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碧き舞い花  作者: ユフォン・ホイコントロ  訳者:御島いる
第二章 賢者評議会

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344:黒と白が狙うもの

「いいか、ジルェアスは当然、前に出て戦うことになる。俺たちと一緒に行くとはいえ、お前にはナパードがあるからな、劣勢な場所を探して跳び回ってくれていい。なんせ、戦場は広域だからな」

「僕の貰ってる情報では、ウェル・ザデレァの八割は戦場と化してるって」

「ほとんど世界の全部……」

「原住民がいない世界だったのが幸い。無関係な人間の死傷者は全くいない」

「そっか、よかった」

「だが、評議会も含め三軍とも被害は同程度に受けている。そこで新手の応援以上に後方支援が重要になってくる。ユフォン、お前は一昨日話した通り、負傷者の治療だ」

「分かってるさ。でも、ちゃんと記録もする」

「その辺の塩梅は任せる。どっちも重要な任務に変わりないからな」

 キノセは氷を鳴らしてグラスに口をつけた。

 セラは彼がグラスを置くのを待ってから、口を開く。

「そういえば、誰が総指揮官? ケン・セイ?」

「評議会全体で言えば、『空纏の司祭』だ。最初に向かった大隊の指揮官だからな。けどだ、今は各賢者や実力者が散らばって、各戦場をまとめてるって状況だ。俺もその一人になるわけだよ」

「僕たちはひとまずンベリカさんのところに行くんだ。評議会と白輝の本部野営地。そこで改めて状況を聞いて、作戦開始を待つ。まあ、僕の場合はすぐに治療開始になると思うけど」

「作戦開始を待つってことは、休戦中を狙って行くのね」

「奇襲仕掛けようってんじゃないからな。それに言っちゃ悪いが、ユフォンも含めて初陣ばっかだろ。開戦中に行くなんて危険だ」

 言い終わるとグラスを持ち、クイッと一気に最後の一口を煽るキノセ。

「大まかにはこんなもんか。……しかし俺は不思議だ」

「何がだい?」

 キノセの言葉に、ちびちびとグラスに口をつけるユフォンが尋ねる。セラもそんな目を彼に向ける。

「何がって、こんな長引いてることがだよ」

「それは『夜霧』も『白輝の刃』も退かないからでしょ?」

「どうして退かない? 『夜霧』からしてみれば評議会まで出張ってきて敵が増えてんだぜ? それなのに部隊長クラスを投入してまで応戦してる」

「確かに、言われてみれば不可解だ」ユフォンが顎を指で支える。「無人だった世界を占領してるから支配下に置いてる人もいないし、海と砂の世界でこれと言って何かあるわけじゃなさそうだし……」

「だろ? 白輝にしてもそうだ。なんでそんな世界を欲しがる?」

「何か……あるってこと?」

 セラは訊きながらも、自身たちの席に迫る知った気配に気を逸らしていた。そしてちょうど彼女が言い終えたと頃に彼がやってきた。

「あそこには、遺跡が埋まってるのだ」

 ユフォンが驚く。「カッパさん?」

 彼女たちの会話に混じってきたのは、緑色の肌、一つ目と嘴が特徴的なクァイ・バルのカッパだった。

 カッパはキノセの隣に座り、続ける。

「あそこは原住民がいないのでなくてだな、すでに滅びておるのだ。わしが幼い頃の話だ」

「あんたの幼い頃って、どんだけ昔の話だ」

 キノセが横目で窺うと、カッパは肩を一度竦めた。

「さてな、遥か昔のことぞ」

「で、その遺跡には何が?」セラは真剣な瞳を一つ目に向ける。「勢力の大きな二つの組織が狙うほどのものがあるんでしょ?」

「さいだ。無窮を生み出す装置ぞ」

「無窮……」ユフォンが言葉をかみ砕く。「つまり無限、永久ってことですか?」

「さいだろうな。わしも詳しくは知らん。聞いたのはその名だけだ」

「それが何にせよだ」キノセが呆れたように言う。「黒と白どっちがとっても、いい使い方はしないだろうな」

 セラは彼に頷く。「そうだね」

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