10 神様の名前
魔法?
神様って…。
ミーちゃんは一体何を言っているんだ?
「神様はワシの知り合いじゃ。この世界に来れたのも神様のおかげじゃて」
そうだったんだ。
そういえば、僕が寝てるときに能力を貰ったと言ってたっけ。
「ポーションが欲しいのじゃろ?では、物質を創造する能力がよいであろうか」
彼女は目を瞑り、胸の上で両手を組んだ。
神様に祈っている様に…。
キラキラと光る粒子が、僕の体を包み込む。
「これで出来るようになったはずじゃ。試してみい」
「えっ?もう?」
「『創造魔法」』
呪文が自然と紡ぎだされる。
僕は回復ポーションをイメージすると、手のひらに小さい小瓶が現れる。
上手く出来たなら回復ポーションのはずだけど。
ミーちゃんに渡して見てもらう。
「間違いない。回復ポーションじゃ。しかも上級品じゃな」
どうやら一日一回しか能力は使えないらしい。
万能な能力は制限が掛かるようだ。
ポーションはアラゴさんにあげることにした。
また誰か怪我をしたら使って貰えばいい。
アラゴさんに凄く感謝をされたが、泊めて貰った恩もあるので気にしないでほしいな。
「友樹は、てっきりこの村で暮らすのかと思っていたのじゃが…」
「うーん。ここも良かったけど、人の暮らす町に行ってみたいんだよね」
僕たちは村を出て、山を下っていた。
来た道を戻るようだけど、近場にあった町へ行きたいと思ったから。
あと、山越えは流石にしんどいかな。
*** ミーシャ 視点(黒猫ミーちゃん)
友樹は素直じゃから、信じてくれたようじゃ。
神様と知り合いとか普通ありえんじゃろう。
自身の正体を明かす気は無いから、このまま貫く気じゃが。
それにしてもワシ、性欲なんてあったんじゃな。
この体になったから、そういう欲求が生まれたのかもしれんが。
どうも、友樹を見ていると冷静でいられなくなるようじゃ。
友樹はもう少し寛容でも良いと思うのだがな。
今時、同衾など同年代の者はやっておるじゃろうに。
この体になってから、色々と見えるものが増えた。
良いものもあれば、悪いものも見える。
出来れば、悪いものは見ない事に越したことは無いが、そういう訳にもいかんか。
「神様って何て名前なの?」
獣人の村を出て、山を下っていると友樹が突然訊いてきた。
ワシが神様と知り合いと言ったから気になったのじゃろうか。
「えーとあやつは何て名前だったかのう…」
まさか訊かれるとは、思っても見なかったので考えてなかった。
茶色い顎髭の男性冒険者が後ろを歩いていた。
茶髪で、背中にリュックを背負っている。
「女神さまなら、ミーシャ様だな。お前そんな事も知らないとは、さては余所者だな?」
男が、会話に入ってくる。
「有名な名前じゃからの。あやかって付けるものもおるじゃろうて」
ワシはさり気なく、言ってみる。
「ミーちゃんと同じ名前か。まあ、そういう事もあるかもしれないよね」
案の定、友樹は疑問に思っていないようだ。
バレることは無いとは思うが念のためじゃ。
「お?もしかしてそこの美女はミーシャと言うのか?」
冒険者が問題を掘り起こしてくる。
せっかく忘れさせようと思っておったのに。
「ミーちゃんは僕の家族だ」
ワシに近づく冒険者に、友樹が割って入った。
せめてそこは、恋人で良いのじゃないだろうか。
なあ友樹…少しせつないのう。
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