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碧き舞い花  作者: ユフォン・ホイコントロ  訳者:御島いる
第二章 賢者評議会

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216:侵略者の正体と能力

「今の話だと侵略者って一人だよな……。ホワッグマーラ中の人たちを乗っ取れるって、相当なことだろ? どんな奴なんですか?」

 ズィーが発した問いに、ヒュエリは侵略者に言及する。

「侵略してきたのはただ一人の人間です。しかし彼はわたしたちのような固体として存在する人間ではありません」

「んー?」ズィーが唸り眉を顰める。

「固体じゃないってことは、液体か気体ってことですよね?」

 セラの確認にヒュエリは頷く。そして手のひらを上に向けると、そこに水の球を出現させた。

「液状人間。彼は身体が水でできています」

 と言ってヒュエリは手のひらの水を静かに収めた。

「水か……ロマーニって人もそういや水使ってたな」

 ズィーの発言にセラは水色髪に魔闘士を思い浮かべる。大会では巨大な水の球を出現させたかと思うと倒れてしまっていた。中身が液状人間だったとして、恐らくロマーニの身体を上手く操れなかったのかもしれない。

「はい。彼は水のマカを使う魔闘士だったので、相性が良かったんだと思います。それで恐らく最初の拠り所にされてしまった」

「水は生きている人間なら誰しも必要なものじゃ。飲み水に液状の身体を含ませれば体内に容易く入り込める」

 ジェルマドが静かに言った。ヒュエリがそれに頷く。

「わたしは液状人間が固体の人間に入り込む能力、現象のことを浸透寄生と名付けました。どこの世界の書物にも記載がなかったので」

「大抵は全員が乗っ取られて外にその現象が漏れることがなかったのだろうな」

 ジェルマドが半ば呆れながら肩を上げた。自分には関係ないとでも言いたそうだった。現に思念体である彼は水を必要としないために、乗っ取られる心配など皆無。無関係なのだ。

「そして液状人間の能力は浸透寄生だけではありません。それだけであればたった一人だけの寄生で済み、ホワッグマーラはこんなことにはなりませんでした」

 ヒュエリはわずかに俯いた。だがすぐに顔を上げ、続ける。

「ありとあらゆる水との同化。時間はかかるようですが、触れた水を自分にすることができるんです」

「ってことは、今そいつはホワッグマーラのほとんどの水と一体化してんのか?」

「そっか、だからわたしたちが来たことを知ったのね。水路はそいつの目」

「はい。ですが、目だけでなくそのものです、セラちゃん。先ほど液状人間を身体が水だと言いましたが、今の彼は水が身体と表現した方が正しいかもしれません」

「ホワッグマーラは昔から水源が豊富じゃった、存在を大きくするには適していたのだろう。そして、身体である水の量が増えればその分だけ多くの固体へ浸透寄生することができるというわけじゃな」

「最初はロマーニからドルンシャ帝みたいに人から人への乗り移りだったけど、今じゃ人から人、水場から人への感染って感じか。病気みてぇだな」

 ズィーはそう言った後、首を傾げた。

「でも、どうしてヒュエリさん、ユフォン、ドードは無事なんだ? マグリアにいたんですよね? 他の都市にはまだ安全な場所があるにしても、マグリアじゃ手遅れだったんじゃ?」

「ああ、わたしとユフォンくんはここにいたんですよ。わたしがあまりにも研究に没頭してしまったので、マカの修練ができない、とユフォンくんも一緒に禁書に。寝食もここでだったので巻き込まれなかったんです」

「なるほど。で、ドードは? ブレグ隊長と一緒に乗っ取られなかったのはなんでだ? 相手の水不足か?」

「そんなわけないでしょ、ドードは剣の精だからよ。ね?」

「っす、セラさんの言う通りっすよ」

「ほら」

「ほら、じゃなくて。剣の精ってなんだよ。俺、剣響行ったことないんだけどぉ? 死霊の剣とは戦ってないんですけどぉ?」

「どうせ詳しく説明しても理解しないでしょ、ズィーは」

「ああ! だからざっと! ざっと教えてくれっ!」

「なんでそんな堂々と言うのよ」セラは小さく息を吐いた。「いい。剣響の名工が丹精を込めて作った対となる二本の刀を番刀っていうのは分かるよね」

「うん、まあ」

「ジジが作った春一番と木枯らしっす!」

 セラの説明に合わせてドードが自らの腰の二刀をズィーに示した。

「番刀は夫婦めおとがたなとも呼ばれていて、、その二本の間には子供が産まれるの。って言っても人間じゃなくて、精霊なんだけど。それが剣の精。分かった?」

「よし、納得っ! つまり人間じゃないからだ丈夫だったと」

 ジジジジッ……――。

 ズィーが手を打ったのとタイミングを合わせるかのように、ヒュエリの胸元に下がるロケットがわずかな音を立てた。

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