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碧き舞い花  作者: ユフォン・ホイコントロ  訳者:御島いる
第二章 賢者評議会

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267/535

263:広場に三人

 作戦の決行は会議の翌日。夜明けと共にセラ、ズィー、ドードの三人はマグリアの噴水広場に立った。日常を装うためだろう、広場は以前に比べわずかに整備されていた。噴水は未だに力強くないが、流れる水の音は心地よい。

 東より昇る太陽の薄い輝きが三人を広場に浮かび上がらせる。煌びやかに縁取られた三人が見るのは一点。真正面、モノクロの帝居だ。あそこに液状人間本人が入り込んでいるドルンシャ帝がいる。

 ジジジッ……――。

『わたしの方はもう少しで全員が到着します』

 横一列の真ん中、ドードの首。通話の魔具であるロケットからはヒュエリの声。彼女は彼女で別の作戦を遂行中だった。

 セラが応答する。「分かりました。じゃあ、こっちははじめます」

『……三人だけで本当に――』

「大丈夫だぜ、ヒュエリさん。そもそもあいつに乗っ取られないの俺たちだけなんだしさ。当然のメンバーだろ」

 ズィーが早速スヴァニに手をかける。ドードが元気よく「そうっす!」と相づちを打った。

『……頑張ってください』

「はい。それじゃあ、ヒュエリさんもお願いしますね」

『任せてください』

 その言葉を最後に通話が切れた。

「それにしても、通話の魔具って評議会が作ってんのより良く聞こえるよな」ズィーがスヴァニを抜きながら言う。「チャチとかアスロンにはわりぃけど」

「わたしも詳しいことは分からないけど、単一世界と異空間じゃ難しさが違うんでしょ。ジュコもメィリアも世界の中での通信はここと大差ないじゃない」

「まあ、そういやそうだわな」

「?……何の話っすか」

「気にしなくていいよ、ドード。今は目の前の戦いに集中。ほら、わたしたちに気付いたみたい」

 夜は未だに水の中に人々を閉じ込めているのだろう。ぞろぞろと、噴水周りの水路から人が出てきた。セラとズィーが最初に大勢に囲まれたときのような一般市民の集団ではなく、全員が魔闘士。臨戦態勢だ。

「ひとまずひと暴れだな」ズィーは空気を纏い、口角を上げる。

 春一番と木枯らしを掲げるドード。「うっす!」

「相手が魔闘士だからってやり過ぎないでよ。特にズィー。いきなりスヴァニ抜いたけど、分かってるよね」

「さすがに大勢相手に素手じゃきつい。クラスタスと一緒に戦った時だってスヴァニ使ったし。安心しろよ、浅めを心掛けっから」

「俺も峰打ちっす!」

「てか、セラこそ。この前みたいなのはごめんだぞ」

「分かってる」セラは不貞腐れた顔で頬を薄く染めた。「今回は葉っぱじゃなくて麻薬の方、もう飲んでるから。ズィーも危なくなったらすぐ竜化してよね」

「あいよ。じゃ、行くか」

 話している間に三人は完全に囲まれた。

「先陣、切ります」

 ドードが駆け出す。セラはここでようやく、二人に遅れて抜刀した。

「ズィー。わたしたちも」

「ああ」

 剣の子に続くように二人の渡界人も駆け出した。


 際限なく増える魔闘士と自在に襲い掛かる水路の水。

 三人が手練れと言えども敵の手数は降りしきる雨のようで、絶え間ない。個々人でそれを相手にするとなれば、開始早々に敗北していたことだろう。

 だがすでに早朝の時は過ぎ去り、爽やかな朝となっていた。

 これほどに三人が善戦するのには理由がある。三人が互いを庇い合い、攻防の立ち替わりを目まぐるしく行っているからだ。仮に二人だったとしたら、それもうまくいっていなかっただろうと思われる。どうしても手が足りなくなっていただろう。

 しかし本当に三人だと言うだけで、未だに大きな負傷者が出ないものだろうかと疑問に思うところだろうが、三人にはもう一つ本命と言える理由があるのだ。

 実を言うと、彼女ら。()()で戦っているのだ。

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