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碧き舞い花  作者: ユフォン・ホイコントロ  訳者:御島いる
第二章 賢者評議会

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231:セラの提案

「まず、浸透寄生という言葉はやめにしましょう」

 セラは提案から始めた。

「そうだなぁ……浸透操作に改めます」

「操作、ですか? つまり寄生ではないってことですか?」

「はい」セラは頷く。「まだ操作がはっきりと正しいとは言えないですけど、寄生は間違いだと言い切れます」

「そのわけは?」とジュメニ。

「まったく気配が感じられないからです。中に入られても感じませんでした」

「消しているということは?」

「考えました。でも、あんなにも近付かれたのに感じないのは不自然です。寄生するにしてもエネルギーを使うだろうし」

「じゃあ、じゃあ、寄生ではないということは、液状人間は増えていないということですか? 触った水を自分にしていないと?」

 ヒュエリはすぐに疑問を口にする。ジュメニはもう置いてけぼりだ。セラとヒュエリが心ゆくまで議論を重ねられるようにするためか、部屋にあった椅子を二人から少し離れたところに運び、座った。

「恐らく、本体は最初の大きさのままだと思います」

 セラははっきりと言った。だが、すぐに優しい笑みをヒュエリに向ける。

「でもヒュエリさんの目の付け所は正しかったと思います。水に触れると増えるってところはあながち間違いじゃないんだと思います。自分の身体の一部にはできないけど、操れる」

「……その操った水で、さらに人を操る?……だから操作ってことですね?」

「そう考えてます。操っているとはいえただの水。だから気配が感じられないし、その水で操ってる人がどれだけ傷ついても痛みを感じない」

「待ってください、セラちゃん」

 ヒュエリは思案顔で俯きながら言う。

「痛みを感じないということは、感覚が繋がっていないということですよね? ならなぜ、彼はわたしたちと言葉を交わせたのでしょうか?」

「……」セラは少しばかり弱々しい顔を見せた。「これはもっと確認する必要があるんですけど、たぶん、操っている水から本体に特定のものだけが共有されてるんだと思います。……ヒュエリさんの考えを否定しておいて、ごめんなさい、曖昧で。やっぱりもっと確信を得てから話すべきでしたよね……」

「えっ、いえいえ!……そんなこと……! 実際に浸透されそうになったセラちゃんが言うことですし、わたしの頭の中だけの考察より信憑性がありますよ! ね、ジュメニ!」

「まあ、部屋の中で本だけから出てきた考えじゃ、色んな世界を経験して出てくる考えには敵わないな」

「あーっ! ちょっとジュメニ! わたしだってちゃんと自分の足で調べに行ったりすることだってあるんだからねっ! 異世界にだって!」

「はいはい、分かってる分かってる。でもセラちゃんは、もうそれ以上じゃない?」

「情報の量でヒュエリさんには敵いません。でも、今回のことに関していえば、今まで歩んできた道が手掛かりをくれました」

 セラのその言葉にヒュエリとジュメニは微笑む。

「これは寄生じゃないんじゃないかって思った時、一回全部まっさらにして考えたんです。ヒュエリさんがくれた情報と、わたしが知ってること……。今回はポプス、えっとジュコの機械人間と似たカラクリと人が共存する世界なんですけど、そこでの出来事が近いんじゃないかって」

「どんな?」とジュメニ。

「一人の科学者が『傀儡の糸』って呼ばれる道具でカラクリたちを思うがままに操ったんです」

「って、まんまホワッグマーラの現状じゃない、それ。ヒュエリが余計な事言わなかったら、すぐ答え出たんじゃないの?」

「えっ!? そんなっ!? そ、そうですかねぇ、セラちゃん?」

「そんなことないですよ。ヒュエリさんの情報があっての今の考えです」

「へへ~んっ!」

 したり顔で親友を見るヒュエリ。ジュメニは呆れる。

「セラちゃん、あんまヒュエリを甘やかさないでよ。すぐ調子乗るんだから」

「いいんだよ、ジュメニ! 今は調子に乗るときなんだから」

「はいぃ?」

「この調子で液状人間からホワッグマーラを取り戻すんだから」

 そう言ったヒュエリの表情は、したり顔はどこへやら、真剣そのものだ。

「早速、ヨルペン帝に話に行きましょう、と言いたいところですが……」

 意気込んだいいものの、ヒュエリは申し訳なさそうにセラに視線を向ける。セラはその理由を把握できている。

「はい。この考え自体が充分と言えるほど確かじゃないということもありますけど、まだ液状人間の浸透操作から人々を解放する方法が見付かったわけじゃない、ですね?」

 セラの言葉にヒュエリが頷く。

 あのヨルペン帝が攻めの姿勢を見せるのには、人々を安全に救出できる確実な方法が必要なのだ。

「……試したいことがあるんです」

 セラはある種の確信を持って口にする。

 今まで液状人間が渡界人二人を配下にしようとして失敗した例から、彼女は可能性を見出していた。だが、それにもまた確認が必要だった。そして時間も必要だと思われた。

「時間がかかるけど、わたしが思う一番の方法を」

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