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「深き森」探索2 スキル

 「さぁーて、初めての自由行動だけど、私達はどういう方針で行こうか?」

 

 フランクさんとカミラさんが、一足先に「精霊の森」の奥へと出発するのを見送った所で、アオが楽しそうに問い掛けてきた。

 

 「おっ、何だボス? 北上しつつ魔物共をぶっ倒しまくる以外に何か案があるのか?」

 

 シャロは、楽しそうな案なら乗るぞと、アオと肩を組みながら悪だくみを楽しむように笑う。

 

 「ああ、違う、違う、むしろ逆、どれだけ北に突っ込むかって話。―――多分だけどここで、どれだけ魔物を間引いておけたかっていうのが、この後のストーリーの分岐の一つになる可能性があると思うんだ。だから、ゆっくり、この『深き森』のフィールド探索もしたいけど、まずは魔物を間引いて、小呪災を潰していく事に集中した方が良いと思うんだよね」

 

 「……ああ、それはありそうだな、さっきのフランクさんたちの会話でスゲーフラグが立ってたしなぁ。絶対に私達かフランクさん達のどっちかが夜、此処に戻って来られない状況ってのが発生するよな?」

 

 「でしょ、まぁ、それが、どっち側で発生するかは分からないんだけどね……私達が森の奥に深入りし過ぎたせいで戻れなくなる可能性も、フランクさんたちの方で問題が発生して戻って来られない可能性も―――どっちも十分にあるからね」

 

 二人とも考え過ぎだろうと最初は思ったが、話を聞いている内に、確かにあり得る気もしてきた。

 

 何せ相手は、登場キャラが軒並み死んでいくことで有名なスクラムゲーだ。

 

 北側に強力な魔物が現れて、自分たちでは倒し切れずに森の外にいる騎士の助力を得ることになった結果。森の奥で孤立したフランクさん達がやられてしまうバットエンドルートもあり得るし。フランクさん達の方で問題が発生した結果、そのまま二人が帰らぬ人になってしまうバッドエンドも十分に考えられた。

 

 だからと言って、最初から二人の救援に駆けつけるために「精霊の庭」周辺に居残っていた場合。魔物を間引きが足りなかったために、何かの拍子で一斉に動き出した魔物によってフランクさん共々、やられてしまうバットエンドなども十分にあり得る気がする。

 

 進むも、残るも、どちらを選んでも危険性が残る二面背反な状況だ。

 

 「……それを承知で、我らがボスは、北に突っ込んで魔物共をぶっ飛ばすことを決めた訳だ?」

 

 「うん、そう」

 

 シャロが楽しくなってきたというように笑うのに、アオは呼応するように不敵な笑みを浮かべて頷く。

 

 「魔物を間引いておくのは、この後のウォーカー村の防衛戦線の行方にも関わってくるし、全体的な戦略を考えたら突っ込む一択だよね。それに、もし、私達の方で問題が発生してくれるなら、むしろ、そっちの方がありがたいくらい。―――なにせ私達には〝愛しの英雄様〟がいらっしゃいますから―――最序盤のトラップイベントくらい切り伏せてくれる、でしょう?」


 「あははは、そりゃ違いない」


 アオとシャロがカラカイ交じりに期待の目を向けてくるのに内心で苦笑しながらも、ここは恰好の付け時だろうと腹を括り「まぁ、何とかするさ」と不適に笑って答える。


 「よし、決まり、それじゃあ今日はフランクさん側で何かあった時に、森の奥に助けに行けるくらいまでレベル上げることを目的に、ガンガン行こう」


 「「おー」」


 アオの号令に応えるようにモトとシャロは拳を突き上げるのだった。


 

――――――――

―――――――――――――――




 進むべき方向を見失いそうな「深き森の中」をコンパスと地図で、現在地を確認しながら北へと進み続ける。

 

 精霊の庭を離れて北に向かい1時間もすると、森の中を10分も進むと次の魔物とエンカウントするような状況になり、間引きが必要だという理由がハッキリと理解できた。

 

 「おっ、11時方向、おかわりが3体来るぞ」

 

 【フォレストウルフ】4体を倒し終えた所で、先ほど倒した【フォレストウルフ】の内の1体が、死の間際に上げた遠吠えの声を聞きつけたのだろう。


 シャロが【気配察知】が察知した通り、同じ【フォレストウルフ】が3体、此方に向かって一目散に駆けて来るのが見えた。

 

