「深き森」探索7
「よっしゃぁぁぁぁぁああー」
「やったぁぁぁあー、倒したぁぁぁー、って、すごっ、一気にレベルが3も上がったー」
「アオ!? それだけじゃない、アルカナスキルのレベルも上がったぞ」
シャロとアオの歓喜の声を背後に聞きながら「蝕む呪骸」がドロップした。
清廉さを表すようなシンプルながら洗練された紋様が刻まれた銀色の腕輪を拾い上げる。
【解毒の腕輪 毒ダメージを無効化する腕輪。———それは守るべき筈の人間に息子を毒殺された呪術者の真の望みを反映して生まれた祝福である】
鑑定した腕輪のアイテム名と効果を見て、シンプルながら強力な効果に喜び、その由来を記したテキストデータに顔を引き攣らせる。
清廉としか言いようのない美しい見た目が、逆に何か寒々としたものを感じさせた。
「ナイス、モト、いやー、メインアタッカーがタンクもこなしてくれると戦闘が楽でいいわ。流石は我らが愛しの英雄様だ。スクラムの初見殺しを切り抜けたな」
後ろから抱き着いてくるシャロの勢いに押されて蹈鞴を踏んでいると、ハイテンションのアオがアルカナスキル【私たちに距離はなく】で自分の隣に現れた。
「いぇーい、ナイス、二人とも。ドラクロ世界初のボス討伐だね」
「いぇーい、アオも良いサポートだったぞ」
「シャロもナイス遊撃、本当シャロがいると作戦に困らないわ」
そんなことをキャイキャイと手を重ねて喜ぶ二人に、歯ごたえのある戦闘をチームで勝利したのだという実感が沸き上がってきて、二人に釣られるように小さく笑ってしまう。
「モトもナイスだったよ、『やってくれるでしょう』とは思ったけど、一番負担の重い所をありがとうね」
「ん、ああ……それより、この戦利品を見て見ろよ」
あまり褒められると照れくさくなってしまい、話を逸らすように手に持ってドロップ品を見るように促す。
「そうそう、それで、どんなアイテムがドロップしたの?」
「モトの【無名の武器】くらいの業物が出てもいいんじゃないか?」
二人は、ワクワクした目で自分の手元を覗き込んでドロップ品を【鑑定】して、「「わぁあー……ぁー」」と先ほどと自分と同じように喜んだ後、何やら引いたような微妙なリアクションをした。
「あー、うん、とりあえず良いアイテムだよな、状態異常無効系のアイテムって何だかんだ重宝するし」
「だね、とりあえずウチラの中で一番、前線張るのはモトなんだし、モトが装備しときなよ」
「……分かったけど、このゲーム、隠しステータスで呪われたりしないよな? カルマポイントみたいなのが蓄積しそうなテキストデータなんだけど」
これがゲーム画面の中のアイテムであったら気にならないのだろうけど、実際に曰く付きのアイテムを手に持った「重み」や「金属の冷たさ」が感じられるVRゲームの世界の中で、曰く付きアイテムを装備することに躊躇してしまうのは少数派ではない筈だ。
「大丈夫、大丈夫、気にし過ぎだって、今までのスクラムゲーには、そんなのなかったし……多分」
「そう、そう、気にし過ぎだって……きっと」
アオとシャロが笑顔で否定しつつ、最後に何かボソッと聞き捨てならない一言を付け足したような気がしたが、突っ込んでも誤魔化されるだけだろう。
実際問題、最前線で戦う自分が装備しておくのが一番無難な選択肢なのは間違いないので、溜息を一つ吐いて、諦めて実験台になるつもりでアクセサリー扱いになる【解毒の腕輪】を装備する。
……とりあえず直ぐに何か異変を感じるような異常はなさそうだ。
「んんっ、でも、この【解毒の腕輪】のテキストデータのお陰で、呪いを仕掛けた相手の犯人像がグッと絞り込めたね」
そんな自分の様子を確認し終えたところでアオが話を戻すように言う。
「だな、少しばかり期待していた方向性じゃないが、キーアイテムであることは間違いなかったみたいだな。同じ人間に息子を毒殺された親が犯人であるっていう、手掛かりであり、証拠品みたいだしな」
アオとシャロが問題のドロップアイテムを見て、自分と同じ方向の見解を抱いたらしい。
「だね、毒っていう『呪い』の性質も呪術者の私的な怨みが繁栄されているんだと思う。でも、もしかしたら簡単には犯人は見つからないかもよ。世界を呪うくらいだから、息子が毒殺されたことが、ちゃんと裁かれていない可能性は高いし、もしかしたら村の人に聞いても誰も知らない可能性はあるかも」
「あー、殺意を内に溜め込むタイプの犯人ってことか、それはあるかもな。でも、これで、少なくとも子供のいないフランクさんとカミラさんは、容疑者から外してよさそうだな」
そのシャロの言葉に驚いてしまう。息子が毒殺された人間が呪術者だという証拠物品であるということまでは考えが及んだが、彼女はその容疑者にまで考えが届いていたようだ。
