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碧き舞い花  作者: ユフォン・ホイコントロ  訳者:御島いる
第二章 賢者評議会
155/535

152:条件

 新鮮なエビと野菜が共演するサラダ、熱々の鉄板で歌う分厚いステーキ、美しく揺蕩う杯の酒、それらが織りなす舞台を観覧するようにきれいに並ぶ切り分けられたパンたち。

 セラは豪華な食事を前に怪訝な表情を浮かべる。

 手枷は外されたものの、格式ばった椅子はまるで拘束具のようで、身じろぎ一つ許されない緊張感が漂う。

 大きなテーブルの対面にはデラヴェス将軍。斜向かいにはサパルがいる。

 説明を求めようとサパルに視線を向けたが、彼は小首を傾げるだけ。仕方なく、デラヴェスに目を向けると向こうもセラのことを見ていた。そこには敵意はないように思える。

「食べたまえ、『碧き舞い花』」

「……!」

「外界調査の兵がお前を知っていたようでね。訊いたぞ、なかなか腕の立つ戦士だそうじゃないか。それに、死神と同じ渡界の民」

「それが、なに……?」

「そう身構えるな。食べてよいと言っている。毒など入っておらん……といったところで、お前には毒は意味がないのだろうがな」

 わずかに口角を上げるデラヴェス。猛禽類のような瞳もわずかに細くなる。

 軍事世界の情報網によるところだろう。魔導・闘技トーナメントでの戦いによってもたらされたセラについてのあらゆることを、デラヴェスはすでに認知しているようだった。毒についてはィル・ペクタァとの戦いからだ。

「ただ解放してくれるだけじゃなく、料理までご馳走してくれる?……用件は何?」

 サファイアで強く将軍を見返すセラ。

 つい先刻会ったばかりの者の情報を短時間で頭に入れるほどの切れ者だ。何か裏があると、セラはみた。

「そう睨むな。美しい顔が台無しだ」

 無駄な話をする気は彼女にはない。「用件は」

「手を貸せ」

 デラヴェスは重々と言うと、ビュソノータスに破界者が侵入した可能性があるということ。サパルとエァンダが破界者を倒そうとする者たちであること。今、エァンダが破界者を探しているということ。そして、見つかり次第セラにも共に戦ってほしいということを説明した。

 破界者についてのことなどとうに知っていたセラだったが、サパルとの関係を悟られないように知らないフリをして黙って聞く。そして返答する。

「手伝うのはわたしとしては構わないけど、条件がある」

「なんだ、言ってみろ」杯を軽く煽ってからデラヴェスが訊く。

「回帰軍……八羽教が敵じゃないってこと、この世界の人にしっかり宣言して。そして、この世界から出てって、二度と関わらないって約束して。知り合いから聞いたけど、あなたたちが嘘を吐いてこの世界を支配してるんでしょ」

「本末転倒だな。仮に出て行くとしたら、俺たちはこの世界を守る必要がなくなるぞ」

「そうだ」今まで黙っていたサパルが口を開く。「破壊者を仕留めるのにデラヴェス将軍をはじめとした『白輝の刃』の兵力は必要不可欠だ。僕もそれには賛成できない」

「それに今さら我々が偽りを広めたと知っても、この世界の住人は誰一人考えを改めないだろうさ」

「なんで! あなた今、この世界で一番力があるんでしょ!」

「民衆の力は、時としてたった一人の絶対者の力をも上回るものだ。そして、一度超えれば覆ることはない」

「この世界の人達が持つ八羽教への憎悪はそれだけ強いってことだよ。偽りが種だとしてもね」

 ここでサパルは弱めにデラヴェスを睨んだが彼は鼻で笑うだけだった。それから、サパルはまたセラに向き直る。

「相当なことが起きないと逆転はない。……もし、君が、その考えを改めてくれないというのなら、協力はしてもらわなくていい。戦いに巻き込まれないように早々にこの世界から立ち去ってくれ」

 サパルからの援護はなく、むしろ破界者討伐の邪魔者として追い出されようとしている。それはセラと彼が知り合いだということを隠すための演技ではなく、本気の言葉だった。

 しかし、セラとしてもビュソノータスを放っておけるわけがない。俯き、下唇を噛む。

「分かった……」

「ほう、ではよろしく頼――」

「別の条件がある」

 言い放ちながら顔を上げた彼女をデラヴェスは眉根を寄せて睨んでいた。

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