始まりの催眠術:北都崩壊
夕焼けのかかる北九州湾岸部。
紫川にかかる真っ赤な鉄骨の常盤橋、その色を茜空に溶かす。
ライトをつけた車が行き交い、ビルは真っ赤に照らされ、あるいは真っ黒な影に染まる。
その黒い高層ビルの屋上に、黒き6つの人影。
地上から150メートル上空の柵に捕まった女性たちは、冷ややかな風を受けながらもその表情は固く、どこか遠くをみている。
「いい景色だ……」
詐欺師は笑う。
証拠隠滅のため、自分の手足となった彼女たちを消す。
しかし折角自分の思い通りに操れているというのに、ただ死んでもらうというのは勿体ない。
催眠アプリを見せ、彼女たちの身体を操ったまま、意識のみを戻す。そして柵から落下させる。
その時彼女たちはどのような表情をするか、何を言うのか。そして何をしても助からないと知ったときにどう絶望するか。
倒錯的なフィクションが規制される今日、自分だけがその心の折れた美女たちを堪能できるのだ。
自分好みの女たちは皆アイドルのような美貌を持っているが、こういう娘も昨今の映像作品では中々ひどい死に様を見せてくれない。
事務所が、悲鳴を上げて顔を歪ませて泣き叫ぶシーンを映したくないのだろうと、詐欺師は解釈していた。
「……うぅぅ」
「おや、抵抗しているのか。早めに、ここに呼んで正解だった」
詐欺師は、一人一人の苦しむ顔を覗き込み、思わず震えあがった。
「落ち着け……まだ、まだだ……しっかりと我慢に我慢して、それからこの画面を見せるんだ……その時、俺は最高の興奮を得られる……!」
よだれを垂らし、目をかっぴらき、口角を上げて興奮する男は獣のようであった。
「さあ、この街で1番の快感を、俺に味わわせてくれえ!!!!」
りぃん
『共鳴開奏』
「……なんだ?」
近くで高い音が鳴った。
柵の軋む音とも、スマホの通知の音とも違う、けれど風に掻き消されず聞こえた清らかな赤い音。
音に色があるはずないのに、詐欺師にはそれが確かに赤く聞こえた。
それは興奮を弱め、今まさにタップしようとした指の動きを止めた。
いや、何故動きを止めたのだ、と詐欺師は自問する。
たかが音1つ、今更なんだ。
鳥の鳴き声か、風でものが飛ばされたか。
何が原因だろうと、今更自分の行いを止められる者が来たわけでもないし、関係ない。
(……本当にそうかな?)
「そうだ。俺はこのボタンを押せばいい。それだけなんだ」
『じゃあなんで、おじさんは飛び降りようとしているの?』
「は、誰が……」
詐欺師はそう言ってから顔をあげ、自分が柵を掴んでいることに気付く。
今、柵の前に並ぶ女性たちを屋上の中心で眺めていたはずの自分が、なぜか落下しやすい場所にいた。
「うおおおぉお!?」
『危なかったね。でも大変だ。ビルの床が傾いて、おじさんは柵から離れられない』
グラリ、と重心が揺れた。
傾きが30度を超えたビルの屋上は捕まるものがなく、詐欺師は足を柵にかけて踏ん張ることになる。
「なんだ!? 地震か?!?」
『女の人たちは、この扉から避難して、今屋上にいたことは忘れて。だからこの屋上にいるのは……詐欺師のあなた1人だ』
気付けば催眠にかけられた女たちはいなくなっており、そこには落ちぬよう踏ん張っている詐欺師1人だけが取り残されていた。
「どうなってるっ……!? おい、誰か助けてくれえっ!!」
先程まで優越感に浸っていたはずが、気付けば1人助けもない場所で窮地に陥っている。
詐欺師はただ突然変わりゆく状況に呑まれ、助けを求める。
『ビルはどんどん傾いて、傾斜60度を越した。下から吹き上げる風は身体が浮き上がるくらい強い』
「このままじゃ……いや、まだ方法はある!!」
身体を少しでも浮かそうものなら自由落下する窮地の中。
詐欺師はニヤリと笑い、催眠アプリを起動して、自分に対して催眠をかける。自己暗示だ。
『俺の筋力はスゴい! この斜めった屋上でも扉まで到達できるほどの、腕力と脚力を持っている!」
