光譚:救世神使・創世神話 第一部 第四章 原初の魔法
Q. なんで第四章から??
A. ノリです。この本全体の内容はおおまかに決めてありますが、第四章から変わる可能性も全然ありますし、内容の修正もありえます。本編のストーリーではないので、そこは目を瞑っていただけると……幸いです……。
最期、世界は闇に呑まれた。
死出の旅路で川を見渡す無数の生命は、「光」を求めて祈りを捧げる。しかし太陽すらも沈黙した世は、生への渇きを嘆くことさえ許さない。
黄泉への渡り川はやがて溢れ、川辺の地表を泥滑に変貌させる。黒濁し、冷めきった土の上で彼らはただ祈ることしか叶わず、暗晦に沈みゆく意識に抵抗する余力もない。
それでも魔河津日神は、滅びの歌を歌いながら、使い捨ての玩具を弄ぶように生命を化野へ落とし続ける。
彼の神性について、後の知識人は、こう語る。
「あれはまさしく神の力である。なぜなら、その神性を実見し、生きて帰ったものは、『神使』以外に存在しないからだ……」と。
人類は自らの命の灯火が消えないように、心を抱擁しあう。だが、魔河津日神が呼吸をするまでもなく、その温もりは、なきものへと化してしまうのだ。
大地は刹那に静まりかえり、肩を支え合っていた生命の手には、冷たい枯る草が生い茂る。
やがて「光」は完全に失われ、世界の終焉はすぐそこまで迫ることになる。
しかしそのとき、天より一筋の光柱が差し込んだ。
黒雲の隙間から地に向かうのは、天衣無縫の三柱の神々。天から舞い降りた、覇王の如き光を放つ「覇光」が、御手を天に掲げると、神の門口に「光」を纏った扉が現れる。
神々は生命に威光を示し、お告げになった。
「『覇光の顕現』アマテラス」
「我が愛する人類よ――再び立ち上がり、彼の悪神を討ち滅ぼすのだ。異界へと繋がる扉は、其方たちの心に、果てなき『光』をもたらすだろう」
「『英雄の顕現』スサノオ」
「我が信じる人類よ――剣を手に取り、自らの力で未来を掴み取るのだ。異界へと繋がる扉は、停滞した運命に、無窮の『風』をもたらすだろう」
「『静寂の顕現』ツクヨミ」
「我が嘱望する人類よ――暗澹たる絶望を振り払い、光明を投じるのだ。異界へと繋がる扉は、暗黒の海に、新たなる静寂の夜『闇』をもたらすだろう」
国津に舞い降りた三貴の神に、人類は願った。
「我々に救世を! 闇を振り払えるほどの光輝を!」
全人類の思いが重なり、世界に希望の音が響くとともに、ついに扉が開く。
そこからは、果てしない「光」が降り注ぎ、一人の少年が舞い降りた。
人類と変わらぬ姿の黒髪の少年は剣を手に取り、魔河津日神へと切っ先を向ける。
神の寵愛を受けた彼は、人類を超越した力を振るった。
火を放ち、水を生み出し、大地を砕き、天を穿つ――神の如き力を行使する少年を、人々は「神使」と呼んだ。
彼の者の存在により、魔河津日神との戦いは好転し、人類は明日への期待を胸に、再び剣を掲げるのだった。
戦いは苛烈を極めた。
人類が抗う敵はたったの一柱――魔河津日神。
心に光を宿した人類は、無限にも等しい戦力で、三日三晩、絶えず攻撃を続けた。
神使を筆頭に、雄叫びを上げ、だれひとり臆することなく、命を懸けて――しかし……
ただの一度も攻撃を与えることなく、一人を除き、戦場は真紅の血色で染められることになった。
魔河津日神の力は、神の予知をも超越していたのだ。
人々は天津と国津に災いをもたらす存在を「邪神」と呼んだ。
三貴の神は言う。
「あの神は、高天原の罪を犯し、追放された存在である」と。
「それは、どのような罪か?」と神使は問うた。
神は答える。
「人類の運命に、過度に干渉した罪だ」
もう人の手には負えない存在に、人々の心は再び闇に覆われた。
化野の世には怨嗟が響き、国津は人類の叫喚と邪神の笑声で満たされた。
「我が貴様らに火種を蒔いたのだ。人の心を操り、戦争を起こさせた。世界に轟く断末魔――まったく、なんという愉悦だろうか……」
これが人類の、破滅へ向かう最期の旅路になるだろう――
三貴の光柱が消え失せようとしたとき、絶望の淵で神は言った。
「我々が人類に、さらなる救済をもたらそう」
神は両手を掲げる。
「我は其方らに、希望の『光』を操る術を授けよう」
「我は『風』を」「我は『闇』を」
すると、まだ息をしている人類の体が光り輝き、彼らは人間を超越した力――すなわち神の力の一部を行使できるようになった。
これこそ、人類が手にした原初の「魔法」である。
やがて人類は「神使」とともに、三度目の偉業に挑む。




