表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/21

21話

ロズ・ソーンは店内をゆっくりと見渡した。

並べられた品々を眺めるその視線は、値札を確かめるというより、どこか遠い場所を見つめているようだった。


「……不思議なお店ね」

ロズは懐かしい雰囲気を感じたような口調で呟いた。


棚の一角で、彼女の足が止まる。

そこにあったのは、茨の文様が刻まれた、時の止まった懐中時計だった。


「その懐中時計は昔からお店にあるんです。壊れているわけではないのに、なぜか動かなくて......」


ロズは一瞬だけ目を細め、微笑んだ。

「……ええ。知っているわ」


クロノ助が懐中時計に前足を伸ばし、「にゃあ」と鳴く。

まるで、それを選べと言うかのように。


「あなたも、これがいいと思うのね」

ロズは懐中時計を手に取り、胸元で静かに握った。


「この懐中時計でいいんですか?」


私の問いに、彼女は静かに頷く。


「ええ。この時計がいいの。これは“約束”のためのものだから」


少し間を置いて、彼女は続けた。


「長い間、待っている友人がいるのよ。その子と再会したときに……必要なの」


胸の奥が、わずかにざわついた。

けれど、理由を尋ねる前にロズは言葉を切る。


「……お代はいくら?」


私は首を振った。


「その品は、もともと動かないまま置かれていたものなので。お代は結構です」


ロズは少し驚いたように目を瞬かせ、それから、どこか懐かしそうに笑った。


「そう……やっぱり、この店は優しいのね」


彼女は懐中時計を外套の内側にしまい、扉へ向かう。


「また来るわ、ハル。」


ベルが鳴り、ロズ・ソーンの姿は店の外へ消えた。


足元で、クロノ助が小さく鳴く。

読んでいただきありがとうございます。

よろしければ、評価・ブックマーク・コメントなどよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