男は自分の身体が膨れ上がるのを感じた。
実際は違うと理解はしていても、この催眠アプリは認識を騙す。
それはおおよそ、通常の身体能力では出来ないことすらも、脳のリミッターを外すことで成し遂げられるほどの暗示の力を持っていた。
「うおおおお……!!」
筋肉ダルマとなった(と自分では認識している)詐欺師は、傾斜であろうとも無理やり扉までたどり着いた。
鍵がかかっていたが、それもまた腕力でねじきる。
「ひひっ、なんだ俺って強えんじゃねえか……スーパーヒーローにだってなっちまえるかもなっ!!」
◻︎◻︎◻︎
「催眠とは、人類が道具を持つより前から生まれた武器である」
アノマリーの倉庫で本を見返す老人。
地上では、味方と敵組織の戦闘員たちが銃撃戦を繰り広げており、時折天井が大きく揺れる。
しかし老人……樽井久穏という中古ショップ「アノマリー」の北九州店、店長役の男は、文献調査に夢中となって頁をめくり続ける。
久穏という文字もまた、登録ナンバー90-Nというコードに漢字を当てて訓読みしただけで、彼には今の役職と研究以外に自分を形作る過去がない。
「人が獣と戦う時代から、人が人と戦う時代となったとき。社会性の人類は、群れを作り集団で生活し、そして集団で殺し合った。勝利に必要なのは作戦、連携、個々の戦力。それでもまだ足りない」
アノマリーの地下で、久穏は自分のまとめた文献を読み直す。
一刻も早く避難すべき場面ではあるが、研究者としての自分を抑えきれず、段ボールから資料を次々取り出す。
「忠誠心高く死をも恐れぬ兵士になるよう『洗脳』し、敵には不安感や錯覚を無意識に『暗示』を埋め込む。自らに都合がよくなるよう『認識阻害』、『改変』を行う。……遅くとも中世までにはそれを数百人、数千人規模で行える程度にまで、催眠術士は技術を確立した」
その結果起きたのは、神話の大戦とも称される4次元の戦争。
幻覚により五感が狂わされ、仕込まれた暗示や錯乱によって味方同士が殺し合う。
記録された戦の中での天変地異や怪奇現象、突然の謀反や軍の神出鬼没。
催眠は更なる催眠に上書きされ、誰もが真実と偽が分からなくなる。
部隊は今どこにいるかすら認識を狂わされて不明となり、誰が死に生きているのかも分からない中、ただ催眠術士だけが戦場を自由にかけめぐる。
目を合わせれば狂わされ、声を聴けば脳を揺さぶられ、姿を見ただけで意識を失う。
そんな魔術に近しとされる催眠術の記録だが、本当にあったのかは分からない。
何しろ記録者たちもまた、催眠術士によって認識を歪められているのだから、
それでも、言い伝えられるのは。
剣も銃も、ただの暴力は、一流の催眠術士には敵わない。
もし遭遇したのならばできることはただ一つ。
五感を塞いで、立ち去るまで隠れ続けろと、綴られていた。
「これじゃ……」
久穏が開いた頁には、紀元前1世紀より発掘された遺跡の、儀式具の白黒写真が載っていた。
記録に残る最古の宗教儀式の中で、勾玉や銅鏡の横に並ぶのは、銅鐸というお寺の鐘にも似た青銅の出土品。古代女王が国を治めたとされるという記述もあるが、老人にとっての関心事は。
その模様や形が、クスミの渡した小さな鈴の模様と、確かに似ていたことだ。
□□□
「っ、なんだ俺って強えんじゃねえか……スーパーヒーローにだってなっちまえるかもなっ!!」
(……あなたがスーパーヒーロー? そんなわけないでしょう)
苛立った声に、詐欺師は初めて違和感を覚えた。無意識にではあるが、俺はさっきから誰かと話していた? しかし誰なんだ。
この屋上に来ることは誰にも伝えてないし、警備員にも『近寄るな』と催眠をかけてある。
何より例えここにいたとしても、姿が見えない。
「おい、さっきからブツブツ言ってるお前、一体どこにいる!」
『貴方が取っ手を握っている扉の向こう側ですよ』
がちゃん!!
