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18 最強の彼女

「ワシらの事が覗かれているようじゃの…良い気はせんわ」


 ミーシャがぽつりと呟いた。


「えっ?そうなの?」


「魔法で見る方法があるのじゃろうな。どんな方法かは知らんが、見られているのがわかる」


「ミーシャって何気に凄いよね。ところで、この後どうする?」


 僕は両手を組み顎を載せる。

 彼女と一緒だと不思議と不安にならない。

 それよりも今を楽しみたい。


「デートじゃと、定番は映画なのじゃろうが…異世界で、映画は流石に無いじゃろう」


 時々思うんだけど、ミーシャって猫だよね?

 何でそんな事知っているんだろう。

 そういえば、家で一緒にテレビ見てたっけ。


「食べ歩きしようか?露店も沢山出ているみたいだし」


「本当に今日の友樹は積極的じゃの。びっくりするくらいに」


「だって楽しまないと損じゃない!」


 僕は、ケーキを食べ終わった彼女を連れ出した。

 驚いた顔の彼女も可愛くて、思わず抱きしめたくなる。





「今日は遊び尽くしたの…へとへとじゃわい」


「僕が連れまわしたからね。ごめんね」


「こっちに来て、元気になった友樹が見れて嬉しいわ」


 彼女はニコッと笑う。

 噴水の前のベンチで座り、水面を眺めながら思い出話に花を咲かせていた。


「のんびり寝転んでいたのが夢のようじゃ」


「いつも部屋で丸まって寝てたもんね」


「あの頃に戻りたいかの?」


 ほんの数日前の出来事だったのだけど、遠い昔に思える。


「ううん。今の方が幸せ…ねえ、キスしていい?」


 僕はいつもより大胆になっているみたいだ。


「え?ここで?人目もあるじゃろうに」


 俯いてもじもじしている彼女。

 本当に人間みたい。


 目を閉じる彼女にそっと唇を重ねた。

 しっとりとした感触。


 パンッ!


 僕は、何かに弾き飛ばされた。


「痛っ!いったい何が…」


「驚いた…ワシの変身が解けてしまったようじゃ」


 彼女の髪色は黒から銀色に変わっていた。

 大きな金色の瞳は見開かれている。


「ミーちゃん?髪の色が…」


「ああ、すまんの。友樹には理由をきちんと説明せねばならんな。場所を移動するとしようか」


「『空間転移』」




 次の瞬間、真っ白い空間にいた。

 異世界に来る前にいた空間だ。


「あの場所だとワシらが話している内容がすべて筒抜けでな。今、簡易的に移動した。…ワシは猫じゃったが、そもそも地球には遊びに来ていてな。

 友樹が苦しんでおるのを見て、いてもたってもいられなくなって一緒に異世界へ転移したのじゃが…」


「何となくそんな気はしてた。多分ミーちゃんの力だって事」


 確信したのは、僕が新たに力を得た時だ。

 ミーちゃんは祈っている風に見せかけていたけれど、いくら何でも早すぎる。

 神様に頼んで力を貰うって言ってから、ほとんど時間が経っていなかったからね。


「女神様なんでしょ?ミーシャって」


「なんじゃ。分かっておったのか。恥ずかしいの」


 あれ?

 そうすると僕って、黒猫のミーちゃんに恋をしていると思ってたけど…。


「まさか女神様を好きになっていたなんて…こんな僕でいいのかな」


「ワシは最初から友樹が大好きじゃった。良いも悪いもないじゃろう」


 僕は彼女を抱きしめる。

 温かい体は人間と全く同じ。

 応えるように彼女の腕が僕を抱きしめ返す。


「今から、女神様って呼んだほうが良い?」


「いや、ミーシャでお願いする」






 次の瞬間、前にいた場所に移動していた。

 噴水の水音が聞こえている。


「今の、無詠唱魔法?」


「ワシの場合、言葉は特に必要無くてな。思っただけで魔法は使えるのじゃ。何か言わないと、急でびっくりするじゃろう?因みに時間はほぼ経過しておらんよ。不審に思われるからの」


 ミーシャの綺麗な銀髪は漆黒の髪に戻っていた。

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