騎馬武者の腕からゆっくりと新しい槍が浮かび上がってくる。
『お、おい……、こんなのアリかよ……』
『これは念力なんじゃ。念力はイメージじゃ。イメージすればどうにでもなるんじゃよ』
『手強いわね……。モトミっ! 第二弾をCIWSで撃墜したら、突入よ! 再生の前に倒すわ!』
『了解っ、ちょっと興奮する展開ねっ!』
『マコトっ! アンタもほどほどに手伝いなさいよっ!』
くそっ、モトミ姫の前で何てこと言うんだ。
ただでさえ、さっきはモトミに助けてもらって、俺の男は全く魅せれていないのに……。
俺はさらに下降すると、大きく左旋回しながら、騎馬武者軍団の真横に回りこもうとした。
青い光りの槍が百発以上放たれるのが見える。
すぐに反応したCIWSという兵器は、レーダーで飛来物を補足すると、次々に狙いを定めてレーザー砲を撃ち込んでいく。
《ドルルルルルルルッ……! ドルルルッ……。ドルルルルルッ……! ドルルッ……。》
ものの数十秒で全ての槍を撃ち落してしまった。
最新兵器の威力を見たか!
この騎馬野郎がっ!
俺は槍を再生しようとしている騎馬軍団の真横から、突っ込んでいく。
ゴーグルには色々な数字やら記号が出ているが、とりあえずフルオートでいったるでぇ~!
《ドンッドンッドンッドンッドンッドンッドンッドンッドンッ!》
レバー上部の赤い射撃ボタンを押そうとした瞬間、ゆっくりで一定間隔のレーザー砲が騎馬武者のほぼ正面から撃ち込まれ、騎馬武者がドンドンと消えてゆく。
そう、インベーダーゲームみたいに……。
『マコトくんっ、連射しちゃダメっ! 後ろの方に人がいるわっ』
『えっ?』
急いで騎馬軍団の後ろを見ると、そこには馬に乗っていない一人の人間? 念力使い? が確かにいる。
そして、騎馬武者たちは皆一緒の動きで槍を再生しようとしている。
『シュミドラかっ!』