言い終わるより早く、詐欺師は扉を思い切り開くと、そのままスマホの画面を突き出した。
『お前は今から、俺の言いなりになる!!』
これで怪しい相手もすぐに封じ込めると思ったが、失敗したらしい。
「……ふざけんな、誰もいねえじゃないか」
「そのスマホを使って、今まで人を騙してきたんだね」
声は上から聞こえた。
屋上出口と併設する高架水槽、その梯子を登ったところに声の主はいるらしい。
「お前、どうやって俺のことを知った……! 今まであったやつは全員記憶を消したはずだぞ……」
「それでも人の心を強引に動かしすぎた。観客は命令に従ってたけれど、不満や違和感が残っていたし、催眠にかけられたと分かる虚ろな目の人を辿れば、ここまで簡単に来れた。それに何より……犯行から考えられる犯人の心のほうが、読みやすかった」
「催眠っていたか……なんだ、お前もしかして俺と同じ催眠を使えるのか……? だったら邪魔すんなよ。俺は今日この街を発つ。その後は、ちょっかいかけねえからさ」
「ダメかな。それにもう詐欺師さんは催眠使えないでしょ。手元にスマホがないんだから」
詐欺師は自分が今持っていたはずのスマホが消え、代わりに水槽の上からヒラヒラとスマホを振る手が見えた。
「というか、自分に催眠をかけるのを賢い方法だと思ってるみたいだけど、催眠術の初歩を知らないんだね」
催眠とは心を揺らして頭に命令を刷り込むもの。
それを他の催眠術を使う相手の前で自分で自分の精神を揺らす自己暗示をするということは、わざわざ隙を作っていることに他ならない。
「だからおじさん、今ちょっとずつ床がまた傾き始めているのも気づかないでしょ。自分の踏みしめた足もズルズルと下がっているのに」
「はっ、ふざけるな。今更お前の言葉が俺に通じるとでも……うぉぉぉ!?」
ズルリと、足が滑った感覚がしたときにはもう遅い。
地鳴りと共に、ガラスが割れ、鉄筋が折れ、椅子や机が窓を突き破くほどにまで、垂直に曲がったビル。
『重力は90度ズレました。今の貴方には何が見えますか』
詐欺師の視界は理屈が合わない。
ビルが曲がったのではない。世界が曲げられたのだ。
慌ててて扉にしがみつき、ノブを握る手に力を入れて辺りを見渡せば、空と地上の境界が真横に、ビル群が重力と垂直に伸びている。
『貴方は扉にしがみつくことで精一杯で、建物の中に入ることが自分ではできない。そして周囲を眺めると、街の様々なものが落下していくのが見える』
重力の向きが代わったように、上の町から下の町へと、車や電柱、看板が宙を待って落ちていく。
『もし地球が高速で自転すれば、右から左へ、地上の物体は振り回される。ビルの鉄骨構造は重力方向に強いが側方の圧力には弱いので、どんどん折れて落ちていきます。貴方の横を今、高速船が通過しました。120トンもの巨大な鋼鉄の塊ですから、後方で激突したビルが粉々になってますね。海面はうねり、全長627メートルの赤い若戸大橋をたやすく飲み込んで、港の水も滝のような速度で流れています。青と白のモノレールが空を走るように貴方の足元へ消えていきますね。肌寒い強風を感じるでしょうか。着陸できる場所のないヘリや飛行機がビルと並行に飛んでいますね。鉄棒にぶら下がったときのように、全身が引っ張られる感覚もあるでしょう。煙や雲はどうですか。貴方にはイメージが湧くでしょうか』