 「それじゃあ一人一体ずつね」

 

 「はいよ」

 

 「ああ」

 

 しかし、それに全く焦ることもなく告げるアオの指示に、シャロと自分は簡潔に答える。


 同数の敵ならば取得したスキルの使用方法や使用感を確かめるのに手頃な相手でしかない。


 そう思えるくらいには、ここまでの道のりの間で、倒し飽きた敵だった。

 

 シャロが弓を構えて射の姿勢を取ってピタッと制止する。すると、シャロの身体から光が溢れた弓矢に集まっていく。


 その横でアオが槍を虚空に掲げ、何かを集め掻き混ぜるように動かした、槍の穂先に青白い魔力の光が収束していく。

 

 ―――そんな数秒ほどの溜めの後。

 

 「ふっ」

 

 「行けぇー」

 

 シャロの【強攻撃】で放たれた矢と、アオの【魔弾】が、こちらに向かって来ていたフォレストウルフたちを迎撃するように直撃して一撃で仕留める。

 

 それを確認してモトは、爪先立ちになるようにして、ほんの僅かにだけ持ち上げた右足の踵を降ろし、素早くトントンと連続で地面を踏んだことで発動するスキル【ステップ】で、5メートルほど先まで一瞬で移動する。

 

 2度目に地面を踏んだ時にイメージした通りの方向、距離に、その時の体の向きや体制などを無視して体を動かしてくれる【ステップ】の使用感に、対人戦などでは肝になるスキルになりそうだと改めて思いながら、続けてその場で小さく早く片足ケンケンするようにして【ステップ】を連続で使い、更に3メートル先まで高速で移動する。

 

 ステップの距離の距離や速さはAGIに依存するらしく、同じく【ステップ】のスキルを習得したシャロは最長で2メートルしか移動できていなかったから、【無形の武器】のALL+30がどれだけ大きかったのかが分かるというものだ。

 

 3メートルほどの間隔で立つ木と木の間の手前に立ち、持ち主の望むままに形を変える【無形の武器】を肩に担ぐように振り被って構える。

 

 敵に一直線で襲い掛かる性質を持つフォレストウルフが狙い通り、狭い木と木の間を通るようなコースで此方に向かって来てくれることに満足しながら、習得したもう一つのスキルを発動させる。

 

 スキル【強攻撃】は、頭の中でこういう風に武器を振るうぞとイメージし、そのために必要な構えを取ることで発動するスキルだ。そこから、事前に頭の中でイメージしていた通りの攻撃を繰り出すことで、攻撃威力をSTRの高さに比例して上げてくれる。

 

 言うなれば攻撃方法を事前に宣言し、その通りに行動するという誓約を対価に、普通の生身では発揮できないような「強烈な一撃」を放つ技である。

 

 モトは、木と木の間の空間を全て薙ぎ払うように斜めに武器を振り下ろすというイメージと誓いを立てると、体から光が湧き上がり、その光が手に持つ日本刀の形をした【無形の武器】に集まっていく。

 

 ……さっき【強攻撃】のスキルを使った時は、自分の予想よりも刀を振り下ろす速さが速すぎて、敵の手前に武器を振り下ろしてしまった。

 

 ――――今度は外さない。

 

 間近に迫った【フォレストウルフ】が、此方を噛み殺そうと血走った殺気を纏って駆け寄ってくるのを見ながら、モトは振り下ろす直前、使用者の求めに応じて形を変える【無形の武器】を日本刀から大剣へと変えながら木と木の間の空間、全てを薙ぎ払うつもりで大剣を誓いの通りに右斜め上から左斜め下へと大剣を振り下ろす。

 

 ブォォーン

 

 自分でも振るった大剣の剣筋が追い切れないような速度で振るわれた大剣の一閃は、【フォレスト】を一瞬の内で跡形もなく霧散させるのだった。

 

 「ナイス、モト」

 

 「お疲れさん、いやー、ようやくスクラムゲーのスキルの発動にも慣れてきたなー」


 BGMが戦闘BGMから「深き森」のフィールドBGMに変わったのを確認して、アオとシャロが労わりの言葉を掛けてくれる。

 

 「だね、スクラムゲーが鬼畜難易度だって言われる由縁の、スキル発動が単純な思考入力じゃなくて、アクションと連動した癖のある仕様も、慣れてくれば、病み付きになるね。何か本当に自分で魔法を使っているみたいで」

 

 「へぇー、そう言えば魔法系のスキルって、使う時、どんな感じなんだ?」


 シャロは、戦闘後のルーチンワークとなっている、アオが腰のポーチから取り出した弓矢の補充を受け取りながら尋ねる。

 

 「あー、なんだろ、説明しづらいんだけど魔法って私の魔力と、この世界にあるマナ元素っていう不思議法則が反応し合って発動するものらしいんだけど―――さっきみたいな攻撃魔法は、魔力っていう不思議な法則に合わせた化学反応を促すみたいな感じ?