「あの二人のことを疑っていたのか?」
「万が一つの可能性の一つとしてな、森の奥まで日常的に入って怪しまれないのは、冒険者と狩人くらいのものだって話だったろう? けど、実際に効力の発揮するような呪術を扱える知識や力があるのは、どっちかって言ったら冒険者の方が怪しい気がしたからな」
すっかり、あの二人組にほだされていた自分は、あの二人が容疑者だとは微塵も疑わなかった。
「そうだね、メタ的な視点でいうと、もし人間側に呪いのトーテムを仕掛けた犯人がいるなら、昨日のウォーカー男爵との会談にいた中の誰かである可能性が高いと思うんだよね。実質、こんな呪いの蔓延る森の中を探索できる高レベルの人間ってなると、あの場にいた人たちくらいなんだろうし」
「そうなるよなー」
アオとシャロが当たり前のような共通認識として話す言葉に、すっかり昨日の会談イベントのことなど忘れていた自分は「無駄な登場人物たちではなかったのかー」などと目から鱗が落ちたような気分で納得する。
「まぁ、でも、フランクさんとカミラさんが呪術者であるって可能性は限りなく低くなったことだけは確かだし、戻ったら二人に相談してみよう。ただし、【鑑定】スキルの事は、これまで通り黙っておいて」
「ん、分かった。でも、どうする、呪術めいた儀式の痕跡を見つけて、それを破壊したら怪物が出てきたことまでは話せるとしてだ。―――【鑑定】スキルのことを黙っていると、呪術者が息子を毒殺された奴だって事を説明できないぞ?」
「ん、そこら辺は大丈夫、少し考えがあるんだ。それより今は相手に私たちの【鑑定】って手札を隠しておく方が重要だと思うんだ。候補者はもう、ある程度絞り込めているんだし、下手に犯人を追い詰めて警戒させるんじゃなくて、慎重に一つ一つ確実に追い詰めていこう」
そう語るアオからは、ドラクロ世界の神秘的な容貌のアバターも相まって、何かカリスマのようなものを感じられた。
「分かった、お前に任せる」
「ああ、ボスに従うよ」
「ありがとう、もう少し考えが纏まったら、ちゃんと説明するから――それじゃあ拠点にしている『精霊の庭』まで戻ろうか―――あっ、それで話は変わるけど、アルカナスキルだよ、レベル上がったらスキルが増えたんだけど、二人はどう?」
アオは嬉しそうに笑った後、もう一つの慶事を喜ぶように尋ねてくる。
「ああ、私もスキルが増えてたけど、まぁ悪くないって感じかな。【止まらぬ限り】ってスキルで、一定以上の速さで動き続けた時の体力消費がなくなって、AGIを中心にステータスにバフが加算されていくってもんらしい」
「へぇー、それは、また、なかなかピーキーなスキルだね。それに比べたら私の方は、ちゃんと効果を確かめてみないと分からないけど結構、使い勝手が良さそうだったよ。【相乗効果】ってスキルで、パーティーのアルカナスキルの効果範囲や対象を広げることができるみたい。……とりあえず分かりやすいところで言うと、シャロの【進む限り】のコンボ数のカウント対象と効果対象がパーティー全体になるみたい」
アオが、アオにしか見えていない空間ウィンドウを確認するように虚空に目を向けながら話してくれる。
「えっ、強くないか、それ? ゲームバランスが変わるレベルだろう?」
これまでも感じていたが、アオの【恋愛】のアルカナスキルがチート級に強すぎるような気がする。
「だねぇ、まぁ、まだスキルの熟練度が低いから、シャロ以外に掛かるコンボバフはそんなに高くないみたいだけど、シャロへのコンボバフアップには良いんじゃないかな。【進む限り】のコンボは、ダメージを受ける、一定時間経過するとコンボが途切れるって仕様じゃない?」
「ああ、一定時間っていうのも30秒くらいインターバル時間があるし、スクラムにしちゃあ緩い条件だから結構、コンボ数を稼ぐのにあんま苦労してないな。その割に、コンボ数が20を越えた辺りから手投げナイフが銃弾みたいな威力になってくれるし、バフ率も悪くないから重宝しているな」
「だよね、私のスキルでもそれは変わらなくて、シャロ以外のパーティーメンバーがダメージを受けるとパーティー全体に掛かるコンボバフはリセットされるけど、シャロにカウントされていたコンボバフは途切れないみたいだから、上手くコンボを稼げればシャロが、モトに代わってメインアタッカーにすることができるかも」
「おおぉー、そいつは夢が広がるなー」
そんな二人の話を聞いて、自分もアルカナスキルのレベルが上がって、何か新しいスキルを覚えていないかが気になり、心の中でステータスオープンと唱えて半透明の空間ウィンドウを確認する。