次々と風景の詳細を語り、詐欺師の目の前で超異常的な光景がより現実感を帯びて現れていく。
詐欺師は抵抗することもできず、ただ扉の蝶番が切れないことを祈りながら耐え切るしかなかった。
「ねえ、詐欺師さん……自首しない? 他人に悪いことをした罪を反省したいとは思わない?」
「うるさい、うるさい、うるさい……絶対にするわけねえだろ! これもどうせ催眠で幻覚見せられてるだけだ! そのスマホを返せ、そいつがあれば、俺は成り上がれるんだ! どうせこの社会はどこかしこも他人との蹴落とし合いなんだ、だったら俺1人が催眠アプリを使ったところで、何も変わんねえだろうがよ!」
「いいや、催眠とは人が人生をかけて築き上げた心そのものを壊してしまう手段だ。表舞台で使えば、誰もが互いを信じられず、自分の心すら信じられない世界になってしまう」
「催眠の理屈なんか知るかよおっ!!! こんなもん、アプリとして簡単に使えるから良いんだろうが!! 何が心だ、信じるだ、そんなもん要らねえ。俺が相手のことを心も体も支配できるなら、それでいいんだよ!!」
「そう? でもさ、詐欺師さん。さっきから大声を出しているのはなんで? もしかして、何か聞きたくない音が強くなっているからじゃないかな」
「ああっ!!! そんなわけねえだろ、俺がただブちぎれているから声がデカくなっているんだよ!!」
『そうなんだ、でもね。おじさんの声は、さっきから全然聞こえないよ。自分の喉に手を当てて見なよ』
そんなわけ、と詐欺師は手を喉に当て、怒鳴ろうとする。
だが、言われた通り、全く喉が震えず、叫ぼうにもかすれ声しかでない。
「声が出ていない」という言葉に誘導され、一瞬でも「もしかしたらそうかも」と疑念を持ってしまった途端、クスミの術が入り込んでしまったという順序なのだが、我を失った詐欺師にはその分析能力もない。
それはつまり、どこまでも催眠術士の術にハマって抜け出せないということであった。
『なんで、声が出ないのか。それはおじさんの身体が崩れているからだ。足元からゆっくりと、砂となって崩れていく。足元には砂が拡がって空中で消えていく。砂丘のように、砂時計のように乾いた小さな砂粒が、身体から零れていく』
詐欺師が自分の手を見ると、表面に微細な粒子が浮き上がっていた。
指をすり合わせるとポロポロと欠片が零れ、爪から第一関節までが形を保てず足元へと落下し、柵にぶつかると黄土色の砂となって飛散した。
(馬鹿な……! こんな、こんなことが現実なわけが……)
『あるよ。だって今まさに、おじさんが見て感じていること、それが現実でないなら何なの?』
(これが、現実……い、いや……違う! これもお前の見せる幻覚だ! そうか……お前も、催眠アプリを手に入れたのか! だから邪魔な俺を消しにきたんだな!!)
『足の感覚がなくなり、腰から下がどんどん軽くなる。靴は脱げ、ズボンははためく。もう、右は膝まで、左は太ももまで体が崩壊している』
相手の語る言葉が、今の自分にその通りに起きる。
それはもはや、催眠術というより魔法。あるいは世界を作り変える超自然的な何かであった。
完全敗北を悟った詐欺師は、情けなくも口をパクパクと動かし、全身から汗を拭き流し、真っ赤な顔で助けを乞う。
(助けてくれ、何でもする! 2度とお前にもこの街にも関わらないからよ……!)
