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17 彼女の正体

 王城を出た後、彼女に耳元で囁かれた。


「友樹、先程から後をつけられておるの」


 初めての街、二人きりでデートをするつもりだった。


「せっかくの王都じゃ。観光しようと思っていたがどうする?」


「僕たちをつけているのは、王城の人かな?」


「おそらくな」


「放っておいて良いんじゃない?危害を加えないようなら」


「そんな吞気な…」


「ミーちゃん。あそこのお店入ってみようよ!」


 僕はミーちゃんの手を取り、お洒落な喫茶店に入った。

 空いている窓際のボックス席に座る。


「友樹、今日はずいぶんと積極的じゃのう」


「そう?せっかくなら楽しみたいじゃない。貰ったお金もある事だし」


 後ろをチラチラ見ている彼女は、あとをつけている人が気になって仕方がないみたいだ。

 僕は、今更だけど分かった事がある。


「ミーちゃん。今から君の事、ミーシャって呼んでも良い?」


「はうっ?」


 彼女の頬が赤くなった。

 表情の変化が面白い。

 彼女は、ますます可愛くなっていく。


「と、突然じゃな。驚いたわ」


 ミーシャの、細かい仕草一つ一つが愛おしい。

 もう、僕は我慢できなくなっていた。


「ミーシャ大好き。愛してる」


「え?と、友樹??」


 ミーシャが猫でも何でも構わない。

 一緒に居てくれるだけで良い。


 やっと僕は自分の気持ちに素直になれた。



     



「赤いベリーのケーキ二つ、ミルクティー二つをお持ち致しました。ご注文の品は以上ですか?」


 テーブルの上には、赤い果実の載ったケーキとミルクティー二つ。

 異世界でもケーキってあるんだな。

 フォークで、ケーキを刺して口に運ぶ。

 んー甘酸っぱい。


「と、友樹」


「なあに?」


「えっと、その何じゃ…ワシ、猫なんじゃが良いのか?」


「うん。構わないよ」


 僕の心に動揺は全くなかった。




 *** 聖女キッテイ 視点




「あ…甘いわ…」


 私は城の自室にいて、椅子に腰かけている。

 水晶でミーシャの様子を映し出していた。

 一緒にいるトモキが、突然愛の告白をして身もだえてしまう。


「覗くみたいで、罪悪感が半端ないけど」


 いくら勇者タツヤに頼まれたとはいえ良い気がしない。

 一体彼は何がしたいのかしら?


 トモキはウットリとした顔をして、ミーシャを見つめている。

 ミーシャはもじもじして…じれったいわね。


「何か弱点は見つかったか?」


 覗きを依頼された、タツヤから話しかけられる。

 あーそういう事ね。

 弱点を見つけて彼女を脅して仲間に入れると。

 私、そういうの好きじゃないんだけどなあ。


「彼女の弱点ねー。恋人のトモキくらいなんじゃないの?」


「やっぱそうだよなー」


「分かっているんなら、わざわざ覗かせるような事しないでよ」


「それは…その、確認したかっただけだ」


「確認?」


「オレもミーシャが好きだったから」


 どうやら、彼らはあまり恋人っぽくなかったらしい。

 今見ている限りだと、そんな事は無いみたいだけど。

 それは置いておいて、私以外の人もいるみたいなのよね。


 王城の密偵みたいなものかしら?

 彼らをつけている人が数名いる。

 とっくにバレているみたいだけど。


「あ、あら?今、猫って聞こえなかった?猫って何かしら…獣人って事?」


 考え事をしていたら、聞き逃してしまったわ。


「猫?もしかして彼女は猫なのか?」


 タツヤが、腕を組んで考え込んでいる。


「そうか…だから態度がハッキリしなかったのか。ようやく分かったよ。彼がミーちゃんと呼んでいた理由も」


「ちょっと、私に解るように説明しなさいよ」


「ああ、分かったよ。実はな…「ミーちゃん」は猫の一般的な名前だ。他にはミケやクロとかチャトランもあったかな」


 今のところ彼の推測でしかないが、ミーシャは友樹のペットの猫じゃないかという事。

 猫は、普通喋らないわよね?

 獣人ならまだ分かるのだけど。


 っていうか、猫が魔法を使ったというの?

 それこそ信じられないのだけど!

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