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碧き舞い花  作者: ユフォン・ホイコントロ  訳者:御島いる
第三章 ゼィグラーシス

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439/535

435:六人の子どもたちと紫色の

「ちょっと! ちょっと、ちょっと!」

 町の入り口のセラたちを見つけ、ネルが足を踏み鳴らして近寄ってきた。その声に、町の大人たちは入口に目を向け、六人いた子どもたちはネルについてきた。子どもの中に、一人だけ花輪を頭に乗せた男の子がいるが、その子がロォムだろう。

「どうして連れてきたのハンサ、うぁっ!」

「誰!」

「外の世界の人?」

「きれいな人!」

「おじちゃん髭長ーい!」

「ねぇ、ネルお姉ちゃん?」

「僕の誕生日を一緒にお祝いしてくれるの?」

 子どもたちはネルを押し退け、セラとヅォイァを囲む。セラはしめたと心内で悪い顔をすると、腰をかがめてにっこりと笑った。

「わたしはね、ネルお姉ちゃんの友達なの。セラっていうの、よろしくね、みんな」

 よろしくっ! 子どもたちは声を揃えてセラを受け入れた。

「これでも城に帰す?」

 悪戯っぽく笑んでサファイアを向けるセラにネルは口角をひくひくとさせながら返す。

「パーティを楽しんで」


 子どもたちに手を引かれ、花壇の前に用意された低いテーブルに誘われたセラ。これまた小さな椅子にちょこんと座らせられる。彼女をそうさせると子どもたちは他の椅子に座っていく。ロォムが花壇を背にした主役席だ。

「ちょ、わたしの椅子がないじゃない!」

 遅れてやってきたネルがぷんすかと腕を振ると、子どもたちは笑い、先程セラとヅォイァに「誰!」と言った少年が口を開く。

「ネル姉ちゃん、さっき椅子が小さいから座りづらいって言ってたじゃーん」

「そういうこと言うと、ワンザにはケーキなしよ」

「っげ! ずりぃ!」

「ネルお姉ちゃん、わたしの椅子、座る?」

 そう言ってネルに椅子を差し出すのはさっき「外の世界の人?」と首を傾げていた少女だ。

「ニフラは優しいのね、でも大丈夫よ」ネルはニフラを座らせる。「どのみちわたしは動き回るから、このままで」

「なんだよ、別にいいんじゃん」

「こら、ワンザ!」

「ぶぅぅだ」

「あたしミキュア」

 じゃれ合うネルとワンザを余所に、セラの隣に座った「きれいな人!」と目を輝かせてセラのことを見ていた少女が声をかけてきた。

「よろしく、ミキュア」

「ねえ、セラお姉ちゃんは旅をしているの?」

「あのおじちゃんはおじいちゃん?」

 ミキュアの問いに被るように割って入ってきたのはセラの反対隣り、ヅォイァの髭を物珍し気に見ていた少年だ。

「ちょっと、ヨムール。今あたしが質問してるところなのに」

「いいじゃん」

「駄目よ、あたしが先」

「ちょっとミキュア、ヨムール。喧嘩しないで。ちゃんと答えるから」

「ねぇ! パーティは!」

 ネルとセラが他の子どもたちに意識を取られていると、主役のロォムの脇の席の女の子が声を張った。「ねぇ、ネルお姉ちゃん?」と言っていた子だ。

「い、いいよ、イツナ。僕はみんなが楽しかったらそれで」

「駄目よ、ロォム。今日はあなたが主役なのよ」

「そうね」ネルは手を叩いて子どもたちに言い聞かせる。「みんな、お客さんとはまた今度お話ししましょう。ワンザも、もう変なこと言わないでね」

「へーい」

 頷いてロォムの後ろに移動するネル。屈み、優しく彼の背に寄り添う。

「じゃあ、はじめましょう。ロォムの誕生日パーティ!」


「まさかあなたにお茶を出すことになるなんてね」

 セラの前に置かれたティーカップに、ネルによってぶどうジュースを思わせる紫色の液体が注がれる。

「え、ちょっと待って」

「なんですの? まさか飲めないだなんて言うんじゃないでしょうね?」

「ううん、違う。これって、逆鱗茶?」

「そうよ。わたしもみんなも大好きなね」

「わたしも!」バッグから乾燥逆鱗花の入った袋を取り出すセラ。「ほら!」

「あら、そうなの。でも珍しいことじゃなくってよ。逆鱗茶を好きな人だなんて。仲良くなるきっかけになんてなりませんわ」

「仲良くなりたいのもそうだけど、今はそうじゃなくて逆鱗花そのものの話で。乾燥させた逆鱗花って今じゃ貴重品でしょ? 流通しているものがなくなったら、もう飲めない。わたしも今持ってる分で最後だし。大事に飲んでる」

「へぇ、そうですか。でもわたしは毎日欠かさず飲んでいますわよ。無くなる心配なんてないですもの」

「え?」

 不思議がるセラに対し、ネルは勝ち誇って胸を張る。

「栽培していますからね、竜鱗草(りゅうりんそう)

クィフォ(うそ)

 彼女が驚愕したのも無理はない。逆鱗花、別名竜鱗草は今は無き竜人世界、虹架諸島スウィン・クレ・メージュの庭園以外では育たず、他世界での生息も発見されていないものだ。

 それを栽培していると、ネルは言ったのだ。

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