表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/32

チュートリアル3 小呪災

 何処か怪しげな響きを伴ったBGMが一際、強く鳴り響く。

 

 夕方前のまだ明るい時間帯である筈なのに、この辺り一帯だけ何処か薄暗いように感じられるのは、「深き森」の中でも一段と影が深く、ジメジメとしていて陰鬱な場所だから―――だけではない。

 

 〝小呪災〟と呼ばれる。


 陰気な場所などに吹き溜まって集まった呪災の残穢ざんえが、簡易版呪災として黒い靄の不定形のモンスターを湧き出し続ける、逆パワースポットみたいな場所だからだった。

 

 それを証明するように、森の木々の影から闇が滲み出るように、黒い靄が湧き出し、不定形の人型を形作っていく。

 

 「次が来たぞ」

 

 「おう」

 

 「ええ、パパッと片付けるわよ」

 

 モトの声にシャロとアオが武器を構え直す。

 

 ゴブリンかコボルトを模しているだろう、身長130㎝前後くらいの小型の人型モンスターたちが、1、2、3……6体。半径50メートルくらいの小呪災の領域内でバラバラに発生する。

 

 「左は俺が」

 

 「オッケー、右は私が行くわ」

 

 「一番、遠い奴は任せろ」

 

 コボルトが群れて行動をする前に各個撃破することを狙って、手近に湧いたモンスターから刈り取るべく動き出す。

 

 小呪災の端に3人で位置取った状態から、アオが一番手近の右の木の陰から湧き出たモンスターを叩きに走り。

 

 モトは、その次に手近な場所にいるモンスターを叩きに向かい。

 

 シャロは、遠くにいる魔物を倒すべく弓矢をつがえる。

 

 モトが一直線に駆け寄ると。それに気付いた、小人の身体に犬のような頭を付けたコボルトらしき黒い靄のモンスターが、手に持った棍棒を地面に叩きつけて威嚇してくる。

 

 その威嚇などお構いなしに突き進むと、慌てたように棍棒を闇雲に振り回して、自分を近づけないよう牽制してくる。

 

 そんな子供の癇癪のような抵抗に何の脅威も感じなかったモトは、棍棒を振り回して僅かに姿勢を崩した隙を見逃さず。

 

 ……そこ

 

 ほとんど勢いを緩めることなく、すれ違い様に刀を振り降りし、コボルトの首元に『致命の一撃』を叩き込み、霧散させる。

 

 コボルトの敗因はただ一つ、獲物を振り回して牽制するならば、せめて自分よりリーチの長い獲物を使うべきだった。そうすれば後、2秒くらいは時間が稼げただろう。

 

 ……次だ

 

 次のモンスターの下へと向かいながら他の状況を確認すると。


 「てぇぇーい」と威勢のいい声を上げて戦っているアオは、ショートソードらしき武器を持ったゴブリン相手に槍のリーチ差を活かして攻め立て、確実にダメージを重ねている。おそらく、もう10秒もしない内に倒すことができるだろう。

 

 シャロの方は、ほかのモンスターたちの動きを牽制するように弓矢を射掛けて、弓矢の射線から隠れさせるように立ち回りながらも、闇雲に突っ込んでくるモンスターに3本目となる弓矢を当てて消滅させているのが確認できた。

 

 ……今が攻め時だ。

 

 シャロがベテランのスナイパーのような冷静さで、敵が合流できないように行動に制限を掛けてくれている。


 この隙に、このまま各個撃破して、相手に反撃らしい、反撃をさせずに押し込むべきだ。

 

 シャロの弓矢の攻撃を避けるように木々に隠れながら移動しようとしていた、槍を持ったゴブリンが、走り寄るモトに気付いて槍を構えてくる。

 

 その間合いの少し外で僅かに減速して向かい合うと、ゴブリンが勢い良く槍を持って突進してくる。

 

 その槍の穂先と刀の刀身を重ね合わせるようにして受けて、槍の穂先を刃の上を滑らせるようにして、僅かに自分の身体に突き刺さらないように方向を逸らす、と。

 

