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それでも、人として

ただいま

作者: マーク
掲載日:2026/04/27

肩をとんとんと叩く。


『ん?』


『少し、外に出てくる』


『…え?』


『心配は無用だ。ただ、やりたいことがある』


『いやいや、心配はしてないよ。ただ、一人で大丈夫?』


『…それを、人は心配と呼ぶんだ』


家からでて、森を歩く。


僕がやりたいことには、金がいる。


しかし、僕は今無一文だ。


稼ぐ方法などいくらでもあるが、僕にとって、それは価値がない。


だから。


僕は、効率の悪い方法を選ぶ。


じゃないと、意味がないから。


僕はまず、木を、切り倒した。


切り株に座り、それを削り、形を作る。


見えないけど、見えないだけだ。


しばらくして、小さな人形がいくつか出来た。


…どうだろう、これぐらいで十分だろうか。


それらを袋にいれて、僕は町に向かった。


彼女と来て以来だろうか。


一歩一歩、歩いて行く。


景色なんて概念、もうしばらく接していないが、なんとなく、それが浮かぶようだった。


町に着いた。


どこで売ろうか。


売買の権利は誰にでもあるようだから、適当なところで、広げよう。


そう思って、なんとなく歩いて、場所を決めた。


布を広げて、人形を置く。


後は、待つだけだ。


僕にとっては一瞬…


『兄ちゃん、これ、売り物かい』


『はい』


男が話しかけてきた。


早い。想像よりずっと。


『触ってもいいか』


『はい』


男はそれを手に取り、食い入るように見ていた。


『…これを、あんたが?』


『はい』


どれぐらいの値打ちが付くだろうか。


最低で考えても、おそらく足りるだろう。


『兄ちゃん、これ、いくらだ』


『あなたの意見を聞かせてもらえますか』


『…そうだな、ここまで精巧な作りの木偶は見たことがない。それに、どこか神秘的で、言いようもない雰囲気を醸し出している』


『金貨数枚は下らないだろう』


『…そうですか。なら、銀貨3枚です』


『兄ちゃん。俺は優しいからいいが、もしあくどい商人が聞いたら、言質を取ったと好き勝手しちまうぞ』


『大丈夫です。売る相手は選びます。あなたなら、僕が心配する必要はない』


『あなたはこれを、子供にプレゼントしようとしている。なら、これがいい』


直感で、人形のうちのひとつを選んで、差し出した。


『…なんでわかったんだ』


『そんなこと、どうでもいいでしょう。いま大事なのはそこじゃない』


『…そうだな。これをもらおう』


『毎度あり』



こんな風に、人形は売れていった。



金は十分集まった。


これからが肝要だ。


彼女が欲しいものがあればいいのだが。


そう思いながら、通りを歩く。


しばらくして、なんとなく、これだと思ったものがあった。


『すいません』


『はい!何かめぼしいものでもありましたか』


『これ、いくらですか』


『銀貨五枚です』


懐から銀貨を取り出して、差し出した。


『はい。確かに受け取りました。どうぞ』


『ありがとう』


何枚か残ってしまったな。


何かあったときのために、持っておこうか。


帰路に着く。


…帰路。


僕には見えないが、空は暗くなりはじめていたことだろう。


少し、遅くなってしまったな。


選ぶのに、時間がかかりすぎてしまった。


家が見えてきた。


すると、扉の前でキョロキョロと辺りを見渡している、彼女がいた。


何かあったんだろうか。


そう思っていると、彼女の視線が僕を捉えた。


僕が家に着くまで、ずっと僕を見ていた。


『おかえり』


『ただいま』


一緒に、家に入った。


『ねぇ、何しに言ってたのか聞いていい?』


『これ』


『…髪留め?』


『君に』


『…うそ。その、お金は?』


『受け取ってくれ』


『…ありがとう』


『今日は、君の誕生日だろう』


『え!なんで知ってるの?』


『わからない。いつの間にか知っていた』


『そっか。ねぇ、私も祝いたいから、誕生日がいつか、教えてくれる?』


『…どれを誕生と言えばいいのか、分からないな』


『…よくわかんないけど、誕生日、ないの?』


『そうかもしれない』


『わかった。じゃあ、今日ってことにしよう』


『…どうして』


『私が祝いたいから』


『そう。なら、それでいい』


『ほんと?』


『あぁ』


『わかった。じゃ、一緒に言おっか』


『誕生日、おめでとう』『おめでと!』

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