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ドラクロの世界へ3 アルカナ

 「あははは、なるほど、そりゃまた随分と派手に暴れたなぁー。流石は、我らが愛しの英雄様だ」


 「だねぇ、いっそ、感心する……いや、やっぱ普通に引くか、うん。……でも、そっか、火中のど真ん中にいるだろうとは思ったけど、駅側だったかぁー」

 

 モトから事の次第を聞き終えた、シャルとアオの第一発目の感想はそれだった。


 「あー、悔しいぃー、なんとかモトと上手く合流できれば、私もメインストーリーに絡んできそうな金髪の女の子に会えたかもしれないのにぃー。……普通、初手から問題の事故現場に突っ込んでいく!?」


 穴に落ちてしまった際、最後に自分を助けてくれた金髪の少女と二人は出会わなかったそうで、意味深な発言の内容も含めてきっと重要なキャラとの出会いの機会を逃したことを悔しがるように、アオに恨めし気に睨まれてしまう。


 「そんなに変だったかな?」


 「まぁー、普通は崩落事故が起こって、怪物が出たって逃げてくる人波の流れに逆らわないよなぁー」

 

 「……それは、確かに現実ならしないけど」


 自分では、そこまでぶっ飛んだ行動をしたつもりはなかったのだが、そうシャロに冷静に指摘されると確かに結構な問題行動であった気がしてくる。


 「でしょ、せめて突っ込むなら私と合流してからにしてくれれば良かったのに……ああいう、電話が繋がらない状況になったら、まず家に戻って他のパーティーメンバーと合流できないかとか考えるでしょう、普通」


 「はい、すいません」


 そう、アオに拗ねたように糾弾されると、電話を使うという選択肢すら出てこなかったモトは素直に謝るしかない。


 「ああ、それでアオは一度、自分の家に戻ってたのか」


 「そっ、私はモトとはちょうどショッピングセンターを挟んで反対側の場所で目覚めたからね。ちょうど人波に沿って避難しながらでも、家まで3分と掛からないから距離だったから、シャロはともかくモトは来てくれるんじゃないかと思ったんだけど……」


 「はい、すいません……でも、ですね、事故現場の生の一次情報を持ち返った方が、アオは喜んでくれるじゃないかなと思ったからの行動でもありましてですね」


 「……うっ、あっ……ま、まぁ、確かに、そのお陰で金髪少女っていう未確認情報を入手できた訳だし、そういう事なら感謝しないとね……ありがと」


 モトが平謝りしながらも自己弁護するように答えると、アオは少し照れたように白銀の髪を指で弄りながら許してくれた。


 「くくっ、なるほど、人柄が出るなぁー、ついでだから聞かせてくれよ。それでアオはその後どうしたんだ?」


 「私? 私は、モトと合流できない間にドンドン悲鳴の声が近づいてくるから、ここで合流できないなら火中の中心にいるんだろうなって思って、駅前の方に戻ったの。

 そしたら一杯パトカーが止まっててさ、そこならモトの情報が手に入るかなと思ったら、パトカーの停まった先に大穴が空いていて―――何十人って銃を持った警察官たちが、黒騎士にバッタバッタと切り殺されていて、阿鼻叫喚状態よ」


 シャロの質問に応えたアオが、その時の絶対に叶わない怪物が出てくる時の登場シーンのような光景を思い出したのか、眉を顰めながら説明してくれる。


 「一瞬の間に何人も切り殺されて、真っ黒な霧に変えられてさ、何の手の出しようもなかったわ―――あ、そうそう、今話してて思ったんだけど、これってさ、残酷描写を出さないためってのもあるんだろうけど、モンスターと同じ黒い霧に変わったって事にも何かストーリー的な意味がある気がしない?」

 

