第12話
私は、アクセサリーの制作キットをおばあさんにそっと差し出した。
それとは別に、デニム生地のポシェットを3つ棚から取り出した。
デニム生地のポシェットは丈夫で長持ちし、日常使いにも適している。
「こちらも使ってみてください。お揃いで使えますし、丈夫で使いやすいですよ。」
おばあさんは驚いたように目を瞬き、そしてゆっくりと微笑んだ。
その表情には、どこか懐かしさを感じさせる温かさがあった。
「……娘に、よう似ておるねぇ。あの子も、こんな優しい目をしておった。」
そう言って、おばあさんはローブの内側から一つの髪飾りを取り出した。
花を模した、古いが大切に扱われてきたとわかる品。
「これは……?」
「本当は、喧嘩別れをしてしまった娘に渡したかったものでね。
でも、おまえさんに預ければ、あの子もきっと喜ぶ気がしてのう。……お代の代わりじゃよ。」
胸の奥がじんわりと温かくなる。
その髪飾りには、おばあさんの長年の想いが詰まっていた。
「お孫さん、きっとプレゼントを喜んでくれますよ。」
私はそう言って、深く頭を下げた。
おばあさんは静かに頷き、ゆっくりと店を後にした。
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