第6話 愛しき子
薄暗い図書室の中、一人の女性が小汚い本を呼んでいた。その周りには他の本や薬の空き瓶などが転がっている。
「あと少し、少しで『彼』にまた会える…」
そして彼女は部屋を出てある場所を目指し外へ出た。
~パブ~
今日は雨だ。しかも周りが見えないほどのひどい雨。猫の獣人の血を引くミミには耐えがたい環境だった。
「マスター、ダンジョンに行きません?私、雨の音が嫌いだから下に行きたいです。」
もう夜は更けていて店じまいの時間だった。
「そうだな。じゃあ今日は、まだミミが知らないようなダンジョンへ行くか!」
「具体的には、どこまで降りるつもりなんですか?」
「そうだな…じゃあ今攻略が完了している第6階層に行くか!」
ミミはエイキの発言に尻尾をピンと立てて驚いた。
「そんなところまで行くんですか!?死んじゃいますよ!」
「まあまあって、ん?」
エイキが耳に手を当てマスクを展開した。
「……まずいな。ミミ、ダンジョンに侵入者が入った。急いでいくぞ。」
急な命令にミミは困惑した。
「侵入者ってどうしてわかるんですか。」
「それは後だ。いくぞ。」
そう言ってエイキが手を前にかざす。
「『闇魔法 空間超越』」
そう詠唱すると黒いゲートができた。
「え?え?ちょっとマスター!これどうなって…うわあああああ!」
エイキはミミの手をつかみながらゲートへ入っていった。
~第7階層~
大量の巨大鉱石があたりを照らし美しさを魅せてくれる洞窟に女性が一人ある鉱石の前に立っていた。
「これよ!これだわ!ようやく見つけた!最上位の魔石『ラジリオン』!」
彼女は本の挿絵と見比べて確信していた。今目の前にある鉱石こそ自分の求めていたものであると。
彼女は欠片を一つ手に取り儀式の準備を始めた。本に書いてあった通りの手順で。
まず魔方陣を描く。次に自分と関わりの深い人たちの心臓を置いていく。
そして相手のことを考えながら彼女はラジリオンの欠片を握り詠唱した。
「この世界の深淵に潜むものよ、今ここに我の愛しき人々を生贄に注ぎ、我が愛しき子の命と引き換えて、我とつながり我が子に命を吹き込んだものを召喚せよ!」
すると、魔方陣が光り始め、彼女は記憶をさかのぼった。
森で出会い一目惚れした日、全力でアプローチし交際に至ったあの日、初めて交わった日、そして目の前で彼が殺された日。
ようやく彼に会うことができる。そう確信し彼女は眼を開けた。
「……な…なんであんたが…」
彼女の目の前には、ヒト型の魔人がいた。彼女は思い出す、彼が殺された後のことを…
「そ…ん…な…」
彼女はすべてを悟った。すべての行いが無意味だったこと、無駄な犠牲を出し、何よりも我が子が人ではなかったということに。
「ぐぅぅぅぅぅぅがぁぁぁぁぁぁ!」
魔人は彼女に飛び掛かった。あの時と同じように。彼女には抵抗する気力はなかった。
「おいミミ、大丈夫か?」
「はいぃぃぃ、なんとかぁぁ」
俺らは今第7階層まで来た。ここはレアな鉱石が多く、商人の間では有名なスポットだ。そのせいで盗掘者が多いから、ダンジョンに不審者が入らないかチェックする魔法をかけている。
「マスター。なんか聞こえません?」
「ああ。急いだほうがいいかもな。ここのフィールドはモンスターが生息してないはずだから何も聞こえないはずなんだが。」
洞窟には何かの滴る音、そして人ではないものの声が聞こえている。
俺らがそこへ向かうと見るも無残な姿になった女だったのかもしれないモノとそれの一部を喰らう魔人がいた。奴は俺らを見るなり奇声を上げながら攻撃を仕掛けてきた。
「マスター!ここは私が!くらえ!『龍虎円舞』!」
ミミの周りに無数の小剣が出現、回転しながら魔人へ突っ込み切り刻んだ。
「二度と蘇るなクズ、『魂喰らい』」
こうして俺らは魔人を魂の一かけらも残さずに倒したのであった。
~パブ~
「いや~疲れましたね~」
パブに戻ってきた俺らは、自室前の廊下で話していた。
「ところで、なぜあんなところに魔人がいたんでしょうか?」
「さあ?考えたくもないね。それじゃおやすみ。」
ミミの質問に一言で答え俺は部屋に入りベッドにのっかって寝たのであった。
どうも士田傭兵です!
今回の話はどうでしたか?そろそろ長編の回を書こうと思っているのでぜひ楽しみにしていてください!
さて、今回の豆知識はエンキの装備についてです。
彼の装備はアイアンマンみたいな感じの構造で装着できます。いつでもすきなタイミングでです!
また沢山の機能があり、侵入者の探知や武器の召喚、透明化等々様々な機能が備わっています!
こんな便利な装備が欲しいですね!エンキが強いのはこの装備のおかげっていうのが一つあると思います。
では次回会いましょう!お楽しみに!