 「ああ、確かにモトが会ったっていう金髪の子が、呪いがどうとか言ってたしって話だしな。――って逸れてるから、それで、その後はどうなったんだ?」


 直ぐに考察を挟んで話が脱線するアオにシャロが話の先を促す。


 「えっ、私はそれで終わりだったよ、警察官が全員やられて、パトカーの陰に隠れながら逃げ出す隙を伺っていたら―――黒騎士に気付かれて隠れてたパトカーが真っ二つに切られて、もう駄目だってところで―――地面が崩落して、穴の底から地上でドラゴンが炎を吐き出すのを見て、気付いたら白い世界にいたって感じかな」


 「なるほど、そういうパターンか」


 「そういうシャロは、どうだったんだ?」


 シャロが納得したように頷くのに、逆にモトが尋ねる。


 「私か? 私は気付いたら都心部の繁華街の中心にいてさ、人波に押し流されるまま避難していたら、黒い狼みたいなのが一緒に逃げていた人たちを襲い始めてさ。―――そんで、襲われていた人は、周りの人と一緒に何とか助けたんだけど、このままじゃ狼からは逃げられないって事で、一旦近くのショッピングモールの中に逃げ込んだんだ」


 「へぇー、やっぱ都会じゃ、人波を逆流なんてできないか」


 「いや、普通はしないから」


 モトが、やっぱり人の多い所では自由に身動きできなかったのかと納得していると、アオに容赦なく突っ込まれてしまう。


 「だなぁ、で、私らは、そこら辺にあるものとかで即席のバリケードを作って、ようやく一安心かなっと思ったら、黒騎士サンが壁をぶち抜いてダイナミックエントリーよ」


 「うわぁ、本当にパニック映画の導入みたいじゃん」


 「だろっ、一瞬の間に何人も殺されて、このままじゃ皆殺しルート一直線だからさ。咄嗟にそこら辺にあるものを投げつけて、こっちに注意を引き付けたところで、時間稼ぎのための命懸けの鬼ごっこがスタートした訳だ」


 「「おー」」


 何だろう、こうしてシャロの話を聞くと彼女の方が、まっとうな正史ルートであったことがハッキリと分かってしまう。何とも言えない居た堪れなさは……。


 「家具売り場で、家具を障害物に使いながら逃げたのは、我ながらナイスプレーだと思ったんだけどなぁー。――アイツ、障害物を軒並み、手に持った大剣の一振りでぶっ飛ばしてくれやがるからさ――。何この無理ゲーって感じで黒騎士に追い詰められ掛けたところで、タイムアップの崩落に巻き込まれて、後はアオと一緒って感じかな」


 「はぁー、流石シャロ、よくあんなの相手に逃げ切れたね」


 シャロの武勇伝を聞いて、心底感心したようにアオが褒める。


 「だろう、って言ってもソレを倒したって奴がいるんだから、自慢にならないんだよなぁ。――アレでも十分無理ゲーだと思ったのに、第二形態まであったんだろう?」


 「いや、それはモトがおかしいだけだから――って言うか今思い出しても、あれ、スキルとか、ゲーム的なアシストがなくて本当に勝てんの?」


 アオが心底信じられないというように尋ねてくる。


 「多分、武士道の達人以上で、ある程度ゲーム慣れしてれば……」


 「出た、変態国家が生み出した、修羅の国の住人はこれだから……あそこのガチ勢って明らかに生まれてくる時代を間違えた類の人種だよね」


 「国民的ゲームになんて言いぐさを、日本国民の半分以上がプレイ経験あるゲームなんだぞ」

 

 「そりゃまぁ、VRゲーム買ったら最初から無料サービスで入ってるんだから、そうだろうなぁー」


 モトの言葉にシャロが苦笑しながら突っ込みを入れてくる。


 VRゲームをするプレイヤーたちの多くは、どんなに他のゲームを楽しもうと必ず何処かのタイミングで原点回帰的に戻ってしまう。そんな中毒的な魅力のあるゲームなのだが、二人はストーリーや世界観のない純粋な対人ゲームは余り好みじゃないようだった。


