Albero genealogico dell'esorcismo. 悪魔祓いの家系図 II
しずかになった客室。
窓から見える空は、太陽がかたむき夕方近いことを表している。
アノニモがドアのほうに顔を向け立っている。ランベルトはそちらに視線を向けた。
「おまえはコンティの血筋の者なのか?」
ランベルトはそう問うた。
アノニモが、ゆっくりとこちらを向く。
「おまえの命令に従っている者たちは、女悪魔の同族と言ったな」
「ええ」
「そしてコンティの血筋には、悪魔をしたがえ使役する者がいるとも」
「何事にも例外はあるともあの従者は言いませんでした?」
アノニモが口角を上げる。
「そんな例外はそうそうあるものではないだろう」
ランベルトは気構えた。
また肝心な質問をはぐらかす気かもしれんが、そうはさせるか。
「おまえは私の先祖か? だからうちのことに詳しかったのか?」
アノニモはベッドに近づくと、身体をかがませた。
人差し指を口のまえに立てる。
「内緒です」
ランベルトは眉をよせた。
「どいつもこいつも」
「私が質問をはぐらかしているのは、ちゃんと理由があるからです。あの従者が主人の名も言わないのは、理由があるのかどうか知りませんが」
「待て……」
ランベルトは言葉をさえぎった。
「あのバルドヴィーノというのも悪魔か?」
「そうですね」
アノニモが答える。
「悪魔の仕えている主人なら、悪魔では?」
ランベルトは遅ればせながら寒気を覚えた。
あの従者の洗練された物腰。由緒ある家の者と話しているような気分になっていた。
鏡から出てきたはずなのに、そんなことはすっかり頭のなかで霞んでいたのだ。
今さらながら助言を求めてアノニモを見た。
「悪魔の可能性もありますが、そうではない可能性もあります」
アノニモが言う。
カツ、カツと靴音を立てて目の前を行き来する。
「可能性は三種類というところですか」
アノニモが指を三本立てる。
「悪魔、悪魔と何らかの契約をした人間、もしくは私と同じように、悪魔を使役する能力を持つ人間」
アノニモがしばらく黙りこんでから続ける。
「あとは、悪魔と恋愛関係におちいった人間」
「……四種類ではないか」
「そうですね」
アノニモが腕を組んで苦笑する。
「ああ、そうだ。悪魔ではないが、何かべつの人外という可能性も」
「つぎつぎ出てきそうだな。まったく絞れん」
ランベルトは眉をよせた。
「お役に立てませんで」
アノニモが肩をゆらして笑う。
こういう態度で言われると、ほんとうは分かっているのではないかと勘繰ってしまうのだがとランベルトは思った。
「ダニエラ嬢は、お帰りになったみたいですね」
アノニモがドアの方をふり向いて言う。
「分かるのか」
「私は霊ですよ。壁は関係ありません」
アノニモが肩をすくめる。
「そうだった」
こちらもすっかり忘れてなじみかけていたなとランベルトは思った。
「では、ひとまず消えますので」
胸に手をあてアノニモが一礼する。
「姿を出しっぱなしというわけではないのか」
「決められた時間をこえると、胸元にしこまれた灯籠が点滅するのです」
「……意味分からん」
「困ったさいにはお呼びください」
アノニモが鏡があるほうに踏みだす。
うしろで結わえた長めのダークブロンドの髪がゆれる。
まばたきすると、姿はなかった。




