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碧き舞い花  作者: ユフォン・ホイコントロ  訳者:御島いる
第二章 賢者評議会
154/535

151:プライとの再会

「セラ……!?」

 憲兵に連れられてセラが訪れた小部屋には、すでにプライの姿があった。

 彼はセラのことを聞かされていなかったようで、驚きの表情を浮かべている。その女のように長い蒼白の髪や耳の上の羽根っ毛は毛羽立ち、着ている雲海織りの衣服もボロボロ、体の至る所に傷跡や痣が見て取れる。

「座れ」

 憲兵に促され、彼と机を挟んで座るセラ。「エリンが文句言ってたよ。バカ、アホ、大バカって」

「それは悪口だろ。誘拐していた割りに、それで済むのなら安いものだ」

「……」

 憲兵が監視している状況の今、プライは徹底して悪者を演じるつもりらしかった。

「わたしも誘拐したなんて言わないよね? わたしは回帰軍の意志を訊いて、一緒にいた」

「そうだな。うまく騙せてよかった」

「……。その怪我は? 戦いで?」

「話す必要があるか?」

「仲間を危機に晒すような選択はしない……これがプライさんの選択なんだね。ジュランもそうなんでしょ? 理由があって行方不明なんでしょ?」

「ジュランは、死んだ」

「……ぇ!?」

 プライの言葉に憲兵の一人が別の者に目くばせした。受け取った方は頷いて足早に部屋を出て行った。

「仲間を逃がすために戦って、プライが捕まって、ジュランは行方不明だって……」

「エリンからどう聞いたのかは知らないが、あのときの戦いでは俺たちも逃げることができた。俺が捕まったのは、ジュランが死んだあとだ。満足そうな顔だった。形はどうであれ、三部族が纏まったてな。今さら暢気に寝てるんじゃないか」

「嘘、だよね……」

「ふん……。おい、もう終わりにしてくれ」

 憲兵にそう言うと、プライは立ち上がって扉まで歩く。

「その異界人は関わりこそあれど、利用したに過ぎない。俺たちについて深いことは知らないから、放してやれ。ただでさえ残飯みたいな食事がこれ以上貧相になったんじゃ困るからな」

「……プライ、さん」

 セラの呟きは彼に届くことなく、扉は閉ざされた。


「デラヴェス将軍の許しがあるまでそこで辛抱していろ」

 牢に戻された彼女は、瞑想に耽った。

 プライから放たれた衝撃の事実への対応でもあり、エァンダから得た感知術を会得するためでもあった。

 呪具の手枷により集中できない状態ではあったが、むしろ違和感を退ける要領で集中することに意識を向けたことで、どこか今まで到達したことのない境地へと向かっていた。

 牢に寂しく灯された蝋燭の火の揺れ。

 城の中にいる憲兵たち。

 デラヴェス将軍とサパルは、セラが最初に連れて行かれた部屋で何やら話している。

 ここでセラはあることに気付いて集中を切った。そして、確かめるように蝋燭のみに感覚を向ける。

 揺れる火の音。超感覚故に聞こえるわずかな揺らぎの声。さらに感覚を研ぎ澄ませば、焚き火のような音へと変わる。

 息を吐き、再び目を伏せて瞑想に戻る。

 火は揺れている。

 しかし、音は――。

 聞こえない。

 そこに蝋燭があることは感じられるのだが、揺らめきの音はない。

 やっぱり。セラは心の中で呟いた。

 これが超感覚とは違う気読術かもしれないという考えが彼女の中に芽生えた。先程の瞑想でデラヴェスとサパルの話し声が聞こえないことで閃いたのだ。

 それでいて、この現象が気読術特有のものだとしたら、彼女は今までも知らずのうちに気読術を使っていたのだろうと思い当たる。今まで何度か遥か遠くに超感覚を向けたことがあったが、そのときは音を感じたことがなかったのだ。

感じるのは気配だけ。

これが超感覚が未熟であるということでなければ、気読術の習得はそう難しいものではないかもしれないと彼女は深く、集中の底を目指して潜ることにした。

その時、彼女の修行を邪魔するように憲兵が牢屋へ入ってきた。

「出ろ。デラヴェス将軍がお呼びだ」

 集中の底にあとわずかで手が届くところへの横やりに、彼女はその憲兵をキッと睨んだ。

「なんだ……!?」

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