 「でも、アノ黒騎士に勝った報酬が刀一本ってのは、ちょっと割りに合わないよね。その刀も今はないんでしょ」

 

 「ああ」

 

 「と、なると考えられるのは、白い世界で貰った加護の方か? 私はアルカナ『愚者』っていうのと、???の加護、スキル『???』ってのを貰ったんだけど、二人は」

 

 何処か腑に落ちない様子のアオに続いて、シャロが問い掛けてくる。

 

 「……それ、正解っぽいな。スキル『???』ってのを貰ったのは一緒だけど、俺が貰ったアルカナは『死神』だ」

 

 「なるほど、私のアルカナは『恋愛』だから、導入部の行動選択でアルカナを決めていたのかも――…いいね、そういう性格判断システムみたいなの、このキャラが本当に私の分身だって感じが強くなるし――…でも、ほかのアルカナの発生条件とか気になるなぁ、成長率とかも違うのかな?

 でも今までのスクラムゲーの傾向から見ると、最初の職業選択とか最終的には関係なくなるのも多いし……」

 

 アオが、ゲーマとしての血が騒いだように楽しそうにゲームの使用を考察を始めるのに、「こういう楽しそうにゲームをしている姿が好きだから、未だに自分は一緒にゲームをしているんだろうなぁ」とシャロと一緒になって、微笑ましい気持ちで見守ってしまう。

 

 「うーん、でも、一周目は攻略サイトを見ないってのがマイルールだしなー、いや、でも、うー」

 

 「まっ、そこら辺は好きにしてくれ、とりあえず二人のステータスを確認したら、そろそろゲームを進めようぜ」

 

 「んっ、そうだね、とりあえず今はドラクロの世界を楽しまないとね」

 

 「だなっ」

 

 何やらドツボに嵌ったように悩み込むアオに、苦笑しながら助け舟を出すと、アオは気を取り直したようにベッドから立ち上がる。

 

 「それじゃあ、ステータスだけ確認したら行こう、ドラクロの世界に」

 

 「おう」


 「はいよ」

 

 アバターの姿形が変わっても見慣れたように感じてしまう古馴染の少女たちと、この先のまだ見ぬ冒険への期待から、顔を見合わせて笑い合う。

 

 「……それで、どうやってステータスを確認すれば良いの? ってうわ、なんか出た」

 

 「……おー、へぇー、なるほどレベルアップを『適応』って形で理屈づけてるのか」

 

 ―――ただ、ステータスやスキル、レベルアップシステムの仕様の確認に加え、そこから得られる考察などに再び盛り上がり始めてしまった二人を見る限り―――ドラクロの世界に改めて飛び込んでいくのは、もう少し後のことになりそうだった。

Tips

〇アルカナ一覧表

アルカナ  発生条件               効果

愚者    黒騎士から一定時間、逃げ続ける    コンボ加算でボーナス

魔術師   魔法が使えないかを真っ先に試す    マジシャンの素養

女教皇   負傷者の治療に奮闘する        ヒーラーの素養

女帝    周囲を鼓舞し、励まし続ける      バッファーの素養

皇帝    穴前での防衛線でリーダーシップ発揮  サマナーの素養

教皇    避難者たちの中でリーダーシップ発揮  導き手の素養

恋人    パーティーのことを一番に気に掛ける  パーティー補助系特殊能力

戦車    穴前での防衛線に参加         アタッカーの素養

力     黒騎士撃破、悪魔騎士に敗北      代償を払った高倍率バフ技

隠者    安全な場所に逃げ込み時間経過     アサシン系の素養

運命    武器やバリケードなどの用意に大貢献  クリエイト系の素養

正義    まず警察などの公的機関を頼り、協力  スカウト系の素養

刑死者   避難者たちの殿として最後まで戦う   タンク系の素養

死神    悪魔騎士を討伐            クリティカル威力超UP

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