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第7話 愛の孤毒と見つかりし迷宮

~パブ~

いつものパブ

今日は最近の侵入者のこともありパブの運営よりもダンジョンの警備に優先することになった。

マスター曰く

「あのダンジョンは、魔王が倒された後にできたもので並の冒険者じゃ生きて帰ってくることはできない。だから、こうやって知る人ぞ知るレアな場所になったんだが…こうも簡単に侵入されるとな…」

前回簡単に侵入されたことがかなりのショックだったらしい。

「ならいっそのこと宣伝しちゃって、大人数で攻略します?そうしたほうがより広範囲で結界張れますし」

あと第5階層以降が気になるというのもあるけど言わないでおいた。

「そうだな、じゃあ近々町へ行くか!」

でも今日は外出の気分じゃなかったのでまた今度行くことになった。




~郊外の小屋~

街はずれの浮浪者が集う郊外の町

そこに一人の少年がいた。

「薬を持っている人はいませんか!妹を楽にさせてやりたいんです!」

少年は町の小道で必死に懇願している。

「うるせぇ!クソガキ!」「あっちいってろ!」

どんなに罵倒されてもどんなに殴られ、蹴られても彼は足にしがみつき頼み続けていた。

彼には妹がいる。両親ともに既に死んでおり、二人で生きてきた。しかし、妹は流行り病にかかった。

彼らには金がない。少年は助けてあげたかったが自分にはどうにもできない、でもせめて楽に死なせてやりたいという気持ちでいっぱいだった。


「おいガキ」

ふと少年を呼ぶ声がした。そっちのほうを振り返ると無精ひげを生やした大柄の男がいた。

「おめぇ、人を楽にする薬が欲しいんだったらここいらの近くにあるっていうダンジョンに行ったらどうだ。あそこには俺らが欲しがるようなものが何でもあるってもっぱらの噂だぜ」

ダンジョンの話は聞いたことがある。なんせ強いって噂の『白銀の翼』がそこで全滅したっていう話があるからだ。

「わかった。じゃあ行ってくるね。俺、何が何でもあいつを楽にしてやりたいんだ」

そう言って俺は例の場所へ向かった。




~パブ~

「う~ん、今度行くって言っちゃったしマスターは出かけたからやることがなーい!」

私は本当にやることがなくなったのでひとまずゴロゴロしていた。


チリンチリン


久しぶりにベルが鳴った。

私は扉のほうを見た。そこにはぼろぼろの服を着た少年がいたのである。

「ここに来れば何でも手に入るって、本当ですか?」

少年は私を見ると走り寄って聞いてきた。

「まあ、ちょっと語弊があるけどそうだよ?君は何が目的てきたのかな?」

私は少年がわざわざこんなところまで来た理由に興味がわいた。

少年は少し俯き、答えた。

「妹を助けてやりたいんです。毎日毎日苦しそうで薬を買う金もない。だから、あいつを楽にしてやりたいんです!どうか毒が手に入るところまで案内してください!」

マスターがいない間にパブを空けるのは少しまずい気がしたが私は少年と過去の自分を照らし合わせていた。

というも私自身も獣人と人のハーフで周りの人と少し違うだけでひどい扱いを受けていた。

両親は異なる種族で夫婦になったことによる罰として殺された。私は忌み子として軽蔑され、迫害を受けていた。そんな生活に耐えきれなくなった私はどこか遠い所へ行くために町から逃げ出しこのパブへたどり着いたのである。

私はここに来て救われた。だから少年を救いたい。そんな気持ちで私は少年の手を取り

「わかった。じゃあ一緒に行こうか。」

と言ったのだった。


~第11階層 獣の森~

「そういえば、その盾ってなんなの?」

私は少年と森の中を歩きながら聞いた。

「これは、両親の残した物で護身用の盾です。まあ護身用といっても防御しかできませんけど。」

そんな感じの話をしながら私たちは一つの大きな大木のもとへたどり着いた。

この木の名前は『死の木』と言われていて、その名の通り樹液に猛毒があり、周りの草花も枯れていて何もないような一本の木である。

私はマスターから指南を受けていたのでちょちょいと樹液を取って退散した。


~パブ~

ダンジョンから帰ってきて私は少年にある提案をした。

「君はこれから町に戻るんだろう?ならこのチラシを張ってくれないかな」

少年は快く了承してくれて、チラシを受け取り帰っていった。

「少年に幸福が訪れると良いな~」

そんなことを一人、私は呟いていた。


~町~

お姉さんに頼まれていた通りにチラシを張り終えたので俺は早歩きで家へ向かっていた。

ようやく妹を楽にしてやれる。そんなことを思いながら家へ着いた。

もう夜も更けていて、静まり返っている。妹はもう寝ているのだろうか、そんなことを考えながら俺は家の中に入った。


「なんだよ坊主、生きて帰ってきやがったのかよ。」

妹じゃない、野太い男の声が聞こえてきた。今朝、ダンジョンのことを教えてくれた男だ。

俺は嫌な予感がした。妹のいる部屋の方から声は聞こえた。そして変なにおいが鼻につく。

扉を開け中に入る。そこにはあの男と妹”だったもの”があった。

そのあとのことは覚えていない。形見の盾が発光し気が付けば周りは更地になっていた。建物も男も妹もなにもない。

そこには、俺だけがいた。俺は唯一の住処だった郊外の町を消してしまった。奇跡的に街の方は被害がなかったようだ。

俺はすべてを悟り、そして持ってきた毒薬を飲み、眠りについた。

どうも士田傭兵です!

更新が遅くなって申し訳ありません。色々と忙しくて…

次の回からひとつなぎのストーリーを書こうかなと思っております。

更新は不定期ですが何卒楽しみにして待っていてください。

ということで豆知識のコーナーです。

今回の豆知識は少年の持つ盾についてです。

あれは世界に数個しか存在しない神器の一つで、使用者の感情に高ぶりに反応して、周りのものを消滅させる力を持っています。彼の町がなくなったのもこの能力のせいで、ずっと封印されていました。

それがめぐりにめぐって彼のもとに来てしまったという感じですね。

他にもマスターの使うソウルイーター等も神器に含まれるので、また登場するかもしれません。

では次回をお楽しみに!

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