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06 水と魔法

「はぁ、はぁ、気のせいかな…どんどん道が険しくなっていく気がするんだけど」


 僕は息があがって、汗をかいていた。

 木が生い茂っているので、涼しいはずなのだが歩いていると体内に熱がこもってくる。

 疲れてきているようだった。


「友樹には少しきつかったか。少し休むとするかの」


 町を目指して山を登り始めたものの、運動不足の僕は足が上がらなくなってきていた。

 ミーちゃんは元々猫だし、体力が有り余っているみたい。

 僕は、大きな切り株の上に腰を掛ける。


「せめて地図があればいいんだけどな。どこを歩いているのかも分からないし」


 スマホがあれば、どこでも好きな所へ行けた。

 今思えば便利な物だったよな。

 僕はあまり出かける機会はなかったけど。


 山に来たのなんていつぶりだろう。

 学校の高原学校以来だっけ。

 あの時は全然楽しくなかったな。


「友樹どうした?眉間にしわを寄せて」


「あー嫌な事思い出しちゃって。もう関係ない事なのにね」


 僕は頭を横に振り、思考を追い出す。

 今は学校は関係ない。

 自由にどこにでも行けるんだ。

 大好きなミーちゃんと一緒に。


「そういえば、喉乾かない?」


 汗かいたからか、無性に喉が渇いた。


「そうじゃの。川に行って水を汲みに行ってくるか」


「僕、水筒持ってないよ?」


「大丈夫じゃ。友樹は座って待っておれば良い。「『防御結界シールド』」」


 ミーちゃんが、僕の周りにドーム状の防御結界を張ってくれた。

 キラキラと光る壁が出来ている。


「この中にいれば魔物も攻撃できん。ワシは水を汲んでくるからの」


 ミーちゃんは素早くどこかへ行ってしまった。

 魔法で水を出せないのかな?

 そうすれば、川まで行かないですむのに。



 *** ミーシャ 視点(黒猫ミーちゃん)



 魔法で水を出せば楽なのじゃが。

 あまり体に良くないしの。

 魔法で水を出すと、水に魔力が入ってしまい中毒になる。

 魔力水の依存体質になるのじゃ。


 耳を澄ますと水のせせらぎが聞こえてくる。


「あっちじゃ」


 ワシは川の方へと向かって走る。

 数百メートル行くと川にたどり着いた。

 川の水は澄んでいて、魚も泳いでいる。

 ついでに捕っておこうかの。

 今晩の夕飯に。


 アイテムボックスから水筒を取り出し、水をくむ。

 異空間のアイテムボックスには友樹のパジャマも入っておる。

 というか、友樹の部屋にあった物をすべて入れたので、必要なものは全て揃っているはずじゃ。


「早めに戻るかの」


 友樹の周りに、複数の人間の気配を感じた。

 ワシが張った結界はセンサーもかねている。

 友樹は大丈夫だと思うのじゃが、一応念のためじゃ。


 ワシは、魚を取る事を諦めて直ぐに戻ることにした。




 *** 日下部 友樹 視点



 目の前に大人の男たちが通った。

 雰囲気が荒っぽい感じの人たち。

 山賊なのだろうか?

 怖くなって、固まってしまう。


「よう、お兄ちゃん。こんな所で何してんの?」


 静かに座っていたのだが、気づかれてしまった。


「どうした。誰か居たのか」


「あれ?これ魔法のバリヤーだな。かなり厳重な」


 コンコンと、三人の男たちが壁を叩く。


「魔法使いじゃないと、解けないな。これ。ほっといて先行くぞ」


 どうやら僕に手出しできないと思ったらしく、諦めてくれたらしい。

 男たちが去って行った。

 生きた心地がしなかったよ。


「早く戻ってこないかな。ミーちゃん」


 望んだ影が遠くから見えた。


「友樹、大丈夫じゃったか?」


「ミーちゃん。怖かったよう」


 情けなくも僕は涙目になってしまった。

 だって、厳つい大人たちが怖かったんだもん。


「すまんかったの。ほれ水じゃ」


 手渡された青い水筒は、僕の持っていた水筒だった。

 何でここに?と驚いたが気にしたらきりがない。


 ゴクゴクと水を喉に流し込む。

 体が冷えて生き返るようだ。

 ミーちゃんにも水をあげないと。


「ミーちゃんも飲んで」


 何故か、照れくさそうに受け取るミーちゃん。


「す、すまないの」


 水筒は口で直接飲めるタイプ。


「あっ」


 気が付いてしまった。

 もしかして間接キスではないだろうか。


 僕は顔が熱くなった。

 でも、気にしてたら水飲めないよね。


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