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11 まとわりつく男

「良い名前じゃねえか。ミーシャ!オレ、リュウってんだ」


 男は凝りもせずにミーちゃんに話しかける。

 あまり近づいてほしくないな。


 パシン!


 リュウが彼女の肩を掴もうとしたので、僕は彼の手を振り払った。


「初対面なのに、お前…馴れ馴れしくないか?」


「痛って…子供は引っ込んでな」


 ドン!


 僕はリュウに、体を突き飛ばされて地面に転がり、膝をすりむいた。

 膝から血が出ている。


「友樹!」


 慌ててミーちゃんが駆け寄ってくる。


「『回復魔法ヒール』」


 ミーちゃんの魔法で、傷がたちまち癒えた。

 すり傷だから、放っておいても大丈夫なんだけど。


「弱い者いじめする人は嫌いじゃ」


「ああ、ミーシャ悪かったよ。そのガキがオレの手を振り払ったからつい…」


 リュウはオロオロしている。


「友樹も…ひやひやしたぞ。いつもはこんな事せんじゃろうて」


「だって、そいつがミーちゃんの肩を掴もうとするから、僕ムカついて…」


 あの時、頭に血がのぼって…僕は、何も考えられなくなっていた。

 気が付いたら、男の手を振り払っていたんだ。

 思い出しただけでも、怒りが込みあげてくる。



「なあ、頼むよ。許してくれよ」


 リュウはミーちゃんにしつこく話しかける。


「だったら、目の前から消えてくれないかのう」


 先ほどからずっと同じ会話を繰り返している。

 いい加減諦めないのかこの男は。


 僕はミーちゃんと手を繋いで歩いていた。

 その後ろをリュウがずっと付いてきている。


「行き先が同じなんだよ」


「……」


「オレがお詫びに道案内するからさ」


 結局、リュウは同じ町まで付いてきた。

 行き先が同じなのかは、本当かどうかは知らないけど。



 しばらく歩くと町に入った。

 お店があちこちにあって賑わっている。


「ここがベンダー町だ。町の規模は大きくないが、主に薬草の店が多い。山が近くにあるからな」


 男は律儀に道案内をしていた。

 根は真面目なのだろうか。

 嫌いで許す気にはなれないけど。


 僕が人をこんなに敵視するのは初めてだった。

 学校で虐められた時も、嫌な気持ちはあったけど諦めていたから。

 彼は冒険者ギルドに用事があったらしく、ギルド前で別れた。


「オレの事忘れないでくれよ?」と最後までミーちゃんに執着していたけど。


「あの男やっと去って行ったよ…」


 僕は両腕を組み、上に大きく伸びをした。


「友樹が珍しいのう。それともそういう一面をワシが知らなかっただけじゃろうか」


「…多分、他人に対して初めての反応だった気がする」


 冒険者ギルドの建物を眺めて言う。

 人が吸い込まれるように入っていく。

 異世界だなって改めて思った。

 まあ、僕は強くないから関係ないけど。


「冒険者登録しておくか?」


「えっ?」


 ミーちゃんが突然そんな事を言いだした。


「ちょ、ちょっと待って?僕全然強く無いし、戦えないよ?」


「勘違いしているようじゃが、身分証として登録しようと言ったまでじゃ。強くなる必要はないのじゃよ。まあ、新たに魔法を取得してもいいじゃろうが」





「新規登録ですか?ではこちらへどうぞ」


 僕とミーちゃんは、冒険者登録をするために冒険者ギルドへ来ていた。

 先ほどようやくあの男と別れたのだ。

 早くこの場を離れたい。


「簡単にお名前と特技を記入して下さい。所有スキルもお願いしますね」


 職員のお姉さんが紙を渡して説明をする。

 日本語を書くわけにもいかないし…。

 そう考えたら、サラサラと異世界語?で記入することが出来た。

 どうやら全く支障は無いようだ。


 特技って何もないな。

 僕は、名前を書いて職員に渡す。


「ではこれで登録しますね。登録料は銀貨三枚です」


 二人分だから、銀貨六枚だ。

 革袋からお金を取り出した。


 冒険者ギルドっていうから、変な事が起こるかもと身構えていたが何も無かった。

 意外と、リュウに会わずに済んだし。


 白いカードを手渡される。


「ギルドカードを発行しました。失くすと、再発行は銀貨一枚ですので失くさないようにしてくださいね」



 ポン!


 僕は、突然後ろから肩を叩かれた。

 びっくりした。


「お前、こんな所に来てたんだな。一言、言ってくれれば…」

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