 魔力は火、水、風、土、無色の5元素があって、それを足し算引き算しながら反応を安定させていくんだけど、これが面白いんだよね。マナが私の魔力と反応して変質している感覚がハッキリと分かるの。何か生クリームがバターになっていくみたいな感覚っていうか、私の魔力とマナ元素が反応し合って変質していっているのが手応えで分かるんだよね。

 スキルで習得した【魔弾】とかは、どれくらいの魔力を足して、この手応えの時にやれば発動するっていう目安を教えてくれる感じでね。多分、この手応えの変化の法則性が分かれば【スキル】を習得しなくても別の魔法が使えるんじゃないかな」


 「ほぉー」


 アオが弾んだ声色で話すのを聞いて、シャロは矢筒に矢を入れながら興味深そうに相槌を打つ。


 「でも、【ヒール】とかの回復魔法みたいな精神力(MEN)依存の神聖魔法は、また別でね。―――何か、言葉が通じない誰かと身振り手振りで意思疎通しているみたいな感じ? 

 この人の傷を癒してくださいってお願いしながら、魔力を捧げると、どっからか誰かが何かを返してくれる感じっていうか。これが、また変な感じなんだけどね―――そうお願いする先に誰かの意思があるのを確かに感じるんだよ。

 誰かと繋がるような感覚っていうのかな。その誰かの波長を上手く拾えるか、感じられるか、どうかが神聖魔法の成否の鍵なんだよね」


 「へぇー、そりゃ、また、スピリチュアルだなぁ」


 「だよね、多分、システム的には脳波観測をして、ある一定の精神状態である時に、何かと繋がれるみたいな感じで、その繋がりやすさがMENの高さで補正される形だと思うんだよね。

 それで【神聖魔法】のスキルは、その言葉が通じているのかも分からない誰かへのお願いをしやすくするための言語ツールみたいなものなんだと思う。スキルを使う時は、何か意識を集中しなくても勝手に何かと繋がって魔法が発動してくれるし。

 けど、もし、その繋がる感覚の精神状態に自由自在に成れたら、習得していない【神聖魔法】も使い放題なんて可能性もあるのかと思うと、ちょっとワクワクするよね」

 

 アオがワクワクした様子で表情を輝かせて言うのを聞きながら、ドラクロは本当にプレイヤーにスキルを求めるゲームなのだなと再認識する。


 それと同時にスキルが足りないプレイヤーにも、地道に努力を積んでレベルを上げてステータスを上げれば、大概の事は可能になるというシステムサポートもあるゲームバランスが、スクラムゲーの魅力なのだろう。

 

 「……何か面白そうだなぁ、私も次は魔法系のスキル取ろうかなぁ」

 

 「いいんじゃない、シャロは最低限の初期スキルは大体、皆取り終えてたし。【武具精製】とかいいんじゃない、魔力の弓矢とかナイフを魔力で作れるみたいだよ、【魔弾】より取得スキルポイントが2高いだけだし」

 

 アオは、そんなことを言いながらドロップアイテムの拾い忘れがないか目を瞑って周囲の状況へと集中するようにしてスキル【第六感】を発動させる。

 

 聞くところによるとアイテムがあるとアイテムの所在が光るように浮かび上がって見えるのだという。

 

 「……おっ、モト、そっちの藪の奥にドロップアイテムが落ちてるから拾っといて」

 

 「分かった」

 

 アオが指さす方向に向かいながら返事を返す。

 

 「シャロは、こっち手伝って」

 

 「ん、ああ、薬草か、分かった」

 

 アオたちの方は【第六感】で、ドロップアイテムの拾い忘れを確認した際に、ついでで見つけたポーションの原材料となる【薬草】を採取するようだ。

 

 「それでスキルの話だけど、【ヒール】とかも、どう? ちょっとした回復ができるメンバーがいると、やっぱりパーティーが安定するしね」

 

