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碧き舞い花  作者: ユフォン・ホイコントロ  訳者:御島いる
第二章 賢者評議会

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337:そして二人に

「俺も一度席を外すとしよう。友との積もる話もあるだろうからな」

 ヅォイァはうねる髭をたなびかせ、部屋を出て行こうとする。

 そんな彼にもセラは声をかける。

「ヅォイァさんもありがとう。……どこにもいかないですよね?」

 セラが眠っている間、彼も治療を受けたのだろう。彼女との戦いでの傷は完全に消えていた。わずかに疲労の色も見えるが、動ける状態の彼がどこかへ行ってしまうのではとセラは考えた。

「何を言うか。俺の命はジルェアス嬢のものだと言っただろう。お前の伯父さんと話してな。この評議会について他言しないこと、ちょっとした口出し程度も参加しないこと、勝手な動きをしないこと、それからジルェアス嬢の(めい)に絶対従うこと。それらを条件にお前の所有物として、この地に留まることは許されたんだ」

「……所有物だなんて、そんな。伯父が、ごめんなさい」

「構わないさ。むしろ、お前の伯父の判断は正しい。お前がもたらした情報でコクスーリャさんが真に敵でないと分かったとはいえ、敵側の人間と一緒にいた人間を簡単に受け入れるなど、組織をまとめ上げる者として危ういだろう。まあしかし、姪に弱いことは確かだな。普通なら受け入れん」

 ヅォイァはセラに笑いかける。深く皺が刻まれた笑みだ。

「老い先短きこの命、余すことなく使ってくれ」

 セラは一瞬の戸惑いの後、微笑んだ。「はい」


 ヅォイァが出ていくと、今度はヒュエリがわざとらしく声を上げた。

「あー、わたしも、研究がありますし、そろそろ~……ユフォンくんはこのままセラちゃんについていてあげてください」

 そっとユフォンに耳打ちする。

「ズィプくんも居ませんし、チャンスですよ」

「ヒュエリさん」ユフォンが呆れて言う。「コソコソしたって、セラには聞こえてますからね」

「はっつ! そうでしたぁ……」

「ふふ」セラは小さく笑いながら問う。「ヒュエリさん、研究はどうですか?」

「う~ん、芳しいとは言えないですかね。でもここで色んな世界の人と会ったことで、色々試せることが増えましたし、ちょっとずつですけど、進んでいます! ついこの間なんて、ピョウウォルさんと話す機会があって、無生物を自分の体の一部として動かすときの感覚について色々と聞きました。そこには完全幽体や思念体を形成するために必要な自我が関わっているのではと、思ったので。あ、そういえばさっきセラちゃんが言ってた意識の底も気になりますね。ゼィロスさんが瞑想がどうとか言ってたので後で訊かないとです! あーでも……。そもそもですよ、完全幽体の大前提ともいえる生命活動の完全停止をしながらも、実体を生かしておく方法を見つけなきゃなんですよ! それが見付からないことには、自我を外に出す方法をいくら考えても、本当に死んでしまいますし……はい! こうしていれませんね! わたし、研究に戻ります! あ、最初からそのつもりでした……熱くなってしまって、すみません」

「いえ、ヒュエリさんだって感じで、わたしホッとします。帰って来てるんだなって」

「わぁ! 嬉しいです。わたしセラちゃんがどこに行っても、必ず帰る場所でいてあげますよ!」

「それなら、僕も」

「駄目です」

「え? なんでですか?」

「もちろん、ユフォンくんはセラちゃんと一緒にいてあげる役目があるからです。わたしは、二人の帰る場所です!」

「ふふ、そのためには、ユフォンはせめて自分の身が守れるくらいにはならないとだね」

「ははっ……。ついてって、自分の傷を治す、なんてことはないようにしないとだ」

 筆師が肩をすくめる。表面上はおどけて見えるが、その目には彼女が知る過去の彼にはない、意思の強さが覗えた。

 ただセラの隣に立つことを目標にしてきた彼だが、虹架諸島の件を相当に重く受け止めているのだろう。

「それじゃ、今度こそわたしは行きますね。お大事に、セラちゃん」

「ありがとうございます。ヒュエリさんとユフォンのおかげで、だいぶ元気ですよ」

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