モトLv15
【アルカナスキル レベル3】
【致命の一撃】Lv3 クリティカル威力超アップ
【死神の目】Lv3 敵の弱点(クリティカル部位)が見える
【死神の権能】Lv3 敵にダメージを与えるとダメージに応じてHP、MP、スタミナが回復する
そこには、アルカナスキルが上がり、新たに手に入れたスキルの能力と説明が記載されていたのだった。
「モトの【死神】のアルカナスキルとの相乗効果だけど、モトが死神の目で急所を捉えた情報が私たちにも共有されて、そこに攻撃を当てた時のクリティカル発生率アップとダメージ量に補正が掛かるみたい。―――それに加えて、モトが相手に攻撃してダメージを与えた時、モトのHPとMP,スタミナが満タンだったら、その余剰分がパーティーメンバーのHPやMP,スタミナを回復させてくれるってあるんだけど。もしかしてモトも、また新しいアルカナスキルを手に入れた?」
「そりゃ、またチートな能力だなぁ、メインアタッカーにタンクに加えて、ヒーラーまで兼任するのかよ」
モトは、驚き、呆れたような顔をしながら問いかけてくるアオとシャロの様子に苦笑しながら、今、確認したばかりのアルカナスキルについて説明しつつ―――歩いて1時間ほどの距離にある精霊の庭に向けて帰還するのだった。
○モトLv15 Skill 【アルカナ死神】
【アルカナスキル Lv3】
【致命の一撃】Lv3 クリティカル威力超アップ
【死神の目】 Lv3 敵の弱点(クリティカル部位)が見える
【死神の権能】Lv3 敵にダメージを与えるとダメージに応じてHP、MP、スタミナが回復する
Skill
・直感Lv3 (自身に降り掛かる身の危険を予見することができる)
・強攻撃Lv5 (力を溜めることで強力な攻撃を放てる)
・ステップLv5(スタミナを消費し、素早く移動できる)
・パリィLv4 (敵の攻撃をいなす、弾くアクションの効果に補正)
・武具精製Lv1(魔法の力で武具を一時的に生成できる)
・ヒールLv1 (回復魔法、HPとスタミナを回復することができる)
・武芸百般Lv2(3種類以上の武器を扱うことで解放、武器の攻撃力に補正)
・居合切りv1 (太刀の一定程度の熟練度で解放、納刀状態からの抜刀攻撃が威力アップ)
・アサシンエッジLv1(小太刀の一定熟練度で解放、クリティカル時に一定確率で即死、気絶を付与)
・ぶんまわしLv1(大剣の一定熟練度で解放、敵にノックバック効果)
○アオLv14 アルカナ【恋愛】
【アルカナスキル Lv2】
【私たちに距離は無く】Lv2 パーティーメンバーを基点にして、自分やメンバーの位置を瞬間的に移動させたり、入れ替えることができるスキル。
【相乗効果】Lv2 パーティーのアルカナスキルの効果範囲や対象範囲を広げる
Skill
・第六感Lv3 (周辺のアイテムや宝箱の位置などを把握できる)
・ステップLv2(体力を消費し、素早く移動できる)
・強攻撃LV1 (力を溜めることで強力な攻撃を放てる)
・パリィLv1 (敵の攻撃をいなす、弾くアクションの効果に補正)
・魔弾Lv3 (初歩の魔法スキル、魔法の光弾を放つ)
・火球Lv3 (初歩の魔法スキル 火の玉を放つことができる)
・水球Lv2 (初歩の魔法スキル 水の玉を放つことができる)
・風刃Lv2 (初歩の魔法スキル 風の刃を放つことができる)
・ヒールLv2 (回復魔法、HPとスタミナを回復することができる)
・二連突きLv1 (槍の一定熟練度で解放、素早い2連突きを放てるよう動作をアシスト)
シャロLv14 アルカナ【愚者】
【進む限り】 敵に連続で攻撃がヒットすると、コンボが発生し、コンボ数に応じて自身のステータスに補正が掛かる。
【止まらぬ限り】 一定以上の速さで動き続けた時の体力消費がなくなり、AGIを中心にステータスに補正が掛かる。
Skill
・気配察知Lv4(周辺の一定距離内のエネミーの位置を正確に把握できる)
・強攻撃Lv3 (力を溜めることで強力な攻撃を放てる)
・ステップLv3(体力を消費し、素早く移動できる)
・パリィLv2 (敵の攻撃をいなす、弾くアクションの効果に補正)
・武具精製Lv3(魔法の力で武具を一時的に生成できる)
・ヒールLv1 (回復魔法、HPとスタミナを回復することができる)
・魔弾Lv1 (初歩の魔法スキル、魔法の光弾を放つ)
・速射Lv3 (早打ちでも矢の狙いが正確になるようエイム補正率が上昇)
・連射Lv2 (弓の一定熟練度で解放 連射時の動作アシスト、エイム補正率が上昇)
・強弓Lv1 (弓の一定熟練度で解放 弓にノックバックを付与)




