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第10話
黒いローブをまとい、杖を突いた年老いた女性が、そろそろと入店してきた。
甘いお菓子の匂いが、ふわりと店内に広がる。
「お嬢さんは、この店の店主かね?」
「はい。私はハルと申します。ここではお客様の不要になった物を、必要な人につなぐお手伝いをしています。」
「そうかい……。ここに置かれている物たちは、きっと幸せ者だねぇ。」
「そうだといいですね――ところで、ご用件は何でしょうか?」
女性は、どこか懐かしむような優しい視線を向けてきた。
「わしは孫たちと暮らしておるんじゃが……あの子らに何かプレゼントをしてやりたくてね。」
その声には、喜ばせたいという思いと同じくらい、深い心配がにじんでいた。
「孫たちは、わしの大切な娘の形見なんじゃ。ある日、偶然わしの家にたどり着いたらしくてな。」
女性は、苦い記憶を噛みしめるように言葉を続けた。
「……わしが不在のうちに、勝手なことをしたやつがいたようでね。そのせいで、孫たちを危険な目に合わせてしまったのじゃ。」
震える手で杖を握りしめるその姿は、深い後悔と愛情を語っていた。




