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碧き舞い花  作者: ユフォン・ホイコントロ  訳者:御島いる
第一章 碧き舞い花
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71:変化と連携

 三人は血に濡れたルルフォーラから距離を取る。

 今、彼女が醸し出すのは魅惑でも優雅でも、不気味でもない。獲物を求める肉食獣のような真っ直ぐな雰囲気。

『夜霧』の指揮官の変化は雰囲気だけに止まらず、セラが感じ取る彼女の力量はベグラオに並ぶものをになっていた。

 それでもベグラオ程度。それは一人でも倒せるということ。セラとイソラは再び攻撃をしようと動く。

「二人とも待て!」

 そんな二人を止めたのはテムだ。彼はルルフォーラを強く見つめる。注目の的のルルフォーラはそんなこと一切気にせずに独り言ちている。

「でも、少し足りないかしら……」

「テム、どうして止めるの」

「ここは一気に畳みかける」

 セラとイソラが言うとテムは視線をそのままに口を開く。「二人とも感じたろ。斬ったら強くなった。何かおかしい」

「しょうがないわ……自分でやるのはやだったのに……まあ、もう汚れちゃったことに変わりはないしね……」

「何をっ!?」

 テムが叫ぶ。セラとイソラも声こそあげないが息を呑んで目を見開く。

 三人の視線を浴びる中、ルルフォーラが細月刀で自らの手首をかき斬ったのだ。

 ぼたぼたと垂れる赤。地面に新たな染みを作っていく。

「!」

 三人の背筋に悪寒が走る。

 最初に狙われたのはテムだ。それは一番弱いからか、はたまた彼女の能力に気付き始めたからか。とにかくテムだった。

 突然テムの目の前に現れたルルフォーラは細剣を振り下ろす。

「くそっ!」反応は遅れたもののテムは天涙で身を守った。「っく……」

 テムの手から天涙が飛ぶ。

「テムっ!」

 ルルフォーラの二の太刀がテムに迫る中、セラは二人の間に跳んで出た。オーウィンをルルフォーラに振りながらテムに弱めた衝撃波のマカを放った。

 オーウィンと細月刀が火花を散らし、テムは衝撃波で地面を転がった。

 急激に力を上げた敵将にセラは鎧のマカを纏う。そうでもしなければ、細剣の切っ先が掠っただけでも致命傷になりかねないと感じたからだ。現に剣を交え始めると、押されるのはセラの方だった。

「セラ姉ちゃん!」

「テム、あたしたちも!」

 イソラは拾っていた天涙をテムに渡し、二人でセラに加勢する。


「っわ……!」

 セラが掌底を受け、吹き飛ばされた。

 瓦礫の山に抱えられたセラはすぐに復帰しようとしたが足が隙間に挟まってしまっていた。

 戦う三人の方に目をやるとイソラとテムが抜群の連携を見せていた。

 テムが斬りかかり、その背中を伝いイソラが踵を落とす。

 イソラが刀を放せばテムが二刀になり、テムが天涙を放せばイソラが二刀になる。

 イソラが背後を取られれば、テムがイソラの背を守る。

 テムが足を狙えば、イソラが頭を狙う。

 立体的な連携だった。

 それでも、ルルフォーラは動じない。ベグラオにはなかった素早さで対応していた。

 だが、それもすべてではなかった。怒涛の連携、連撃にルルフォーラが体勢を崩した。その隙を突き、テムが地面に手をついて、彼女を高く蹴り上げた。

 蹴り上げられたルルフォーラはまたも重力を弱めたかのようにゆったりと宙を漂う。そこにまたもやイソラが追うように高く跳んだ。今度は剣の届かない距離だ。

 届かない距離なはずなのに、彼女は居合斬りをするかのように刀を構えた。

「?」

 夕日と血で染まったルルフォーラの顔が訝しむように歪む。

「がぁっ……!」

 訝しみが驚きと苦痛に変わった。

 イソラが空中でルルフォーラを通り過ぎたのだ。今、彼女は刀を振り抜いた体勢で敵の背後にいる。

「イソラ!」テムが下から天涙を投げた。

 回転しながら迫る刀をイソラは見向きもせず正確にキャッチする。「分かってる」

 そうして二刀流となったイソラはまるでそこに地面があるかのように空中で宙返りをした。彼女の下を細月刀を突き出したルルフォーラが通過する。

 無防備となった麗しき背中を交差した二本の刀が斬り裂いた。

「…………っ!!」

 ルルフォーラが重力に従って落ちた。

 続いてイソラがきれいに着地する。

 テムが天涙を受け取った。

 未だセラの足は抜けない。

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