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碧き舞い花  作者: ユフォン・ホイコントロ  訳者:御島いる
第二章 賢者評議会
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189:ちゃんとお別れ

 蒼白に佇む純白を基調とした豪奢な城。

 その中庭にはセラ、ズィー、サパル。そして回帰軍の四人が揃っていた。

 関わりが深いセラのみが回帰軍の四人と向き合い、ズィーとサパルは少し離れたところで話している。そんなサパルの背中にはカラスの意匠が施された鞘に収まったタェシェ。結局彼が持つことになったのだ。

「今まではこちらばかりが手を借りていた。今後、セラからの呼びかけがあれば、俺たちは協力する」

 セラに向かってプライが言った。

 デラヴェスとの会合の前日、セラはジュランとプライに賢者評議会のことを話した。そこで戦力を集めているということを。もちろん、二人は要請があれば力を貸してくれると快諾してくれた。

「遠慮するなよ」とジュラン。

「うん。でも、この世界のこともあるでしょ。ちゃんとやらなきゃだよ、ジュラン」

「はっ、心配すんな。そこはプライとかキテェアがいる」

「あたしは!?」とエリンが吠えた。

「あ? まあ、一応エリンもな。期待してるぞ」

「期待! そ、そう? ま、まあやれることなら何でもするよ、あたし!」

「じゃあ、とりあえず黙れ」

「……」

 口を閉じ、ジュランが出すであろう次の指示への期待を膨らませるエリン。しかし、ジュランが彼女に指示を出すことはない。

「ジュランさん、エリンちゃんをからかわないでください」とキテェア。

「えっ!? もぉう! ジュランのバカ! アホ!」

「ははは、ま、期待してんのは嘘じゃねえからよ。頑張れよ」

 エリンは怒り顔をパァッと明るくして。「うん!」

「頑張ってね、エリン」セラは笑みと共に声援を送る。

「セラも! 故郷を焼いた奴らに負けないでねっ!」

「うん。もちろん!……じゃあ、そろそろ」

 セラは四人それぞれにサファイアを向けていく。

「プライさん、新しい服、ありがとう」彼女は新調された雲海織りの衣服を示しながら言う。「ズィーの分まで」

「気にするな。戦いと織物は俺の趣味だからな」

 セラは頷いて、薬カバンに手を添えるとキテェアに。「キテェアさんも薬草ありがとうございます。使ってみます」

「ええ。セラちゃんなら、うまく使えると思うわ」

「今度はちゃんとお別れの挨拶できるね、エリン」

「そうだね。またね。セラ」

 セラはこれで四人に視線を向け終えた。そう、決して間違えではない。

「……おい! 俺には何にも言うことないのかよっ?」

 一人飛ばされ、最後に言葉を贈られると思っていたのだろう、ジュランが焦れながら問う。

「ない、かな?」

「んなっ! お前、セラ! それが命の恩人に対す――」

 セラは四人から軽快に離れる。そして悪戯っぽく、ジュランに微笑んだ。

「嘘っ。ありがとう、ジュラン!」

「……ったく。これだからガキはよ」

 ジュランのどこか嬉しそうな声を聴きながら。セラは鍵束の民と渡界人のもとへ向かった。


「挨拶は済んだみたいだね」とサパル。

「セラ、見ろ。俺、サパルさんから鍵貰った。セラは使えなかったんだって?」

 得意気に三本の鍵が付いた束をチラつかせるズィー。

「へぇ~、じゃあその鍵でスウィ・フォリクァまで行こうぜ。できるよな、『輝ける影』の弟子なんだからさ」

「おお、似てる、似てる」と感嘆を上げるサパル。

「エァンダの真似でひがむなよっ」

「はいはい、どうせわたしにはエァンダの真似くらいしかできませんよーだ。サパルさん、行こっ。ズィーは鍵の使い方の練習も兼ねて一人で来るみたいだから、後から。だいぶ後から」

「セラはほんと負けず嫌いだな……」

「別にぃー」

「はいはい。二人とも喧嘩はそこまでにして、本当に行くよ」

 サパルは二人を微笑ましく宥め、それから懐から厚手の紙片を取り出した。

「スウィ・フォリクァ周辺の『異空図』はルピから貰ってる。セラの言った通り僕の鍵を使って行こう」

『異空図』に視線を落とし、鍵束から一本の鍵を取り外すとサパルは中空に向けて回した。

 極光世界への扉が開かれた。

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