「……今気づいたんだけど、その腕につけた時計って、どうしたの」
(あぁ!? こいつは、確かセミナーで来ていたやつから貰ったんだよ! 今そんなことどうでも……あ、いや、これも欲しけりゃくれてやるよ!! な!? 助けてくれよ!?)
詐欺師の前に人影が見えたかと思うと、ビルの地面に降り立つ。
夕影のせいで顔はわからない。ただ自分を静観する二つの瞳だけがクッキリと浮かび上がっていた。
影は、淡々とスマホを操作し、催眠アプリの中身を確認して弄った後、完全削除する。
やめろ、という声も出せず、掴み掛かることもできず、男はただその動きを見つめることしかできない。
「じゃあその言葉は、警察の人に言ってね。『本当に反省したのなら、貴方の幻覚は解けるから』」
(おい、待て……どこへ行く。止まれ、おい、俺を助けろおおお!!)
詐欺師は絶叫もまた声に出せない。
詐欺師をよそに、青年は階段を降りていく。
ビルの廊下を歩き、普段通りのオフィスと働く人たちを横目にエレベーターに乗る。自分が降りたとき、丁度警察の車両や人員が駆けつけていた。
「この人です、間違いありません。女性を何人も引き連れて、突然屋上を借りたいと仰られていて……」
警察への問いに受付嬢が答える。
警察の書類には、いくつかの会場で撮られた防犯カメラの画像や、被害者からの正確な外見の様子が纏められていた。
証拠も証言もあり、何より屋上の扉から離れられない以上、詐欺師は警察に捕まる。
「共鳴終了……詐欺師を悲鳴らし終えた」
クスミにとって、後のことは関係ない。
悪しき催眠術士が1人減った。
あの会社員も奪われた金や、形見の腕時計もいずれ引き渡されるだろう。
「うーん、ここからホテルへ行くには、どっちだっけ……」
クスミはバッグから地図を広げ、帰宅する人々に紛れながら、街灯とLEDに照らされた街を歩く。
人から割引券をもらい、勧められたそのホテルの名を思い出そうとしながら中心街をウロウロと歩く。
「ホテル素泊まり、違うな……ホテル日泊まり、じゃなくて……」
本人も気づかぬ間に、駅前に戻っていた。
「ホテル、あのまり……?」
「ちょっとそこの人」
声をかけられるクスミだが、地図に夢中で気づかない。
だから近寄り、耳元で呼びかける。
「吉野クスミ、止まりなさい!」
「はい!」
顔を上げると、そこには帽子とサングラスをかけた少女がいた。
赤紫色の髪をのぞかせ、ハイセンスなパーカーと、パンツとブーツで着飾った、同年代の少女。
「君ね、街の真ん中で何してんのよ」
「いや、俺はホテルを……あ、いや、今あのまりって言ったのは言い間違いで」
「じゃなくて!」
少女は彼の胸元を掴んで引き寄せ、耳元で囁く。
(吉野クスミ、貴方の名前は?)
(え……今、自分で呼んで……)
ギロリとまつ毛の長い大きな瞳で睨まれる。
「吉野クスミです……」
「そう、初めまして吉野クスミ。私たちが会えたのも何かの縁、折角だし連絡先を交換しましょう」
「今、スマホが電池切れてて……」
「なら今日は私のところに泊まりなさい。待つ時間も、また別れて探すのも面倒だから」
勝手に少女のペースに合わせていくそのスピードに、クスミは都会の子って怖いという震えた。
「次にクスミ、貴方は私の名前を覚えなさい。一度しか言わないから、そのまま一生脳に焼き付けて」
「はい……!」
少女はすっと、クスミを掴む力を緩め、真正面から彼を見据える。
駅前の広場にはまだLEDが残り、その反射が彼女の顔を照らす。
少女は帽子とサングラスを外し、凛とした声で言った。
「私の名前は泉間レルナ。貴方はしばらく、私の監視下に置くから」
りぃん
少女が舌なめずりをしたとき、クスミは、お婆ちゃんの鈴が鳴った気がした。