始まり
――― ヒタ、ヒタ、ヒタ
学園内に響く足音が一つ。
――― ヒタ、ヒタ、ヒタ
まるで何かを探しているかのように数歩歩いては立ち止まり、そしてしばらくすると歩き出す。そのサイクルを延々と繰り返していた。
――― はぁ、はぁ、はぁ
そして、静かな学園内に響く女の吐息。
行かなくてはいけない。
それが私にできる唯一の償いなのだ。
きっと私が死ねば全てが丸く収まるのだ、美香や香夏子に迷惑はかけられない。あの二人は私とは無関係なのだ、私と同じ恐怖を味あわせるなんて事はできない。
だから、私は行かなければ・・・・・・。
――― ヒタ、ヒタ、ヒタ
足音が徐々に女の背後に迫る。
恐怖からか女の額には大量の脂汗が滲む。
女は片方の内履きが脱げた事など気にする素振りも見せず、振り返りもせず走り出す。一気に階段を駆け上り、重そうな鉄扉の前まで一気に走る、その向こう側は屋上だ。
――― ヒタ、ヒタ、ヒタ
足音は一定の間隔のまま、しかし、その足音は確実に女を追い込んでいた。
女はその重そうな鉄扉を開ける。チラチラと雪が待っている、そんな物に目もくれず女はスカートだという事も気にせずフェンスを乗り越える。
時間がない。
殺されるなら死んでしまおう。
それで全てが丸く収まるのなら。
――― ヒタ。
「ひっ!」
飛び降りる為に右足を出すのと同時に右手を誰かに掴まれた。
もう夜中の2時である、当直の先生だってもう寝ているはずだ、もちろん女以外に生徒が学園内にいるとも考えられない。
女は小さい悲鳴と共に自分の右手首を握る正体を確認するように視線を落とした。
そこには何もなかった。
右手首を握ってるであろう手も姿も何もなかった。しかし、女の右手首から違和感が取れる事はない、それどころか握ってる力が徐々に強くなり右手が紫色に変化している。
――― イカセナイヨ
――― キミハダイジナミチシルベナンダカラ
その日の朝、女の姿は屋上にはない。
もちろん飛び降りた形跡もない。
その日を境に女は学校へ来なくなった。
初めまして、IANGELPIEIです。
初の推理小説にチャレンジします。犯人はどこの誰なのかは最後まで読まないとわからないようにしてあります。更新もまめにやるようにするので、推理しながら自分なりに犯人を見つけ出してみてください。