 左手で槍の腹を掴み取り、ゴブリンが慌てて槍を引き戻そうと力を込める動きに合わせて槍を押し込むことで体勢を崩させると、その隙を逃さず右手に持った刀の横薙ぎに振るい、「致命の一撃」で首を斬り飛ばす。

 

 ……これで、3体は倒した。

 

 次は、どうすると思考を巡らせていると、〝パチン〟という指を弾く音が響く。

 

 ――――どうやら、もう詰めの時間のようだ。

 

 ショートソードを持ったゴブリンを倒したアオが、パーティーメンバーを基点に自分やメンバーの位置を瞬間移動のように移動させたり、入れ替えたり、することができるアルカナスキル『私達に距離はなく』で、自分の下にシャロを招き寄せたようだ。

 

 アオの傍らに移動したシャロが、これまでと違う全く射角からモンスターたちに弓矢を浴びせていく。

 

 モンスターの側からしたら、警戒していた弓矢の射手が一瞬で移動し、弓矢を浴びせかけてくるのだから、堪ったものではないだろう。

 

 その奇襲攻撃によって浮き足だったモンスターたちは、慌てて再び射線から隠れるように移動するが、シャロは落ち着く暇を与えないように連続で弓矢を射掛けて、ダメージを与えて動きを鈍らせる。

 

 その混乱の隙に乗じて動いていたモトは、手近の木陰に隠れていたコボルトの背後に忍び寄って、モンスターの首を掻き切って仕留める。

 

 それを確認した、アオが此方に目を向けてウインクしながら、パチンと指を弾くとシャロが今度は自分の傍らに現れる。

 

 「任せたぞ、相棒」

 

 「ああ、これでチェックメイトってな」

 

 シャロは、ニヤリと不敵な笑みを浮かべて弓を構え、アオの方を警戒して無防備な背中を晒している、既に何度か弓矢のダメージを受けたゴブリンの背中に矢の一撃が突き刺ささりモンスターを霧散させるのだった。

 

 

 

 ―――――「呪災」により生まれた黒い靄で形作られたモンスターは、呪いの影響下が強い場所でないと活動できないため、呪災の発生地から余り離れることができない。

 

 その代わり〝呪災の呪い〟は領域内の動植物を蝕み、魔物へと変遷させることで、距離に関係なく人を襲うことを可能になる。

 

 だからこそ冒険者は、人里に近い〝小呪災〟を排除することで、魔物による被害を少なくさせることを主な仕事としているのだという。

 

 「普通なら繁栄期にある西の国内で、歩いて半日もしない距離に小呪災があるなんて、ありえないんだけど、今回は、貴方達がマレビトとして招かれた時に撒かれた呪いの影響で小呪災が発生したのね、多分」

 

 「ああ、どうやら結構、大きな呪災になりそうだな。まさか、こんなに早く小呪災が発生してるとは思わなかった」

 

 フランクさんとカミラさんが、自分たちが5回ほどモンスターの討伐を繰り返したことで小康状態になった小呪災の中心地に立ちながら、そんな話をする。

 

 「それじゃあアオ、これが最後の仕事よ。さっき私が教えた祝詞を繰り返して頂戴」

 

 「はい、それじゃあ『祓い給え、清め給え、鎮め給え、あるべきモノを、あるべき場所に帰し給え』」

 

 アオが手を前に掲げながら言葉を発すると、その言葉を何かのトリガーにしたように小呪災の領域内から光り輝くオーブのようなものが、幾つも浮かび上がってくる。

 

 「へぇー」

 

 「綺麗だな」

 

 その光のオーブたちが縦横無尽に飛び回る姿は、何処か厳かなBGMの音楽も相まって幻想的な光景で、一歩離れた所で並んで見ていたモトとシャロも感嘆の声を上げてしまう。

 

 その間に好き勝手に飛び回っていた光のオーブたちが、アオの足元へと集まっていき、何かを形作っていき―――「パァァァーン」というエフェクト音のようなものを響かせて実体化する。

 

