14 王城のお風呂 1
ギイイイイ・・・。
城の城門が開く。
馬車で三日かけて、王都のフレンディ城へたどり着いた。
近衛兵に頼んで、第一騎士団のドラゴさんを呼んでもらう。
勇者を、引き渡すためだ。
「大変だったね…」
初めての馬車移動がとても疲れた。
馬の独特のにおいと馬車の揺れ。
電車や車が懐かしい。
しばらく待っていると、ドラゴさんが現れた。
今日は鎧を見に付けていない。
青い騎士の制服を身に着けていた。
「早くに見つけてもらい助かりました。魔力探知が上手くいかなかったもので…トモキ様、城の部屋でしばらくお待ちください」
「お前ら、ドラゴと知り合いだったのかよ」
タツヤが吐き捨てるように言う。
「観念してください。勇者様」
「分かったよ。大人しくするわ」
「バインドを解除…と「『魔法解除』」
魔法の縄が一瞬で解かれた。
タツヤが手を握ったり開いたりしている。
「勇者のオレが全く手も足も出なかったぜ。アンタ一体何者だ」
「ただの魔法使いじゃよ」
「ふうん…」
僕とミーちゃんは城の一室に通された。
床には豪勢な絨毯が敷かれ、室内の壁には絵画が飾られていた。
天井には豪華なシャンデリアがぶら下がっている。
僕たちは置かれている椅子に座った。
しばらく待たされた後、ドラゴさんが部屋に訪れた。
「お待たせしました。少ないですが、今回のお礼です」
ドラゴさんが革袋をテーブルの上に置いた。
袋の中身は金貨のようだ。
「あの…一つ、いいじゃろうか」
「何でしょう?」
「ワシら長旅で疲れておってな。是非湯あみをしたいのじゃが」
流れるように、ミーちゃんがお風呂を要求した。
頼むのが上手いな。
「そうですね。では少し待っていただけますか?用意をさせますので」
パタン。
ドラゴさんが部屋を出た後、僕たちはハイタッチした。
*** 勇者 南 竜也 視点
「ミーシャ…あいつ何者だ?」
「女神さまがどうしたの?」
聖女キッテイが尋ねてきた。
明るい金髪、緑色の瞳の彼女はこの世界の人間だ。
「女神の方じゃない。オレを捕まえた女だ。」
「タツヤを捕まえたの?凄いじゃないその人。仲間に入れたほうが良いんじゃないの?」
「お前が見たら、嫉妬するくらい美人だぜ」
「おおげさねえ」
「黒髪の美少女だ」
「同郷の異世界人なんじゃないの?」
オレとした事が、抜けていた。
「そうだよな。日本人…でも瞳は金色なんだよな」
金色の瞳は日本人じゃない。
ハーフという可能性もあるが。
一緒に居る、トモヤは間違いなく日本人だろう。
「そういえば、全く聞かなかったな。しばらく一緒にいたのに」
オレの事を話したのだから、訊いても良かった。
訊いたら素直に話してくれていただろうしな。
「まだ、城内にいるかな」
不思議な人だ。
美人だが、だいぶ年上のような。
トモキは年相応のようだが。
*** 日下部 友樹 視点
「え?混浴ですか」
「君たちはカップルなのだろう?一緒に入っても構わないのではないか?」
ここにきてそうきたか。
元々こちらが頼み込んだのだ。
別々にしたいと言うと変に思われるだろう。
「そうですね」
「……」
「ではごゆっくり」
観念するしかなさそうだ。
変な事をするわけじゃない。
一緒にお風呂に入るだけ。
腰をタオルで隠せばいいか。
ミーちゃんは隠さないだろうけど。
浴室は思っていたよりも広かった。
従業員用らしく、大勢で入るためらしいのだが。
流石に、男女は時間でわけているらしいけど。
「ちょっとした銭湯だね」
大理石の床が豪華だ。
流石お城だな。
「ちょ、トモキ後ろ向いておれ」
え?
ミーちゃんが恥ずかしがっている。
一体どうしたんだ?
この前は、さんざん見ろって言っていたのに。
「急に体を見られると思ったら…恥ずかしい…のじゃ。ワシ変じゃの」
湯船につかって体を隠す彼女。
めっちゃ可愛いんですけど。
「どうしたの」
今までが変だったんだ。
これが普通の反応。
「わからん…こんな気持ち初めてじゃ…」
「僕、早めに出るからミーちゃんはゆっくりつかりなよ」
「そうか…わかった」
お湯につかり、顔を赤くした彼女は愛らしくとても新鮮に見えた。