39 喧嘩 2
*** 木崎 かなめ 視点
「ごめんなさい。なのじゃ」
「わっ!びっくりした…突然現れないでよ」
目の前に突然、ミーシャが現れた。
自室でのんびり雑誌を開いて寛いでいたところだ。
パックをしている顔が引きつる。
「まあ、私も少し強引かなとは思ったけどさ。ちょっとびっくりしたわよね。日下部くんに怒られた?」
「ワシ…しばらく家に帰る事にする。謝った。友樹に言っておいてくれなのじゃ」
「わーったわよ。言っとくから。もう二度としなければ良いわ。許すのは今回だけだからね」
「ありがとうなのじゃ。すまない」
「ばいばいー。もう突然来ないでね?びっくりするから」
ミーシャはふっと姿を消した。
「心臓に悪いわね…ここ二階よ?玄関から入って来なさいっていうの。神様って、みんな、ああいう性格なのかしら」
日下部くんから、帰り際…異世界の話や魔法の事を聞いた。
俄かには信じられなかったけどそういう事なのだろう。
「え?ミーシャとは別れたの?」
「いや、しばらく帰って来るなって言った」
翌日、教室で日下部くんに昨夜の事を伝えた。
私にミーシャが謝ってきたことを。
「謝りに行ったのか…ありがとう。知らせてくれて」
彼は幾分落ち込んでいる様に見えた。
「元気ないじゃないの。戻ってくるんでしょ?」
彼とは両想いになりたいが、元気のない姿を見たいわけではない。
彼女のいない間に手を出すのはフェアじゃないわ。
ちらちらと私を見る視線。
中野くんだ。
「なあに?私に用がある?」
「えっと…その…なんというか…」
歯切れが悪い。
「日下部、何かあったのか?」
「ああ…彼女さんと喧嘩したらしいわ」
「そう…なのか」
ああ、中野くんは日下部くんを心配しているのね。
最近友達になったのかしら?
「仲直りしたらいいよな」
「そうね…張り合いがなくなるわ」
「張り合い…?」
「ううん。こっちの話よ」
日下部の彼女は、遠目からだとよく見えなかったが、かなりの美人だという事が分かった。
黒く長い髪の美女。
20代前半くらいだろうか。
「すまん!日下部。おれは誤解していた!」
突然中野くんが、日下部くんに謝っている。
「なにが…一体…」
日下部くんは、ぼーっとしていて精細さが感じられない。
「ほら、そのうち戻ってくるわよ。元気出して!」
敵に塩を送るようで好きじゃないけど、今の日下部くんは好きじゃない。
授業中も、ぼーっとしていてとてもじゃないけど見ていられなかった。
*** 創造神ゼビウス 視点
「おい、どうしたのだ」
天界にミーシャが急に戻ってきた。
しばらく帰らないと言っていたではないか。
「別に…なんでもない」
「何でもなくあるか…友樹とやらと痴話げんかでもしたのか?」
「ワシが全面的に悪いのじゃ。しばらく離れようって言われて…確かにあの時のワシはどうかしていた。普段だったらあり得ない事をしてしまっていたのじゃ」
ミーシャはソファでふんぞり返っている。
些細な事で喧嘩したのだろうが…こんな事では人間とやっていけないぞ。




