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碧き舞い花  作者: ユフォン・ホイコントロ  訳者:御島いる
第二章 賢者評議会

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334/535

330:神は神

「しかしこの憑代は我の力に耐え得る。人間も捨てたものではないな」

 感触を確かめるように体を動かすシメナワ。

 そこへコクスーリャの声。戻って来たようだ。「攻撃が当たらないからって、シメナワに憑依したのか」

 目立った傷はなかったが、彼の全身は土で汚れていた。

「こまい人間どもに、神の姿では駄目だと分かってな」

「つまるところ」ヅォイァだ。「中身はヨコズナ神ということで間違いなんだな」

「憑依……また乗っ取り」

「中身? 乗っ取り?」二重となっていたヨコズナ神とシメナワの声が調和を取り始めた。「見当違いも甚だしいな、人間どもよ」

「?」

「神は神」

 二つの声が、寄り添ってゆく。

「憑代となったときより、この人間は我なのだ」

 ついには、一つ。まったく新しい声となった。

「我の身体、我の声」

 白目を剥いていたシメナワの瞳が、眼球が、丸ごと真っ黒に染まった。白目は皆無だ。

「……我だ」

 ヨコズナ神は笑んだ。同時にその気配は大きく膨れ上がり、荒波が如く周囲を飲み込んだ。

 ただ気配を感じただけだというのに、セラは思わず飛び退いて距離を取ってしまう。気読術や勘が、彼女に危険を知らせたというわけではなく、本能的に。

 そこでヨコズナが動き、セラの視界から消える。

「セラフィ!」と叫んだコクスーリャの声と同時に、セラは背後に莫大な存在を感じる。

 シメナワに憑依したからか、気配を感じることが出来ることが幸いだった。セラは繰り出された拳をすんでのところでナパードで躱し、次の瞬間にはヨコズナの脇の下に現れた。

 未だ花散るその刹那、閃きの剣を一太刀。

 それが決まるとすぐに花を散らし、敵の斜め後方へ現れ、また一太刀。

 跳び、一太刀、跳び、一太刀。跳び、一太刀……。

 碧花(へきか)乱舞。

 怪我と疲労で弱った状態。激しい攻防を立ち回るより、消耗の少ない戦い方だった。

 ヨコズナが反撃をせずにただただ受けていることは不気味に思ったが、セラは腕が疲労を訴えるまで瞬速の攻撃を続けたのち、身を退いた。敵の後方だ。それでコクスーリャ、ヅォイァの三人で囲むような形となった。

 肩で息をしながら、碧き花々に包まれた敵を見る。

 顔を歪める。

 ヨコズナの身体には彼女が最初につけた肩の小さな傷しか見られなかった。まったく効いていない。

 実力、闘気の差ももとより、やはり強者たちとの連戦が尾を引いている。動かなければという意識だけが、静かに歩み寄る朦朧から彼女を逃がしている。

 セラはバッグに手を入れ、一枚の葉っぱを取り出す。どこにでもあるような形、逆鱗花の葉だ。

 無意識とはいえ、ズィーを驚かせるほどの力を発揮したセラの竜化。力に目を向ければ、今欲するべき魅力的な一手だろう。しかし、それは敵も味方も見境なく襲ってしまう、暴走。だからこそ戒めているのだ。

 それでも彼女がそれを持ち歩く理由。それはもちろん、一時的に疲労を忘れさせる精力剤としてだ。

 いまだ荒い呼吸。サファイアは葉を映し、まばたく。

 全てを摂取したいという衝動を抑え、セラは葉の先端を小さくカリッと齧ったのだった。

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