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赤の国の話  作者: 再遊
1/7

赤色に焦がれた女の話

この世界は7色の髪色で分かれている。


赤、青、緑、黄、紫、白、黒。


それは地上にいる神子様の数。


神様は7人の神子様を地上へ使わされている。


赤の髪の神子

青の髪の神子

緑の髪の神子

黄の髪の神子

紫の髪の神子

白の髪の神子

黒の髪の神子


人の中で訳隔てなく暮らすように、何度も転生を繰り返している。



私の生まれた国。

この国は赤の髪の神子に愛されている国。

何度この地から神元へ還られようとも、わが国へ舞い戻って来られる。

だから、この国は赤い髪が多い。

赤い髪は火の力が強い。

それゆえ、他国からは火の国と呼ばれることが多い。


私が生まれる前に前代の神子様は一度還られたそうだ。

還られた後に生まれた赤の髪を持つ子の中に次代の神子様がいらっしゃる。


赤色にも様々ある。私の髪は赤銅だから、鮮やかな赤に近いほど力が強いと云われるため神子様であることはないだろうと言われていた。それでも日の光で煌く赤銅の髪を私は気に入っていた。


赤い髪の子は国の定めに従って神殿に赴かなければならない。

神子様か否かの判定をするためだ。

そこに、真っ赤な薔薇よりも綺麗な髪を持つ同い年の従兄弟も一緒にいった。


従兄弟は、ほんの少し私より年上。

従兄弟は、父と叔父が口約束で決めている婚約者。


従兄弟は、神子様だった。



口約束であっても婚約者である従兄弟を私は好きだった。

私にない、綺麗な赤い髪。


父も叔父も神子様である従兄弟を他家へやるつもりはなく、口約束でも決定事項だった。


けれど、従兄弟は見つけてしまった。


成長し神子として前線に出ていた従兄弟を迎えた私の目に映ったのは月の光に照らされた白銀の髪が綺麗なお姫様。


お姫様は、鮮やかな赤色の多い王家に生まれた白。

お姫様は、白でありながらその実力で戦姫と呼ばれている。


お姫様は、従兄弟と結ばれた。


王家との繋がりに父も叔父も諸手を上げて祝福した。

盛大な結婚式だった。

綺麗だった。



従兄弟は、私を妹のように可愛がってくれた。


私が欲しいのはそんなものじゃない。


お姫様は、私を妹のように可愛がってくれた。


私が欲しいのはそんなものじゃない。


従兄弟は、私の兄のように優しくしてくれた。


私が欲しいのはそんなものじゃない。


お姫様は、私の姉のように優しくしてくれた。


私が欲しいのはそんなものじゃない。


私は、他家へ嫁いでいくことになった。


二人は祝福してくれた。




私がほしいのはそんなものじゃない。






私の結婚生活はそれなりだった。

夫に愛人ができても嫉妬に駆られることのない日々だけれど。

跡継ぎとなる子を産んだ私と夫が別れるという選択はしないだろう。

従兄弟には負けるけれど、鮮やかな赤の髪の子を寝かしつけるために子守唄を歌う。


従兄弟の訃報が届いた。

崖から落ちてしまったため、遺体もないらしい。


せっかく、お姫様に似た真っ白な髪の子も生まれたばかりなのに。


私は、悲しめなかった。



数年後、今度はお姫様の訃報が届いた。


従兄弟が死んでからも従兄弟との間に出来た子と仲良く暮らしていたのに。

病に侵されていたそうで、遺体は見せられる状態ではないらしい。


その日は従兄弟とお姫様の子の13の誕生日だったのに。


私は、悲しめなかった。



同じ日に従兄弟とお姫様の子の訃報が届いた。

お姫様の名代で隣国へ向かっていたはずが辺境の地で反乱に巻き込まれたそうだ。

辺境の地の館は全焼し、遺体は見つかっていないらしい。


その日は自分の誕生日だったのに。


私は、悲しめなかった。



そっと私の手にまだまだ小さな、それでも大きくなった手が重なる。

お姫様とその子の相次ぐ訃報に私が落ち込んでいると思ったのだろう。

私の子の赤い髪を撫でながら、私は少しだけ微笑んだ。


従兄弟の次の神子様はまだ見つかっていない。





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