 「やっぱ、そこら辺だよなー」

 

 「うん、弓矢とかポーションとかは消耗品だしね、今回は、男爵からの依頼だってことで大量に支給して貰ったけど、今後のことを考えるとケチれるならケチりたいしね」

 

 「だなぁ、ありがたいことにドラクロのMPは、自動回復してくれる仕様みたいだしなぁ、30分もあればMPが全快してくれるんだっけ?」


 「うん、MPの最大値が低いこともあると思うけど、ある程度リラックスした状態になれれば自動でMPは回復していってくれるみたい」

 

 そんな言葉のやり取りを後ろに聞きながら小走りで走って藪の中を見ると、茂みの影に落ちていたドロップアイテムの【狼の牙】を拾う。


 ドロップアイテムを握り締めながら二人の下に向かうと、二人も薬草を採取し終わったようで、アオの腰のポーチに薬草を放り込んでいるのが目に入った。


 「そっか、なら、とりあえず私は、次はそのスキルを二つ取るかぁ」


 「うん、私も次は槍スキルの武技を取得するつもりだしね、やっぱ咄嗟に敵を牽制できる二連突きくらいは覚えとかないと前の戦いも安定しないだろうし」

 

 「アオ」

 

 「あっ、ありがとうモト」

 

 ドロップアイテムの【狼の牙】をアオに放り投げて手渡すと、アオは腰のポーチにアイテムを収納する。

 

 「モトは、魔法スキル何か取るのか?」

 

 「……そうだな、俺も【武具精製】と【ヒール】くらいは取っとくか、色々と応用が利きそうだし、初級以外は、まだスキルツリーが解放されてないからな。魔法系の技を覚えとくことで何か新しいスキルが解放される可能性もあるし……このままだとMPを無駄に余らせちまいそうだしな」


 「だね、とりあえずレベルアップ以外でも、習熟度ボーナスでスキルポイントが手に入るんだし、初めの内に一通りのスキル取っといた方がいいよ。そこから掘り下げていくってなるとロール(役割)との兼ね合いも考えないといけないけど、初期スキルくらいはね」


 シャロの質問に少し考えてから答えると、アオも同意してくれる。


 ゲーマーのアオが同意してくれるなら、とりあえず間違いはないだろうと安心して、余らせていたスキルポイントで【ヒール】の魔法を習得する。そんなモトが、スキルポイントを割り振り終わったのを確認して、アオが改めて口を開く。

 

 「さって、何か魔物とのエンカウント量が明らかに多くなってきたし、そろそろ小呪災が近いと思うから、気を引き締めていこう」

 

 「ああ」

 

 「だな、もう少しレベル上げてスキルポイントを溜めたいとこだし、稼がせて貰おうぜ」

 

 近くにあるだろう小呪災に狙いを絞ってモトたちは、気を引き締め直し、再び森の奥を目指して歩き出すのだった。

○モトLv11 Skill

 ・直感Lv1(自身に降り掛かる身の危険を予見することができる)

 ・強攻撃Lv2(力を溜めることで強力な攻撃を放てる)

 ・ステップLv2(体力を消費し、素早く移動できる)

 ・パリィLv2(敵の攻撃をいなす、弾くアクションの効果に補正)

 ・武具精製Lv1(魔法の力で武具を一時的に生成できる)

 ・ヒールLv1(回復魔法、HPとスタミナを回復することができる)


○アオLv9 Skill

 ・第六感Lv2(周辺のアイテムや宝箱の位置などを把握できる)

 ・ステップLv1(体力を消費し、素早く移動できる)

 ・強攻撃LV1(力を溜めることで強力な攻撃を放てる)

 ・パリィLv1(敵の攻撃をいなす、弾くアクションの効果に補正)

 ・魔弾Lv1(初歩の魔法スキル、魔法の光弾を放つ)

 ・ヒールLv1(回復魔法、HPとスタミナを回復することができる)


シャロLv9 Skill

 ・気配察知Lv2(周辺の一定距離内のエネミーの位置を正確に把握できる)

 ・強攻撃Lv1(力を溜めることで強力な攻撃を放てる) 

 ・ステップLv1(体力を消費し、素早く移動できる)

 ・速射Lv1(早打ちでも矢の狙いが正確になるようエイム補正率が上昇)

 ・パリィLv1(敵の攻撃をいなす、弾くアクションの効果に補正)

 ・武具精製Lv1(魔法の力で武具を一時的に生成できる)

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