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02 年上のお姉さん

『友樹、友樹』


 僕の顔を、ちょんちょんと柔らかいものが触っている。

 ミーちゃん?

 金色の瞳が僕を心配そうに見ていた。


「あれ?外?」


 家のベッドに寝ていた居たはずなのに、何故か地面に寝転がっていた。

 地面はひんやりしていたが、草がクッションになっているのか柔らかかった。


「くしゅん!」


 寒っ、今パジャマを着ているんだっけ。

 この格好じゃ風邪引いちゃうな。


『一応、家から洋服を持ってきた。着替えたらどうかの?』


 黒猫のミーちゃんが、何処から出したのか服と靴を差し出した。


「え?」


 疑問に思ったが、僕は起き上がり服に着替えることにする。

 着ていたパジャマを脱ぎ捨てて、慌てて洋服を着こむ。


 脱いだパジャマは、ミーちゃんが何処かへ仕舞っていた。

 何もない所に穴が開いて、そこに仕舞いこむように見えたけど。

 何だあれ?


「あ…ありがとう?ところでミーちゃんって喋れたんだね」


 一番気になっていた事を訊いてみた。


『これはテレパシーで直接話しかけているのじゃ。この体では上手く言葉が喋れないのでな』


 テレパシー?

 そういえば頭に直接聞こえてくるような…。



 ガサガサ・・・。


 草むらから、可愛らしい白いウサギが顔を覗かせた。

 あれ?でもウサギにしては何か変だな。

 角みたいなのが頭のてっぺんから生えている。

 違う生き物なのかな?


「『魔法障壁バリヤー』」


 バシン!

 ウサギが僕に飛び掛かってきたが、見えない壁に弾き飛ばされていた。


『友樹、ここは魔物がいる異世界じゃ。戦えなくても逃げないと死ぬぞ?』


 赤い目の角ウサギは、獰猛な魔物のようだった。

 可愛いと思っていたけど、危険らしい。


「魔物?異世界??」


 僕、異世界へ来てしまったの?


『今ワシが壁を作ったから良い様なものの。魔物に当たれば怪我をするぞ。しかし、この小さい体では少し不便じゃの。

「『変化魔法メタモ』」


 ミーちゃんが呪文を唱えると、周りが霧状の光に包まれる。


 いつの間にか黒猫は姿を消しており、代わりに長い黒髪の黒いワンピースを着た二十歳くらいの女性が立っていた。

 金色の瞳が不敵に笑っている。


 女性は白い右手をあげて優雅に振り下ろす。


「『土の槍(アーススピア)』」


 ドドドーーーーッ!


 土の槍が、一斉に角ウサギに向かって襲い掛かる。

 角ウサギに、数本の土の槍が刺さり倒れ伏した。


「え?もしかしてミーちゃん?」


「決まっておろう?他に誰がいるというのだ」


「「えええええ?」」


 だって、猫のミーちゃんが人間になったなんてあり得ないじゃない?


「そんなに驚く事か?友樹?」


「あれ…腰抜かした…」


「呆れたわ…軟弱じゃのう。前々から分かっておった事じゃが…。少し精神を鍛えたほうが良さそうじゃの」


 年上のお姉さん(ミーちゃん)は、しゃがみ込んで僕の頭を撫でていた。





「友樹は可愛いのう」


 僕はミーちゃんに背負われていた。

 腰を抜かしてしまったので歩けなくなってしまったから。


「せっかくの異世界じゃし、何処か泊まれるところを探さないとじゃの。定番は町の宿屋だと思うのじゃが」


 そういえば思い出した。

 ミーちゃんは僕と一緒にアニメ見てたっけ。

 最近は異世界物ばっかりだったからな。

 道理で異世界に詳しいわけだ。


「ミーちゃん。この世界のお金持ってないでしょ?泊まるのは無理なんじゃ…」


「それもそうかの。では泊めてくれる家を探してみるかの」


「それと、さっきの魔法だよね?回復魔法とかって使えないの?」


「ワシは回復系はてっきりなんじゃ。腰は放っておけばそのうち治るじゃろうて」


「えええ…」


 女性に背負われているのが少し恥ずかしい。

 でもこの人ミーちゃんなんだよね。

 何だか不思議な気持ちだ。


「なんじゃ、友樹ワシに惚れたか?」


「な、何言ってんの」


「冗談じゃよ。ワハハ」


 いくら大好きな猫だからって、惚れるなんてありえないよ。


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― 新着の感想 ―
ミーちゃんが黒髪美人に変身し、友樹くんを助けるところが良かったですね。 ちなみにその姿って猫耳にしっぽはある状態ですか?
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