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第十三章 本当に準備はオーケーなの? その1

 俺とノブヲは学校でいつも通り、普通に過ごした。

 穏やかな、静かな時間を過ごした。

 今までほぼスルーしていた授業も、何だか真面目に聴いてしまった。


 校舎、校庭、体育館、先生、友達……、もしかすると、連休後は会えないかもしれない。

 そんな想いもあったのかも。


 感傷的になっていたわけでもない。

 使命感を持っていたわけでもない。

 ただ、何となく、特別だったのだ。


「ノブヲ……、なんかさ……、真面目に授業受けちゃったな……」


「なっ……」


 ノブヲはそう言うと黙った。

 俺も黙った。


 二人で沈黙したまま部室に入る。

 最後に部室にいる連中に挨拶くらいはしておこうと思っていたが、部室には誰もいなかった。

 無言のまま、二人で顔を見合わせると、放課後の静かな廊下を歩きながら、


「なあ、マコト……、俺たち、勝てるかな?」


「さあな……、なにしろスカートめくりだけが頼みの綱だからな……」


「そうだよな……、スカートめくりだもんな……」


「めくりまくりだよな……、ノブヲ……」


「メクリー&マクリーだよ……、マコト……」


「こんなときにさ、不謹慎ってぇか、不純ってぇか……、でもめくりまくりだよな」


「だから、メクリー&マクリーだって! マコトぉ~」


「ははっ……」


「ふふっ……」


 どうでもいい会話だ。

 今まで何回もノブヲとどうでもいい話をしてきた。

 どうでもいい会話が俺とノブヲを近づけ、俺とノブヲはどうでもよくない大切な友達になった。


 どうでもいいコトが大事なことだってある。


 スカートめくりで世界を救ったっていいじゃないか。

 エロくて不純な男が、それ俺のコトだけど、ヒーローになったっていいじゃないか! 立ち上がれ! 平凡な男よ! お前の力を見せてみろ! 俺は心で叫んだ。


 不安なのだ。


 どうでもいいコトが不安なのだ。

 いや、どうでもよくない。

 大事なコトだ。


 俺は立ち上がるのだが、俺の下半身も立ち上がってしまうかもしれない……。

 これから先、モトミ姫、キリカ、ヒメカのパンチラを何回見ることになるだろう。

 これだけは断言できる。


 パンチラに見慣れるという言葉は無いのだ。

 だから……、だから、不安なんだ……。



「進藤……、進藤……っと。あっ、まだ帰ってねぇや」


 下駄箱まで来て三年生の進藤先輩と仮屋先輩がまだ校内にいることを確認すると、俺とノブヲは少し離れた花壇の端に座って、二人が帰るのを待っていた。


「進藤先輩と仮屋先輩ってさ、マコト、サッカー部で一緒だったんじゃない?」


「ん? あいつらな……。嫌な奴らだぜ……」


「なんで?」


「確かにサッカー上手いんだけどさ、なんか鼻にかかるってぇか、偉そうなんだよね……」


「おまけに頭もめちゃくちゃイイってんだからな……」


 新入生の俺が圧倒的なパフォーマンスを魅せていきなりレギュラーに昇格するって話になったとき、二年生でレギュラーだったこの二人だけが反対した。 理由は、クレバーじゃないってコトだった。


 確かに、俺は戦略とかよりは、感覚でサッカーしてたから、そう思われても仕方がないのだが、声を大にして言われると気分が悪かった。

 どうも入部以来、この二人の先輩からは良く思われていなかったようだ。


 俺、何かしたかな? なんか、ムカついてきたぞぉ~。


「とにかく、俺はあいつらの力を借りることには反対だ。だから、こんな封筒は今すぐ破り捨ててやりたんだけど……」


「だけどぉ?」


「キリカには逆らえない……」


「ははっ! マコト、キリカのパンツ見てるしなぁ~、あっ……」


 だから、ノブヲさん、それは禁句なのだよ。

 テンションがダダ下がりじゃんか……。


「ご、ごめん……」


 ノブヲが素直に謝ったとき、下駄箱のほうから不愉快な声が聞こえてきた。


「あっ、先輩たち、来たぞっ!」


 話題を変えるようにノブヲがそう言う。

 二人の先輩たちは、一年生の女子を数人連れて、何だかワイワイ騒ぎながら、楽しそうに帰っていく。

 頭が良くて、スポーツ万能で、そこそこ?イケメンで、女の子に囲まれている……。

 そんなリア充な奴らを守るために、俺たちはこれから命がけの闘いに行くのか? ちょっと気分がブルーになった。


 イケメンで将来に不安のない大金持ちのノブヲは、そんな先輩たちにコンプレックスを感じるわけがない。

 俺の険しい顔を、不思議そうな目で見ている。


 まあ、いずれ奴らはヒーローとなった俺の前にひざまずかせてやるぜ。

 俺は、俺の中のネガティブ要素を取り除くように深く深呼吸して、


「さっ、ノブヲっ! 封筒を下駄箱に突っ込んだら、いよいよだぜ!」


 最高に強張った満面の笑みを浮かべた。

 ノブヲは最高に引きつった苦笑いで俺に答えてくれた。

 俺たちは学校を一度も振り返らずに、一気にノブヲの家までぶっ飛ばした。


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