 何処か薄暗かった森の中が通常通りの明るさに戻り、アオの足元にはファンタジー世界らしい装飾の施された革製らしきウエストポーチがドロップしていた。

 

 「うおぉぉぉおおー、大当たりだ、そりゃ多分、収納拡張の加護付きのバックだぞ」

 

 「ええ、おめでとう、私達のバックを見て分かっているだろうけど、そのバッグは見た目以上に色々入れられるのよ。バッグより大きいものだって入れられるんだから」

 

 「うわー、本当ですか、やったぁぁー、どうよ」

 

 二人の解説を聞いて、アオが飛び上がって喜びながら、ピースサインを向けてくる。

 

 「いいぞぉー、流石はボスだ、持ってるぞぉぉー」

 

 「ナイスだぞー」

 

 そんなアオに、シャロとモトも称賛の言葉を惜しまない。

 

 ぶっちゃけると歩き回らずに定期的にモンスターが湧いてくれるレベル上げスポットを潰すのは、勿体ない気がしてしまうのだけれど―――それを上回る小呪災を調伏するメリットが、このアイテムドロップだった。

 

 呪いに侵されたモンスターや魔物を倒すと、祓った恩恵として経験値だけでなく、ランダムでアイテムがドロップする時がある。倒されたモンスター霧散していった後に、毛皮や肉、爪などのドロップアイテムが残っているのだ。

 

 そして、呪災の大本を祓うと確定でレア度の高いアイテムがドロップしてくれるのだ。

 

 アオは、今回その中でも大当たりの部類のアイテムを引いたらしい。

 

 とは言え、最初のチュートリアル中のドロップアイテムなので、ストーリー上の確定ドロップである可能性も多分にあるとは思うのだが……良いドロップアイテムである事には変わらないので、今ここで突っ込んで水を差す必要もないだろう。

 

 「えへへ、どうも、どうも、それじゃあさっそく」

 

 アオが嬉しそうにハニカミながらバッグを手に取り、自分の腰に巻いてみる。

 

 すると、ピッという音がして――――。

 

 〖空間系魔力を介した、位相空間への接触を確認〗

 

 〖???の加護【スキル ???】→【スキル 零世界】が発動〗

 

 〖【スキル 零世界】 自分だけの内なる空間・世界が生じる〗

 

 〖【スキル 零世界】から2つスキルが派生しました〗

 

 〖【アイテムボックス】 アイテムの保管・収納の限界容量が大幅に拡大】

 

 〖【???】 ―――現在、適応中―――】〗

 

 半透明の空間ウィンドウが眼前に浮かび上がる。

 

 「「「………」」」

 

 「?……どうしたんだ?」

 

 「ええ、アオ、良く似合ってるわよ」

 

 思わず黙り込んでしまった自分たちを不思議そうに見ながら二人が、声を掛けてくる。

 

 「……いえ、これも運命だったんだなって」

 

 「なんだそりゃ?」

 

 スキルの獲得タイミングを考えると、手に入れたドロップアイテムが確定のものだったと知って、嬉しいんだけど少し寂しい気持ちになってしまう。

 

 微妙な表情を浮かべるアオを慰め、共感するように、モトとシャロはそっと後ろから肩に手を置くのだった。


Tips モンスターの鑑定結果

【ゴブリンLv3~5】

・死者の穢れより生まれた妖精 殺し憑り付いたモノを、死を渇望する魔物に変異させる

【コボルトLv3~6】

・獣の穢れより生まれた妖精 殺し憑り付いたモノを、同化を渇望する魔物へ変異させる。


・ドロップアイテム

【魔石Lv1 モンスターを倒すとドロップするアイテム】

 ・魔道具などの原材料になる それは色のない可能性の原石である

【命の水Lv1 死の穢れを祓うと手に入る素材】

 ・ポーションなどの回復アイテムの原材料となる 生きるために必要な活力を与える水

【神秘の鏡Lv1 獣の穢れを祓うと手に入る素材】

 ・砕いて粉にしてアイテム制作時に混ぜ込むと確立で追加効果を付与する 他者と己を区別する違いを与える鏡

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