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碧き舞い花  作者: ユフォン・ホイコントロ  訳者:御島いる
第三章 ゼィグラーシス

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447:フュレイのお願い

 セラは短く息を吐いた。そして申し訳なさそうにフュレイを見やる。

「ごめんね、フュレイちゃん」

 フュレイがじっと座ってセラがヴェールを見せるのを待ちはじめてから小一時間。その目的は達成されていない。

 苦笑ぎみにセラ。「緊張しちゃってるのかな、フュレイちゃんに見られてて」

「やっぱりわたし、邪魔だった……?」

「ううん、そんなことない。これはわたしの問題だもの」フュレイのもとに歩み寄り、目線を合わせるセラ。「フュレイちゃんは全然関係よ。でも、今日はさっきの見せられそうにないかな。また今度、それでもいい?」

「今度は見れる?」

「うーん……ごめん、約束はできないかな。でも、頑張るよ」

「わかった」

 セラは意外だと思った。約一時間も飽きずに動かないセラを見ているほど興味を惹かれた割りには、フュレイはあっさりと引き下がった。別段しょんぼりすることもない。あれほど見たがっていたのに、見れないのなら見れないで構わないと考えている感じを受ける。それともこれはセラの考え過ぎで、またの機会に見れることを信じ切っているだけだろうか。

「じゃあさ、おじいちゃんと戦ってるのが見たい!」

「え?……」

 彼女の申し出を理解するのに、セラは時間を要した。飲み込むと、その間ずっと瞠ったままだった目をフュレイから逸らし、ハンサンに向ける。

「……っと、こう言ってますけど、どうですかハンサンさん?」

「以前、またの機会にと言いましたしね。いいでしょう、手合せ願いましょうか」

 こうしてセラはハンサンと対峙することとなった。


 森の中央。ハンサンは腰の細身の剣を抜き、背筋を伸ばした隙の無い構えを見せる。

「鍛錬のお手伝い、させていただきます。『碧き舞い花』」

「こちらこそ、よろしくお願いします」

 セラがオーウィンを身体の前で構える。

 途端。

 老人がセラに剣を突き刺しに、トラセードで眼前に現れた。

 読めなかった。

 ネルのトラセードとは全く違う。することを察知できなかった。これが戦士のトラセードか。それも熟練のトラセスの。

 ナパードでは触れられる。

 時を薄め、止める。

 解放。

 しかしすぐに、次手が迫った。

 一度目が感じ取れず、より研ぎ澄ませた感覚でこれを前もって感じ取ったセラ。一直線に迫る刃を華麗に回避し、ハンサンの横に躍り出る。すかさず、魔素を厚く張ることもなく、斬り掛かる。躱される、そう先読みしたからマカを使わなかったわけではない。ただ一回のトラセードを見た瞬間から、ハンサンに全力で挑みたいと思ったからだ。それに、この世界には再生の泉を倣った温泉がある。命を脅かすような怪我でなければ、すぐに治るだろう。

 彼女の先読み通り、トラセードでわずか一歩程を移動し白刃を躱したハンサン。一転、踏み込んで、未だに剣を振るっている最中のセラに三度目の突きを放つ。

 一片(ひとひら)の碧き花びらを貫く。

 舞い花の主は老人の背後、フクロウを切り返しにかかる。

 ハンサンがトラセードを行う気配はない。しかし、彼は突き出していた剣を反転させ、逆手に持ちかえると、脇の下から背後に回し、オーウィンを受け止めた。

 オーウィンを抑え込み、空いている手でセラの顔に裏拳を繰り出す。狙いは彼女の鼻。それも局所的にトラセードを用いた急加速。その素早い身のこなしにセラはわずかに顔を動かし、狙いを逸らすことで精一杯だった。

 頬を殴られ、体勢を崩す。

 そこを当然、老人が狙う。

 身体をセラの方へ向けはじめるハンサン。逆手に持った剣をオーウィンを支柱に回転させ、反対の手で順手に握るとセラの首めがけて振るう。

 が、届かない。

 セラもただ受けっぱなしでいるわけにはいかない。

 オーウィンから片手を離し、ハンサンの腹部に向かって魔素を放っていたの。その衝撃波に押し退けられ、ハンサンは森の木に背を預けることとなった。

「さすがですね、セラさん」

「……まさか首を狙ってくるなんて」

「セラさんなら大丈夫だろうと思いまして。それに、鍛錬のお手伝いと申しましたよね。前回ヅォイァさんとやられていた時のように、殺す気でやった方がいいのかと思いまして」

「ぁぁ……なるほど」セラは得心し、頷くとハンサンに締まった眼差しを向ける。「じゃあ、そのまま続き、お願いします」

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