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第二章 モテたい! けど、モテない? その1

 俺は小学生の頃からずっとモテたかった。

 モテるためにリレーの選手になり、モテるために空手やサッカーをやり、モテるために人と違う服装をしたりした。


 それなのに、俺は人生で一度もモテたことがなかった。


 顔のせい?


 確かに俺の顔は硬く醜い……、かもしれない。


 醜い?


 そこまでは酷くはないだろうと自分では思っている。

 そして、もの凄くナンパな思考回路を持っているのに、大体いつも「硬派だね!」なんて言われる。


 所詮、人間は外見で判断されるのである。


 中学生になって初めてできた友達のノブヲは、これからは知性派の時代だと言った。

 バイオテクノロジーにコンピュータサイエンス、それらをMIT(マサチューセッツ工科大学)で専攻すれば、女にモテモテェ~だと言った。


 俺はイケメンノブヲを信じて科学部に入るが、中学の貴重な三年間、その三年もの間、全く女っ気のない部室で雑誌ニュートンを読んでいた。


 そんな思い出しかない。


 いや、女は一人いた、キリカだ。


 でも、キリカはテニス部にも所属しており、いつもテニスの練習が終わると科学部の部室にやってきて、「アンタたちすこしは外で運動しなさいよぉ」とか言うのだ。


 キリカは頭が良くて運動もできる典型的な優等生で、部室で勉強をしてから帰って行くのだった。


 中学時代の女との接点は結局キリカオンリーだった。


 あっ、あと母ちゃん。


 しかも、後から聞いたら、ノブヲはシレッと言った。


 科学部に入るのに一人じゃ嫌だったから俺を誘ったのだと。

 モテると言えば俺は確実に入ると思ったと。


 まだ出会って数日のノブヲにそう思われていたのだ。


 まあ、結局はそのお陰で都内屈指の公立進学校に入れたわけだし、これはこれで感謝している。


 中学の科学部は、顧問が進路指導担当で、公立高校推薦入学のエキスパートだった。

 三年生になると、部活は勉強が主となり、物理や数学、化学を中心的に勉強して、推薦を狙う。


 俺は最初、雑誌ニュートンに書いてあることを理解したくて勉強を始めたが、周りの生徒はみんな頭が良かったので、自然とみんなが俺に勉強を教えてくれるようになった。

 今まで全く勉強に興味がなかった頭の悪い俺の成績を上げることが、部の目標になるほどみんなは熱心だった。

 

 そんな俺にみんなが集中していたが、途中でビックサプライズがあった。


 なんと、ノブヲが馬鹿だったのだ。


 これにはみんなが驚いた。


 ノブヲは由緒正しい名家の生まれで、親は会社を経営しているわけだが、そのへんの中小企業ではない。

 旧財閥系商社グループを経営しているのだ。


 創業家の家系らしいのだが、金持ちでイケメン、優しい性格という出来過ぎのノブヲを、みんなはてっきり頭が良いものだと思っていたのだ。


 しかし、ノブヲは幼稚園受験、小学校受験、中学校受験を三連敗中という筋金入りの馬鹿だったのだ。


 親はすっかりノブヲの将来を諦めているらしいが、中三の夏まで、その事実に気付かなかった俺たちは、すっかり責任を感じてしまい、ノブヲの特訓が始まったのだった。


 ノブヲは出足が遅かったので、推薦入試には間に合わなかったが、俺はすでに推薦で公立最強の進学校である緑高校に合格していたので、他に受験が終わった何人かと後輩の二年生を誘い、ノブヲの家に泊りがけで受験のサポートをした。


 俺の指導は全然役に立っていなかったと思うが、後輩にめちゃくちゃな天才がいて、彼が実に分かりやすく勉強を教えるものだから、ノブヲはギリギリセーフながらも、同じ進学校に進むことができたというわけである。


 俺は、高校生になったら今までのような地味な生活ではなく、派手な学生生活をエンジョイしてやる! と張り切っていて、サッカー部のモテ度はハンパない! という理由でサッカー部に入部した。


 しかし、これがガッツリ本気系の部活で、早朝からの朝練に夜遅くまでの夜練と、まったく女との接触が無い日々となってしまったのだ。


 目指せ国立! のもとに俺は頑張ってしまい、間違って一年生のくせにレギュラーに選ばれてしまったのである。


 毎日サッカーのことだけを考えろ! と顧問の先生に言われる始末だ。


 彼女を作って青春の高校生活を過ごすという夢がどんどん遠ざかるなか、どうすればモテるのかをサッカー部の先輩に相談したら、Jリーガーになったり、代表選手になったらモテまくるぞぉ! などと言われて笑われたので、


「自分、今、モテたいんで」


と高倉健ばりの渋さで部活を辞めた。


 部活を辞めた高校生は暇だった。


 友達はみな、部活や塾やバイトに忙しいし、遊ぶのにも金がいるため、あまり外では遊べない。

 そもそも進学校なのでまわりは勉強中心の奴が多くて、結局遊び相手は引き続き科学部に入部したノブヲだった。


 科学部は幽霊部員が多く、部室は俺とノブヲの遊び場と化した。


 高校生になると、科学への興味より、異性への興味のほうが大幅に上回るので、雑誌ニュートンを卒業しエロ本、エロDVD、そしてエロ動画へと俺たちの興味は変遷していった。


 そして科学部員ではない暇な男たちが、いつの間にか集まってきて、部室はいつも賑やかな状態になっていた。

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