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13 勇者捕まる

 トイレに行ってから、僕は部屋で体を拭き始めた。

 ミーちゃんは自由に僕の体を眺めている。

 見られるのは恥ずかしいけど、今更だ。


 男の体を見て何が楽しいのだろうか?


「立派になって嬉しいものじゃよ?ワシが友樹に抱かれると想像すると…」


 あ、妄想しているみたい。

 僕が断っているから妄想するしかないんだろうけど。

 うん。

 ニタニタして、残念な顔になってるな。


「ちょっと体を触っても良いか?」


「ダメ」


「何じゃケチじゃのう」


 どさくさに紛れて変な事をされても困るからね。

 いかにもやりそうだし。


「それより、温泉とかないのかな。山とかって温泉あるよね?」


「どうじゃろう。もしかしたら、秘境とかにいけばあるかもしれんが」


 魔法のある世界なのだから、お風呂を沸かすなんて造作もないと思うのだけど。

 そういう習慣がないのだろうか。


「王城なら湯あみが出来るとは思うがの」


「湯あみって?」


「お風呂に入る事じゃよ」


 貴族や王族ならお風呂を持っているという事かな?

 って、一般人が入れるわけないじゃん。


「勇者を捕らえた褒美として、お風呂を要求するのはどうじゃ?」


「え…」


 捕らえるって罪人じゃないんだし。

 っていうかどうやって捕まえるんだよ。

 顔とか知らないのに。






「ミーちゃん本当に勇者がここで捕まえられるの?」


 翌日。

 僕たちは冒険者ギルドの前に来ていた。

 ミーちゃんいわく、昨日も勇者はいたらしい。


「何でいるのが分かったの」


「相手は変装しておるじゃろ?もちろん黒髪なわけがない。昨日、そういった変わった奴がいたのでな。あえて理由は聞かなかったがの」


「おお、ミーシャじゃねえか。もしかしてオレを待っていたのか?」


 昨日やたらとしつこかった男。

 確かリュウと言ったっけ。

 朝から顔を見たくなかったな。


「『拘束魔法バインド』」


「えっ?」


「「いきなりなにしやがるっ!」」


 ミーちゃんはリュウを魔法の縄で縛り付けた。

 両手両足が縛られている。

 え?一体何やってんの??


「お前、召喚された勇者じゃろ?」


「……そんな訳ないだろう」


「友樹、見ての通りじゃ。今は魔法で変装しておるが、こやつが勇者じゃ」


「「ええええ?」」


 本当に?

 リュウは苦虫を嚙み潰したような顔をしている。


「今から馬車を拾う。このまま王城へ向かうとしようぞ」


「ちっ!逃げられると思ったのに…」


 観念したのかリュウは変装を解いた。

 茶色い髪は真っ黒になり、高かった背丈も僕と同じくらいになる。

 顎髭も無くなり、つるつるな綺麗な肌に。

 歳も中年から青年になった。


「魔法でここまで変わるんだ。凄いな」


「な?すげえだろ」


 口調は相変わらずのようだけど。


「オレ、まんまとミーシャに騙されたな。ハニートラップか」


「大げさじゃのう」





 僕たちは馬車に乗り込んだ。

 この世界では馬車はタクシーの様な物らしい。


「友樹、これで王城で湯あみが出来るじゃろ?」


「ミーちゃん、もしかしてこの為に?」


 まさか、お風呂の為に捕まったなんて思わないだろう。

 リュウは首を傾げていた。


「リュウいやタツヤさんは、何で王城から逃げ出したのですか?」


 僕は、疑問に思っていたことを訊いてみた。


「名前まで知ってたのかよ。しくじったな…自由になりたかったそれだけだ」


 城では不自由だったという事だろうか。


「別に城で不自由していたわけじゃない。むしろかなり優遇されていたと思うぜ。だが、以前のオレはな、病気で寝たきりだったんだ。召喚されて体が健康体になった。出かけたいと思うのは自然な事だろう?」


 人にはそれぞれ事情がある。


「そうだったんですね」


「それは…難儀じゃったのう」


 僕たちは異世界で自由だけど、召喚されたタツヤさんは勇者という見えない鎖で縛られているのかもしれない。

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