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05 昔の出来事

 *** ミーシャ 視点(黒猫ミーちゃん)


 雨の降っていたあの日。

 子猫のワシは段ボール箱の中で鳴いていた。


「ミィー、ミィー」


 高い鳴き声を聞いて、立ち止まり見る人はいるものの誰も助けてはくれない。

 捨て猫なので運命なのだろう。

 野良猫になり、自立して生きるしかない。

 何とか生きるすべを見つけなければ。


「黒猫かー」


 傘を差す黒いランドセルを背負った幼い少年が立ち止まった。

 物珍しさで立ち止まったのだろう。


「よいしょっと」


 段ボール箱が持ち上がる。


「家来る?」


 優しい瞳と目が合った。

 それが、友樹との最初の出会い。



 *** 日下部 友樹 視点



「友樹は、ワシに毎日愛の告白をしていたじゃろう?ワシはすっかりメロメロになってしまっての」


 愛の告白??

 そういえば、好きってよくミーちゃんに言ってたっけ。

 今になって思えば解る。

 抱きしめたり好きって言ったり。

 僕、かなり誤解されることをしていたような気が…。


 好きというのは嘘では無いけど。

 いやだって、猫だし。

 人間相手じゃないよ?


「両想いになれたのは嬉しいのじゃ」


 頬を染めてうっとりとするミーちゃん。

 両想い??

 何だか凄く誤解されていない?


「み、ミーちゃん?」


「何じゃ友樹」


 こてんと首を傾げるミーちゃんが愛おしく感じる。

 あ、あれ?

 おかしいな。

 キラキラと彼女が輝いて見える。


 今は、そんな事を考えている場合じゃない。


「と、とにかく、今から村を出よう」


「そうじゃな」


 こちらに非は無いが、村長の息子を敵に回したのだ。

 村を出ないと何をされるか分からない。

 僕たちは出発する準備をすることにした。





「待ってくれ!」


 村の門を出ようとしたところで、後ろから中年男性が追いかけてきた。


「村長?」


 灰色の髪は禿げていて、昔は美形だったのだろう。

 息子とよく似ている。

 彼は、慌てて走ってきたのか息を切らしていた。


「…息子の事は…どうか内緒でお願いしたい」


 僕の右手に強引に革袋を持たされた。

 ずっしりと重い。

 口止め料だろうか。


「こんなの貰っても困ります」


「どうか…どうか…」


 懇願こんがんする村長。

 悪い噂が立ってほしくないのだろう。


「貰っておけ。必要なものじゃし」


 その事を、言いふらすつもりはないから要らないのだけど。

 まあ、そういう事ならば。


「分かりました」


 僕は村長から金貨の入った革袋を受け取った。

 これで町の宿で泊まることができるだろう。

 当面の資金を手に入れた僕たちは、町を目指すことにした。




「♪~♪」


 上機嫌でミーちゃんは鼻歌を歌っている。

 僕たちは腕を組んで、恋人同士のようだ。


「友樹と一緒に歩けるなんて夢のようじゃ」


「うん。僕もみーちゃんと話せる日が来るなんて思わなかったよ」


 石がゴロゴロした街道を歩く。

 馬車が通る道は、綺麗になっているようだった。

 僕も、ウキウキとした気分で心が軽い。


「そういえば、町ってどこにあるか分かるの?」


 今度は村じゃなくて、町に行きたい。

 町ならば宿屋があると思うから。


「ワシの持っている、千里眼というスキルで遠くが見通せるので大丈夫じゃ」


 彼女は、指で山の方を指ししめした。


「へえー便利な能力だね。山の方に町があるの?」


「町かどうかは分からんが、集落のようじゃからな」


 山の方に町があっても、別におかしくはないのだけど。


 僕は危険がある事をすっかり忘れていた。

 異世界は魔物以外でも危険がいっぱいなのだ。

 ミーちゃんに手を借りながら、橋のない小さい川を渡り、森の中を進む。


 今まで、魔物に会わずにすんでいたから、すっかり油断をしていたのかもしれない。


ここまで読んで頂き有難うございます。


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