第三話 エレキバイソン
ダンジョンを進んでどれくらいたったのだろうか、私たちは草原のようなエリアへやってきた。
「ダンジョンの中に草原ってどうなってんのよ。」
魔法使いのカオリさんが言った。
「確かに今までのダンジョンでも草原があるところなんて見たことがないぞ。ん?なんだあれは!」
リーダーのエレンさんが指さした先には青色に光る角を持った巨大な牛がいた。
「ビンゴ!あれがエレキバイソンで間違いねえ、さっさと狩っちまおうぜ!」
剣士のグレンさんが先陣を切って突っ込んでいった。それに続いてほかのメンバーの人たちも加勢していく。そしてグレンさんが一太刀浴びせた。 しかし、
「ブモォォォォォォ!」
バイソンの雄たけびと共に周囲に電磁波が放たれた。思わず目をつぶってしまうほどの閃光。そして次に見たのは、丸焦げになった『白銀の翼』だった。かの有名なチームのメンバーがこうもあっさり負けるなんてこのダンジョンはどうなっているのか、おかしい何かが…
「叩き切れ、【魂喰らい《ソウルイーター》】」
静かに誰かの声が聞こえ、バイソンの断末魔が響き渡った。咄嗟に前を見るとそこには、黒いローブにオオカミの仮面を被り巨大な漆黒の鎌を持った男。まさしく伝説の勇者がいた。
「なあ君。俺と共に働かないか?」
彼はさっきのバイソンを担ぎながら聞いた。そして、黒い仮面を取るとパブのマスターと同じ顔が出てきた。
俺は、パブのマスターをやっているがその正体はかつて勇者と言われた「エイキ」その人だ。しかし、一人で店を切り盛りするのは大変だから従業員を雇わないとと考えていたタイミングで彼らが来た。
見るからに弱いのに、この近くのダンジョンのレベルも知らないのに文句を言うような連中だ。死んで当然だろう。そのために、奴らをダンジョン内でも危険度Eのエレキバイソンと戦わせたわけなんだが、こうもあっさりやられると依頼した女の子がかわいそうだろ。そんなことを思いながら俺は今その子と対面で座りエレキバイソンを食している。エレキバイソンは、電磁波を操ることができる牛でそのエネルギーを運動で手に入れているため分厚くて脂がのっている肉を手に入れることができる。目の前の彼女はさっきの出来事がなかったのか思うくらいこの肉にかぶりついていた。
「さて、本題に入ろう。君、俺のところで働かないか?仕事内容は接客くらいだ。さらに賄いもある。」
我ながら素晴らしい提案だろう。彼女も口の中を肉でいっぱいにしながら親指をグッと立てて答えてくれた。
「それじゃあこれからよろしくえっと…」
「ミミです。」
「わかった。ミミ、俺はエイキだ。これからよろしく。」
こうして二人によるパブ経営が始まった。
どうも士田傭兵です!
次回から本格的に二人によるパブ経営が始まります。
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