表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
碧き舞い花  作者: ユフォン・ホイコントロ  訳者:御島いる
第二章 賢者評議会
148/535

145:潜むもの

 ズィーとセラが跳んだ先は市場から少し離れたところにある建物の陰だった。

「近いじゃん」セラが囁く。

「いいんだよ。様子を見るんだ」とズィーは返す。

 二人が先程までいた場所は陰から覗けば見える。ズィーが覗き込み、セラは音だけ。

「消えたぞ!」

「探せ探せ!」

「報奨金はここらの店で山分けだ!」

「憲兵団にも連絡だ!」

 バタバタと騒がしい。超感覚を使うまでもなく分かる。一体ビュソノータスに何があったの。

「君たち、関係者なの?」

「!?」

「なっ!?」

 不意に二人に声が掛かった。だが、辺りに人の姿はない。

 セラは強く感覚を研ぎ澄ませた。そして、自らの隣に、誰かがいることを知る。姿の見えない誰か。

「誰?」彼女は視線を向けて問いかける。

 すると「! へぇ、分かるんだ。……術式解放」と言って頭巾を被った黒装束の子どもが姿を現した。成熟前の体や声で、性別の判断ができない。

 その子の周りにはガラスの破片のようなきらめき。

 セラとズィーはその現象を目にしたことがあった。魔導・闘技トーナメント予選での出来事だ。

「やぁやぁ~」

 と明るく言うその子にセラが尋ねる。

「メィリア・クースス・レガスの子?」

「お、知ってんの? じゃあ、隠すこともないよね。うん、そうだよ。おれはエスレ。で、君たちは? 本当に八羽教の関係者なの?」

「わたしはセラフィ、こっちはズィプガル。八羽教が何なのか、わたしが訊きたい」

「じゃあ、違うってことか。あ~あ、関係者なら話し訊こうと思ったんだけど。ま、いいや、八羽教のことはおれが知ってること、教えてあげる。任務には関係ないし、話しても問題ないっしょ」

「任務ってのは。お前もアスロンみたいに協力者探してんのか?」ズィプが訊く。

「え! 二人ともアスロンの知り合い!!」

「ばかっ、声が――」

「おい! こっちから声がしたぞ!」

「探せ探せ!!」

 セラの超感覚にはビュソノータスの人々が自分たちに向かってくるのがはっきりと感じられた。

「また跳ぼう。今度はわたしが」

「待って!」セラが二人の手を掴んで跳ぼうとするとエスレが制した。「おれのせいだからさ」

「おい、もう来るぞ」

「大丈夫。術式展開、隠匿ハイド静音サイレント

 エスレがブツブツと唱えるとの頭の上に二枚の紋様ガラスが重なった。

「術式共用」

 最後にエスレが付け足すと、紋様ガラスがセラとズィーの頭の上にも表れて、それぞれ下にいる人間に向かって落ちていった。

 ガラスが足元まで落ちると、セラの目にはエスレもズィーも見えなくなった。超感覚を使ってやっとそこにいるのが分かる。

 これはマグリアの禁書の中でアスロンが使っていた身を隠す術だ。気を抜けばセラでも見失ってしまう。

「どこだどこだ!」

「探せ! 逃げたぞ!」

 追手が彼女たちの前を素通りしていく。まったく見えていないようだ。それに、彼らを避けるよにズィーが動いたようだったが、音もまったく聞こえない。

「ごめん、お互いを認識できるようにするの忘れてた」

 エスレの声がしたと思うと、感覚を研ぎ澄ますことなくエスレとズィーの存在を目視することができるようになった。

「行こう。おれがこの世界で寝泊まりしてる場所がある。話はそこに向かいながらしてあげるよ」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